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「一人が寂しい男を演じてるだけ」スピードワゴン・小沢さんの恋愛論

コラムニストのウイさんと、恋愛や結婚について語り合いました。

恋愛や結婚について語り合った、スピードワゴンの小沢一敬さん(右)とコラムニストのウイさん=写真はいずれも河原夏季撮影
恋愛や結婚について語り合った、スピードワゴンの小沢一敬さん(右)とコラムニストのウイさん=写真はいずれも河原夏季撮影

目次

恋愛ネタで数々の名言を残しながらも、自身は「振られたことしかない」というスピードワゴンの小沢一敬さん(47)。恋愛コラムを書きながらも、「自分の恋愛は全然ダメ」と語るコラムニストのウイさん(38)。そんな2人が、恋愛や結婚についてこってり語り合いました。「小沢さん、独身の僕たちにとって恋愛とか結婚ってなんですかね?」

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「結婚」のカードは「クローバーの6」

ウイさん(以下、ウイ):独身界のスーパースターとの対談でここ2、3年で一番緊張しています。
 
小沢一敬さん(以下、小沢):いやいやそんな、もったいないよ(笑)
 
ウイ:僕は小沢さんの大ファンで、小沢さんが僕ぐらいの年齢の時にどんなことをおっしゃってたのかなっていろんなものを拝見したら、「結婚したい」という発言はほとんどなかった。でも「結婚記念日」っていいよねとかっていう、結婚自体に対してそれほど否定的でない発言が割と見えたんですね。
 
それがだんだんと月日が経って、去年末の番組で「人生において大事なものTOP5」に女の子が入っていないという話をしていて、漫画とか映画とか麻雀が上位にくるし、俺不健康だから結婚できないんだよねっておっしゃっていて。さらには「結婚っていうのはかつて、モテなかった人が作ったシステムなんだ」っていう話もされていて。

やっぱり小沢さんは結婚する気はないのかな?とか、それともテレビ向けに言っていることなのかなと気になりました。
 
小沢:結婚については、本当に興味がなくて、昔からあんまり考えないんですよ。
ウイさんが言ってる「小沢のベスト5」についても、20代の頃から変わってないと思う。女子は常に周りにいるし、女の子が嫌いということでは全くないんだけど、「興味」でランキングにすると人生で1回もベスト5に入ったことはない。
 
結婚は、正直、してもしなくてもどっちでもいい。たとえば好きな子ができて彼女が「結婚したい」というなら、その子を喜ばせるために結婚してもいいかなっていう感じ。
 
ウイ:じゃあ別に「しないよ、したくないよ」っていうわけではないんですね。
 
小沢:基本、どんなことでも「どっちでもいい」んですよ、俺。たとえばマネージャーに「この仕事やる?」って聞かれても、(井戸田)潤に「今日はこの漫才やろうか」って言われても、答えはいつも「どっちでもいいよ」。
 
ウイ:言われるがままに。
小沢:本を書かせてもらったことも、映画の脚本をやらせてもらったこともあるけど、自分からやろうと思って動いたことは一度もないんじゃないかな。「やってみる?」って言ってもらって「じゃあ、やろうか」って。
 
ウイ:求められれば応える、サービス精神がすごいんですよね。
 
小沢:ちがうちがう、決めるのがめんどくさいだけなの。
 
ウイ:いろんなめんどくさいことと同列に結婚もあるということですか?
 
小沢:うーん、そもそも結婚というカードを持つ気がない。人生というボードの上に結婚というカードを切る気がないし、手持ちに結婚のカードがなくてもいいと思ってる。多分ね、俺の中で「結婚」って「クローバーの6」ぐらいのカードなのよ(笑)。
 
ウイ:僕らアラサーアラフォー独身は、なかなか結婚を「クローバーの6」にできずにいるんですよ。もっと重要な絵柄の「ハートのクィーン」ぐらいの感じになってるんです。でもかといって出会いのため、恋愛のため、結婚のためにエネルギーを使うことに対してもごもごしてしまう自分もいるんです。
小沢:でも、ウイさんの書籍『エンドロールのその後に〜さえない僕らの恋愛に幸せな結末を』にその答え、書いてあった気がするけどね。

「もっと良い人にいつか出会える」って、思ってるんでしょ。
 
ウイ:……はい。
 
小沢:俺も30代の時にはそう思ってたこともあった。テトリスみたいに、いろんなしんどいことって毎日積み重なっていくじゃない? ゲームオーバーにならないようにちょうどよく穴を埋めて適度に消していきながら生きてるんだけど、いつかめちゃくちゃ長い棒みたいな相手が現れて、積み重なったものきれいに消してくれるんじゃないかって思っちゃうんだよね。
 
ウイ:なるほど。
 
小沢:って言いながらここまで積み重なってきちゃって、まもなく「ボンッ(ゲームオーバー)」よ。
 
ウイ:ボンッですか(笑)。
 
小沢:でも結局、長い棒で消せるようなきれいな積み上げ方だってしてきてないし、「特定の誰かで」じゃなくてその都度その都度興味のあることで細かく消していくしかないんだよね。

まだない未来を想像して不安になるなんてムダ

ウイ:仕事で女性とお食事をする機会があって、やっぱりまだこの時期ということもあってデート向けのお店なんかはガラガラなんですよ。でも、ひとたびお店を出て街を歩くと、ラーメン屋さんのカウンターは満席で、みんなひとりでラーメンを食べてる。それもサラリーマンっぽいスーツ姿の方ばっかり。それを見た女性が「男性って、こうやって孤独に淡々と生きることに対してすごい耐性があるよね?」って言ったんです。

女性同士だともう少し感情の共有を求めるものなんだよって。

平日はこうやって同じ店で同じもの頼んで、休日は趣味に没頭してっていうサイクルをひとりでずっと続けていける、そういう才能があるという指摘を受けて、なるほどなぁと思いました。

このままゆっくりと、孤独死を受け入れるように時を重ねていくのかもなぁと。
 
小沢:俺自体は、ひとりが寂しい時もあるけど、「ひとりが寂しい男を演じてる」だけなんじゃないかって思うこともあるね。
 
ウイ:じゃあ「このままこの先孤独になっていくのかな」みたいなことを考えることはないですか?
 
