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筒美京平の偉大すぎる仕事、独断の20選 レコードジャケ写で振り返る

あなたの京平ベスト・セレクションは?

いまだ魅力が色あせない、筒美京平さん作曲のレコードたち=竹谷俊之撮影
いまだ魅力が色あせない、筒美京平さん作曲のレコードたち=竹谷俊之撮影

スリー・ディグリーズ「にがい涙」

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1975年2月
作詞:安井かずみ 編曲:深町純

スリー・ディグリーズ「にがい涙」
スリー・ディグリーズ「にがい涙」

とんねるずと綾小路翔による企画ユニット「矢島美容室」の元ネタとなる、米国の女性ソウルボーカルユニット。
「来日記念盤」と銘打ち、日本向けオリジナル曲として制作された。ジャケ写をよく見ると、綾小路の扮装の再現度の高さが分かる。
その時どきにはやった洋楽のエッセンスを巧みに取り入れ、国内向けに再解釈するという、京平作品のメタ構造が顕現化した興味深い一曲。知らずに聴けば、たどたどしい日本語も相まって、ホンモノの洋楽の邦訳セルフカバーにしか聴こえない。

Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス「セクシー・バス・ストップ」

1976年3月
編曲:Dr.ドラゴン(筒美京平)

Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス「セクシー・バス・ストップ」
Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス「セクシー・バス・ストップ」

前後して浅野ゆう子に提供した楽曲の、さらにディスコサウンド寄りのインストゥルメンタル版。
Dr.ドラゴンこと筒美が自らプロデュースする匿名バンドユニットの演奏で、尺八まで取り入れた「洋楽アーティストの東洋趣味」仕立てが絶品。
盛りまくったアフロヘア女性のイラストが描かれたジャケットの裏面には、「ニューヨークのディスコで流行」と称する、怪しげなダンスステップの教則イラストが描かれている。

郷ひろみ「洪水の前」

1977年7月
作詞:岡田冨美子 編曲:船山基紀

郷ひろみ「洪水の前」
郷ひろみ「洪水の前」

デビュー以来の中性的で可愛らしい郷のイメージから一転、シャツごと水(汗を表現?)に濡れた姿で大人の色気をアピール。
この「濡れジャケ」とでも呼ぶべき潮流が、確かにレコードジャケット界には存在する。

岩崎宏美「シンデレラ・ハネムーン」

1978年7月
作詞:阿久悠 編曲:筒美京平

岩崎宏美「シンデレラ・ハネムーン」
岩崎宏美「シンデレラ・ハネムーン」

三木たかし作曲の傑作「思秋期」などを経て、岩崎にとって6作ぶりの京平作品。ジャケ写からは、二十歳前の凛々しく自信に満ちた表情が伺える。
この年のNHK紅白歌合戦では、曲順序盤お約束の超高速伴奏でも破綻なく歌いきり、あらためて実力派を印象づけた。「宏美ちゃんにその(結婚の)喜びが来るのは、いつの日のことでしょうか。いよいよお年頃~」という曲振りアナウンスの余計なお世話感が、なんとも時代を感じさせる。
後に、コロッケによるものまねの鉄板ネタとしてもお茶の間で親しまれた。

山内恵美子「太陽は泣いている センセーション'78」

1978年7月
作詞:橋本淳 編曲:筒美京平

山内恵美子「太陽は泣いている センセーション'78」
山内恵美子「太陽は泣いている センセーション'78」

前年に世界的ヒットとなった、サンタ・エスメラルダ「悲しき願い」そっくりな、フラメンコ仕立てのディスコ歌謡。
筒美自身の編曲で、いしだあゆみのヒット曲を再構築した。編曲家としてはセルフカバーとなる。
後ろに黒人男性モデルを従えたジャケ写も雰囲気たっぷり。
ただ、俳優出身の山内はあくまで、アイドル歌謡風にハキハキと歌い上げる。そんな、歌唱と演奏との微妙なテンションのズレさえも味わい深い。

中原理恵「ディスコ・レディー」

1978年8月
作詞:松本隆 編曲:筒美京平

中原理恵「ディスコ・レディー」
中原理恵「ディスコ・レディー」

前述の山内と同郷(北海道函館市)の中原にとって、これまた同じくサンタ・エスメラルダ風のデビュー曲「東京ららばい」に次ぐ2作目。
ジャケットも、シックで大人びた曲調に合わせて、モノトーンで落ち着いた装いとなる。
B面の「SENTIMENTAL HOTEL」は、よりディスコ風味が濃くて渋い佳曲。

