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連載

#7 30歳独身、無職。本屋さんになる。

世界一ワクワクする本屋を作る Chaptersでお会いしましょう

栃久保誠撮影
栃久保誠撮影

目次

30歳独身、無職。本屋さんになる。
新型コロナウイルスが私たちの生活に大きな影響を与えた2020年。起業と会社員のパラレルキャリアを歩んでいた森本萌乃さん(30)は、人生初の「無職」を経験しました。「2020年、思ったよりツラくない?」とぶっちゃけながらも、書店主になる夢に向けて全力疾走の森本さん。12月1日、念願のオンライン書店がオープンしました。これまでの道のりをつづったコラム「30歳独身、無職。本屋さんになる。」もいよいよ最終回。ラストは、オンライン書店に込めた思いについてです。
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大切なことほど言葉につまる

30歳、独身、無職。
ここまで書店準備に関するプロセスを書き進めてきましたが、いざサービス内容の話になると、上手い書き出しが見つかりません。

これは多分、恋に似ています。
毎日そのことで頭がいっぱいで、自分の中では納得感が大きい分、いざ伝えようとするとどこから始めて良いか分からなくなってしまいます。

先日、無事オープンも迎えてみて。
単純な「好き」がなかなか言えなくなってしまったこの気持ちを、今更ですが書きたいと思います。

栃久保誠撮影
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出会いたいのに出会えない、そんな矛盾とずっと戦ってきた

20代の後半、私はマッチングアプリに熱をあげていました。それが人並みか、人並み以上かは分かりませんが、とにかくたくさんスワイプしました! やりとりが始まってちょっと盛り上がったり、実際に会って飲んでみたり、写真はすごいタイプなのに上手く進まなかったり。「マッチングアプリあるある」は一通り経験したものの、なじむ気配はゼロでした。

恋人は欲しい。でも出会いなんかないし、マッチングアプリが最近は主流だと聞くし。

新しいものを取り入れる時、最初の違和感や緊張感はつきものです。

スマホだって音楽のサブスクサービスだって、最初はみんな戸惑った。だったらこの新しい出会い方にもすぐに慣れていくだろう、慣れていかなきゃ!自分で自分を盛り上げて「私のまだ見ぬ素敵な人はこの中にいる!」と暗示をかけましたが、やっぱりだめでした。

出会いたいのに出会えない。出会いのサービスはたくさんあるのに受け入れられない。
この解せない感覚、もしかしてただの時代遅れなのか? いやもういっそ、時代遅れでもいいからアプリは無理。

新しさや便利さだけでは乗り越えられない自分の中にある葛藤はいつしか大きくなり、この違和感の根本を無意識のうちにずっと探している自分がいました。

栃久保誠撮影
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私を救ったのは金曜ロードショーだった

そんな折、テレビで何気なく見かけたのが、忘れもしない金曜ロードショー「耳をすませば」です。

図書館で偶然出会う二人。自分の夢というポジティブな障壁。育まれる恋心。

この映画には、私の欲しい全てが詰まっていました。その時の衝撃については後から言語化できるようになったのですが、私が求めているのは、出会いではなく「予期せぬタイミングの出会い」でした。

逆転の発想で「出会いがない」のぼやきをなくしたい

恋でも友情でも、地続きの毎日の中でなんとなく引き寄せ合うことが人間関係の始まりの醍醐味だと感じています。マッチングアプリをダウンロードすることによって「出会いたいです!」と先に宣言することは、せっかくの「予期せぬタイミング」を自ら削ぎにいくような感覚で、私の違和感はここにありました。

だったら。

出会うために使うんじゃなくて、使っていたら出会っちゃう。
逆説的な視点からサービスを作ってみたい! それが昨年会社を立ち上げた一番の理由です。

世界中にジブリファンは多く「耳をすませば」は中でも人気作品の一つですが、「耳をすませば」を観て起業を決めたのはもしかしたら世界に私一人なんじゃないかと、自分の中では密かに誇らしく思っています。

