連載
#46 夜廻り猫
「風邪みたい、動けん」泣きながら一人の夜 夜廻り猫が描く「友達」
「風邪みたいで動けん」と伝えたら、友達から返ってきたメッセージは「いま金欠だから千円貸して」――。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「友達」を描きました。
街を夜周り中の猫の遠藤平蔵は、アパートの部屋でふせっている男子大学生の涙の匂いに気付きます。
「泣いておるな?心で どうした」と遠藤が話しかけると、布団に入ったままの大学生は「たぶん風邪」と答えます。
友人に「風邪みたいで動けん」とメッセージを送ったところ、その返事は「俺、今金欠でさ 千円貸して おまえんち行くからドアの下に置いといて」でした。
大学生は「そんなもんだよ みんな大変なんだ」と諦めたように眠りにつこうとします。
そこへ、玄関から「ゴトッ」という音が。
不審に思ってドアを開けると、ノブにはぱんぱんの買い物袋がかかっていました。
友人からは「緊急支援物資置いてきた 千円は月末に返す」というメッセージが届きました。
大学生は「俺、内心……あいつ冷たいなって思ってたんだ」と涙を流します。遠藤は「よかったなぁ」と笑うのでした。
作者の深谷さんは、「新型コロナウイルスの影響は今、想像しきれないほど大きいと思います。そのひとつに『人間関係が持ちにくくなった』ことがあるのではないでしょうか」と心配します。
この春から一人暮らしを始めた人や、入社・入学など新しい環境に進んだ人……。深谷さんは、特に若い人やこれから人との関わりをつくっていく人を思いながら「『関わらないのがマナー』という考えの人ばかりにならずに済むように、お互いに気持ちの交流を作っていけますように、と願っています」と話します。
「人を傷つけるのも人ですが、救えるのも人だと思うんです」
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本6巻(講談社)が2019年11月22日に発売された。
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