小沢:これは先輩たちにも怒られることがよくあるんだけど、みんな「5年後の自分がどうなっていたいか」を考えて生きているんだよね。でも、俺マジで考えないのよ。だって、存在していない未来じゃん。そんなことに不安になったり一喜一憂するのってすごくバカらしいと思う。だからずっと「どっちでもいい」をやってきてるんだと思う。
 
ウイ:Let it beの精神ですね。
小沢:こんなこと言うとちょっとズルいんだけど、「運」のパラメーターが高い数値で生まれてる自覚があるんだよね。人に誘われてはじめたことがうまくいくことが多いから。なんとかなるなと思ってる節がある。だから、先のことを考えて「こうなるためにこれをやろう」って動いていないのかもしれない。

そのかわり「胃腸」っていうパラメーターは弱いんだけどね。
 
ウイ:(笑)。
 
小沢:この先も、今からだって何にでもなれるって思ってるの。野球選手でも、漫画家でも、なりたいと思った時に本気で目指せば。だから、結婚もそういう相手が現れたら本気でアプローチして一緒にいればいいじゃんって思ってる。これも今は「どっちでもいい」。時がくれば、その時考える。
 
ウイ:究極の「素直」ですよね。
 
小沢:究極の「破滅型」よ。

理想の恋愛をして、周りに羨ましがられたいだけじゃない?

小沢:ウイさんの本、周りの人たちにも読んでもらったんだけど「刺さるわ」「わかるわ」って声がたくさん挙がってた。けど、俺はずーっと読んでると気分悪くなったよ(笑)。ほんとに申し訳ないんだけど。

それは、つまらないとかじゃなくて、えぐられすぎてつらいのよ。身に覚えのある話が多すぎて。「洒落た“世にも奇妙な物語”」って感じで、続けて読むには味濃いわ。ほんとに苦しくなった。
 
ウイ:いやぁでも、そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます。
 
小沢:俺、あれ好きだな。「5回あいこが続いたら」ってやつ。
 
ウイ:バーで出会った女性と、「5回あいこが続いたら付き合いましょう」ってじゃんけんする話ですね。
 
小沢:俺も似たようなこと女の子にやったことあるんだよね。「うどんとそば、どっちが好き?」で、せーので答える。合う確率が1/2。次の質問も合う確率は2の二乗で1/4。これを10回続けて合い続ける確率が1/1024なのよ。全部クリアしたら付き合おうって言ったの。
 
ウイ:果てしない確率(笑)。
 
小沢:でもさ、正直本当に付き合いたい子にはわかりやすい2択にしちゃう。当ててくれるように。そうするとあっちは今度、はずしにくるのよ。そんなもんなんだよね。
 
ウイ:わかります。僕もこのあいこの話は公開した時に、「ウイさん、もしドタイプの子だったら”5回“って言ってないでしょ」って言われました。そうやって上手いこと自分の中の運命を「調整」してるんでしょうって。
 
小沢:そうなんだよね。

エンドロールのその後に~さえない僕らの恋愛に幸せな結末を
(ウイ著/大和書房)
ウイ:僕は仕事柄いろんな方から恋愛を話を聞くんですけど、どこか「他人事」のように感じてしまうことがあるんです。相談には全力で答えるけれど、感情移入できていないという矛盾がある。それがもしかしたら、結婚を諦めきれない、でも執着もしてない、どっちつかずの状態であるゆえんなのかなと。

年齢はもちろん記号でしかないけれど、38歳、もうすぐ40歳。どうしても節目に感じてしまうし。「俺、これからどうすんの?」って。
 
小沢:これ、傷つける言い方になるかもしれないんだけど、「理想の恋愛をして周りに羨ましがられたいんじゃないのかな」とも思う。これはウイさんだけがってことじゃなくて、恋愛について深く考えてる人たちみんなに対して思うことなんだけど。「良い恋愛してるね」って言われたいのかなって。
 
ウイ:まさにそうです。自分の過去の恋愛をコンテンツ化してしまっているから、じゃあいよいよ「恋人」「結婚」ってなっても、やっぱりこれからも相手に迷惑をかけない程度にはコンテンツ化してしまうと思うんですよ。「ウイの彼女ってどんなん?」っていう期待に応えようとしてる部分がある気がしていますね。
 
小沢:でも、本当に理想の恋愛をしてるんなら、周りにどう言われようと関係ないし自分から他人にアピールする必要もないと思うのよ。

これだけ恋愛について面白い文章を書ける男、どういう彼女作るんだろうって周りが見てるから「俺はこういう恋愛をしてるからこんなアドバイスができるんだぞ」をやらざるを得なくなる苦しさもわかるんだけどね。
 
ウイ:チャンスはあっても、何かしら理由をつけて「今じゃない」「この人じゃない」を繰り返してます。
 
小沢:テトリスの長い棒が落ちてくると。
 
ウイ:思ってますねぇ。
 
【10日配信・後編】「友達がいない自分」選んでない?スピードワゴン・小沢さんの人生論

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