榊原郁恵「ROBOT(ロボット)」

1980年6月
作詞:松本隆 編曲:船山基紀

榊原郁恵「ROBOT(ロボット)」
榊原郁恵「ROBOT(ロボット)」

YMOに触発されたかのような、意欲的なテクノ歌謡。この路線は後に、小泉今日子への提供曲「迷宮のアンドローラ」へと進化を遂げる。
ただ、実験的な楽曲の割には、ジャケットは極めて正統派。
同じく電子ドラムのアクセントが効いたB面の「恋はう・ら・は・ら」は、曲調にとらえどころがない不思議なアイドル歌謡。榊原が自身のインスタグラムで寄せた追悼コメントによると、実はこちらがA面候補だったという。

近藤真彦「ブルージーンズ メモリー」

1981年6月
作詞:松本隆 編曲:馬飼野康二

近藤真彦「ブルージーンズ メモリー」
近藤真彦「ブルージーンズ メモリー」

ライダースジャケットをまとった、自身が主演する同名映画の宣材風ジャケ写。
初期のマッチ提供曲では、松本・筒美コンビの傑作が量産された。いずれも、マッチのボーカルと女性コーラスの掛け合いが特徴で、コーラスがない後世のカバーアレンジが物足りなく感じるのはそのためだ。
ただ時たま、「ギンギラギンにさりげなく」の作詞が伊達歩(伊集院静)だったり、「ハイティーン・ブギ」の作曲が山下達郎だったりする。そして、大御所と比較されながら、いずれ劣らぬ名曲を残した両氏の力量もまた、刮目に値する。

小泉今日子「まっ赤な女の子」

1983年5月
作詞:康珍化 編曲:佐久間正英

小泉今日子「まっ赤な女の子」
小泉今日子「まっ赤な女の子」

作詞・作曲問わず実に多彩な作家陣が参画し、それぞれに甲乙つけがたい魅力を放つ小泉の珠玉の楽曲群。
そんな優れたクリエーターたちに触発されるように、小泉自身も旧来の固定観念的アイドル像の呪縛から脱し、自立した新時代のアイドル像を体現することになる。
この曲はその過渡期の、まだ比較的オーソドックスなアイドル歌謡。
ジャケット意匠も控えめで、女性アイドル定番の健康的な顔アップ写真となる。

下成佐登子「TRANSFORMER(トランスフォーマー)」

1985年9月
作詞:大津あきら 編曲:鷺巣詩郎

下成佐登子「TRANSFORMER(トランスフォーマー)」
下成佐登子「TRANSFORMER(トランスフォーマー)」

いまや世界的なSF実写映画として知られる、シリーズ最初のTVアニメ国内版「戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー」の主題歌。昔はこういう、無責任にけしかける物言いの副題が多かった。
ジャケットに描かれた劇画仕立てのロボットイラストは、当時はやったガンプラのテイストに通じる。裏面には、歌い手である下成自身の写真が配されていた。
B面のエンディング曲「Peace Again(ピース・アゲイン)」は、まだ続きそうなところで曲が終わるという、これまた京平作品に多い作風の一曲。
ちなみに同じアニメソングとしては、NHK「スプーンおばさん」のエンディング曲「リンゴの森の子猫たち」(飯島真理)もまた、メロディアスな秀作。

レコード時代以後も名曲がたくさん

以上、記者による筒美京平コレクション20枚の紹介でした。

レコード盤からCDにリリース媒体が移行した1980年代末期以降、さらに、ダウンロード&ストリーミングで聴くスタイルが定着した2000年代以降も、京平さん作曲の名作は数多くあります。
中でも、携帯電話キャリアのCMソング「恋のダウンロード」(仲間由紀恵 with ダウンローズ)は、文字通りのダウンロード音楽でした。
これらの素晴らしさも今後、次の世代に語り継がれることでしょう。

記者がここに挙げたように、熱心なファンであればあるほど、いや、そうでない人もきっと、それぞれ心の中の京平ベストがあるのではないでしょうか。
訃報を伝えるニュースをきっかけに、知らずに口ずさんでいた昔なじみの曲が実は京平さんの作品だった、という気づきがあった人も多いことでしょう。
それぞれ思い思いの京平セレクションを語らうことが、この偉大すぎる国民的作曲家への弔いになるはずです。

皆さんの筒美京平ベスト・セレクションもぜひ、コメント欄やSNSで教えてください。

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