栃久保誠撮影
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起点はマッチングサービス、でも作りたいのは書店

マッチングアプリが作りたいわけではない! 出会いを生み出すために、出会いたいと言わなくていいサービスを作りたい――。

自分でも意味不明なこの問いに向き合い続けることで、私の興味はいつしか書店へと向いていました。

理想の出会いである「耳をすませば」が図書館での出会いであったことは理由の一つですが、本という最も孤独でストイックなエンタメは、繋がりづらいからこそ繋がりを生み出せるという奇跡のような可能性を持っていると感じたからです。そう言えば、私も恋をすると必ずおすすめの本を借りていました。

本が好き、マッチングアプリが苦手。それを繋いだ「耳をすませば」。
かの有名なジョブスが説いた“connecting the dots”の一つに、これも入ったりするのでしょうか……。

本と人、人と人、感性のマッチングを信じたい

きっかけは1冊の本。

そんなささやかな始まりの先には、自分一人では選ばない本と出会って生活が彩られたり、感想をシェアした相手が未来の親友や恋人になったり。
思いがけない可能性が待っています。

読書の持つ孤独でストイックなエンタメという魅力は守りつつ、誰かと楽しむ選択肢もあると、読書がもっと楽しくなるんじゃないかと信じています。
そんな選択肢をどう提示するかについては、オープンのぎりぎりまで粘りに粘って悩んだ部分。ぜひ楽しんでもらえたら光栄です。

栃久保誠撮影
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30歳の私が、27歳の私へ送る応援歌のような書店

起業や新規サービス開発は、結果的に自分自身を救うものになると尊敬する方から聞いた事があります。本当にそうだと思います。

私が一番求めているサービス、数年前の自分に向けて作る応援歌のようなサービスを目指したからこそ、書いては消し、書いては付け足しを繰り返して、なかなか言葉にできない20代の揺れる恋心や倦怠感に嫌というほど向き合いました。

仕事というより自分と向き合う修行、修行というより自由研究とも呼ぶべきこの半年、人生の中でも忘れられない時間になりました。
構想3年、失業してからの半年間は全身全霊を捧げた集大成です。

お客様自身の物語のチャプターがすすんでいきますように、書店名は「Chapters」です

余談ですが、前身のサービスは会社名をそのまま使ってミッションロマンチックと呼んでいました。ロマンチックという言葉の印象が強すぎたせいか男女比は2対8、女性の圧倒的勝利でした笑。

これでは27歳の私を救えないということで、今回の新しいサービス名や書店のデザインはロマンチック要素をできるだけ隠しています。

オンライン書店"Chapters"

カナダの大型書店がかつてChaptersという名前だったそうですが、当面カナダでサービスを展開する予定もないのでこのまま行きます!笑
【Chaptersはこちらから】

2020年12月1日にオープンしたばかり、できたてほやほやの書店"Chapters"。
オンラインではありますが、皆様のご来店を本物の街の本屋さんのように、わくわくどきどきお待ちしています。


2020年、ツラくない?
12月を今こうして迎えて生き抜いているだけで、みんな自分自身を褒める価値があると思います。

そして来年も、再来年も、まだまだツラさは続きそう。
ツラいツラいと言いながら、前に進む歩みだけは止めずにいたいと思います。

栃久保誠撮影
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新型コロナウイルスの影響で人生初の「無職」を経験した森本萌乃さん(30)。失業からオンライン書店オープンまでの日々を綴りました。

森本萌乃 1990年東京生まれ。株式会社MISSION ROMANTIC代表。
2013年に新卒で広告代理店に入社後、外資とスタートアップへの二度の転職を経験、スタートアップ企業在籍中に自身の会社である株式会社MISSION ROMANTICを2019年創業。パラレルキャリアで起業と会社員を並行し、2020年より自分の事業へ一本化。2020年中に自身の新サービスであるオンライン書店がオープンした。

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