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グルメ

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高級肉チェーンがコロナで決断「映え路線」 ハコイリ神戸牛の挑戦

「売り上げ9割減」から生まれた発想

南京町の広場すぐそばに店を構える「ハコイリ神戸牛」
南京町の広場すぐそばに店を構える「ハコイリ神戸牛」 出典: 橋本佳奈撮影

目次

新型コロナウイルスによって街に出歩く人が減り、レストランなどの外食産業は大きな打撃を受けました。感染が中国から広まったこともあり、神戸市にある中華町・南京町への影響は特に深刻でした。そんな中、神戸牛専門のチェーン店が、新しい取り組みを始めました。高級肉として知られる神戸牛のイメージですが、一時は売り上げが「9割減」だったというチェーン店が「逆張り」の発想で生みだした商品のコンセプトは「テイクアウト」「インスタ映え」。多くの業界が苦しむ今、苦境を乗り越えるためのヒントを探しに、元町のお店を訪ねました。

分厚いステーキがどーん

9月上旬、オープンしたてのお店に取材に行きました。雨の中でしたが、南京町には、国内の観光客とおぼしき人たちがちらほら見えます。

付近は露天にお店を構えて食べ歩きできるスポットです。豚まんや、点心、麺類などを売っているお店が多い中、ちょっと雰囲気の違うかわいらしいお店があります。牛が、にっこりしている看板。それが、神戸牛専門店「吉祥グループ(神戸市)」の「ハコイリ神戸牛」です。

お店では、若いカップルや女性たちが、鯛焼きサイズのサンドを購入していました。さっそく、神戸牛のステーキ(980円)食べてみます。生地から具が大きくはみ出し、肉厚なステーキがごろっとジューシ。生地は甘くてまさに鯛焼きのよう。タマネギと醬油のステーキソースのしょっぱい味とマッチして、日本人の大好きな「甘じょっぱい」味の小腹を満たせるスナックでした。高級なステーキがこんなに手軽に食べられるとは、驚き。

ドリンクセットは、かわいらしい牧場をイメージした箱に入っている
ドリンクセットは、かわいらしい牧場をイメージした箱に入っている 出典: 吉祥グループ提供
一番人気の神戸牛ステーキ
一番人気の神戸牛ステーキ 出典: 橋本佳奈撮影

コロナで和牛の価格下落 売り上げも大幅減

この「ハコイリ神戸牛」、兵庫・大阪・博多などに51店舗を展開する吉祥グループが、コロナを乗り越える一手として、生み出した渾身の新商品です。

吉祥グループの担当・槇田健一さんは「世界的に知名度のある神戸牛ですが、新型コロナによる影響は大きかった」と振り返ります。

実際、東京食肉市場の和牛(去勢・A4ランク)の加重平均価格は、昨年4月は1キロ2,433円でしたが、今年4月の同1,703円まで下落しました。

緊急事態宣言中の5月は、吉祥吉グループ全体の売り上げが前年同月の9割減まで落ち込んだといいます。

南京町の広場のすぐ近くに店を構える
南京町の広場のすぐ近くに店を構える 出典: 橋本佳奈撮影

乗り越える一手は「インスタ映え」「テイクアウト」

さらに、東京五輪に向け、インバウンドの期待もしていたことから、契約牧場から通常より多く仕入れを予定していました。「なんとか契約牧場を守らなければ」と、3月には、半額キャンペーンをおこったり、通販に力を入れるなど対策をしていきました。その中で生まれたのが「テイクアウト」でした。

「コロナを乗り越えるのは、どうしたらいいのか……と4月ごろから社員で考えていました」という槇田さん。社員との話し合いの中から、若い学生さんをターゲットに、インスタ映えを意識したテイクアウトがひらめいたといいます。

「この状況にならなければ生まれていなかったのかもしれません(苦笑)」

鯛焼きのように生地を焼き上げる
鯛焼きのように生地を焼き上げる 出典: 橋本佳奈撮影
優しい甘さの生地。牛がにっこり笑って舌をぺろりと出した型がとれる
優しい甘さの生地。牛がにっこり笑って舌をぺろりと出した型がとれる 出典: 吉祥グループ提供

鯛焼きから応用「甘じょっぱい」がクセになる

厚さ約1センチメートルの生地に神戸牛をはさんだ「ハコイリ神戸牛」は、鯛焼きから発想を得ています。そのため生地は甘く、食事系からスイーツ系までなんでも挟むことができます。

さらに、かわいい牛がにっこり笑ってぺろっと舌を出している型がきれいに取れ、「インスタ映え」の写真にも最適です。

食べやすさを狙っていますが、素材には手を抜いていません。吉祥グループの売りである「神戸牛一頭買い」は変えなかったからこそ、普通は高級店でしか食べられない牛を980円と、リーズナブルに提供できているそうです。

神戸牛は厳しい基準をクリアした、兵庫県産の但馬牛のことを指します。
牧場で一頭一頭、愛情をこめて大切に育てられていることから、「ハコイリ神戸牛」としました。実際のサンドもカラフルな箱にも「ハコイリ」をカタカナで記されています。

吉祥グループが扱っている神戸牛
吉祥グループが扱っている神戸牛

出典: 吉祥グループ提供

国内の観光客が少しずつ、地元のビジネスマンも

「ハコイリ神戸牛」を片手に、南京街を歩いてみました。コロナ前よりは少ないですが、徐々に人の動きは戻りつつあります。

マスクをしたカップルや、スーツ姿でパソコンを開いてベンチに座る様子も。不安な状態が続きますが、少しでも外の空気を吸って気分転換をしたくて、出てきたのかもしれません。

「ハコイリ神戸牛」は、文字どおり紙製の箱に入っており、歩きながら楽しめます。南京町には広場の東屋の前に人形がいたり、中華街の門など撮影スポットがあり、それらを背景に写真を撮ると、「3密」を気にせず「インスタ映え」の写真をアップすることができます。

南京町の広場にある男の子と女の子の人形がマスクをつけていた
南京町の広場にある男の子と女の子の人形がマスクをつけていた 出典: 橋本佳奈撮影、背景の人が写らないよう一部加工

店内メニューを持ち帰りにするのではなく、「ハコイリ神戸牛」は、これまでの商品に新たな価値を与えています。同時に、高級肉である神戸牛の質は妥協していません。その結果、神戸牛のブランドを失わず、気軽に歩きながら楽しめるという新しいスタイルを生みだすことができました。

コロナによる世の中の変化に振り回されるのではなく、自分たちの価値を見つめ直し、さらに、新たな価値を創造する。外食業界に限らず、様々なところが影響を受けている今、苦境を前向きに乗り越えようとする「ハコイリ神戸牛」には多くの気づきがありました。

メニューは甘じょっぱ系5種類、スイーツ3種類
神戸牛ステーキ980円
神戸牛ミートパティ&たまご480円
神戸牛ポテサラソーセージ480円
神戸牛コロッケ480円
海老マヨ630円
マンゴー&ホイップ580円
苺カスタード480円
チョコバナナ350円
※(税込み価格)

出典: 吉祥グループ提供

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