連載
DA PUMPの「夢の叶え方」 KIMIが忘れない初心「明日も仕事がある」
ISSAさん、DAICHIさん、KENZOさん、KIMIさん、TOMOさん、U-YEAHさん、YORIさんの7人によるダンス&ボーカルグループのDA PUMP。ダンスだけでなくラップも担当するKIMIさんには再ブレーク後も忘れないようにしていることがあります。「今は恵まれていると思いますし、甘えていちゃいけないんだろうな、というのをすごく感じる」。誰もが認める「練習の鬼」KIMIさん。DA PUMPの「夢の叶(かな)え方」を聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・坂本真子)
子どもの頃、KIMIさんは野球少年でした。小中学校では野球に打ち込み、遊撃手で3番打者という花形選手だったそうです。
人生を変えたのは中学3年の夏。友達に誘われて日本武道館へDA PUMPのライブを見に行きました。
「夏休みの後半で、ちょっと行かない? みたいに誘われて。見に行ったら、めちゃくちゃかっこいいじゃん、ってことでダンスを始めたんです」
見よう見まねで振りを練習することから始まり、やがてダンススクールに通うように。とにかく楽しくて、踊っていたそうです。
二十歳を過ぎてからはダンスを教えたり、ショーで踊ったりするようになり、ロサンゼルスにダンスを習いに行ったこともありました。
「その頃はひたすら前向きで、ただ踊りたかったんですね。ショーに出てお客さんの歓声をもらうのが刺激になったし、とにかく楽しくて、という状態でした」
ダンスや音楽以外の仕事にも興味があったそうですが、何を職業にして生きていこうかと真剣に考え始めた頃、DA PUMPに誘われました。
「びっくり、ですよね。本当にびっくりしました。でも、自分がこういうチャンスをもらえるのも人生に1回あるかないか。ない方がパーセンテージは高いと思うので、なかなかできないことだし、ちょっと頑張ってみようかな、と思って」
2008年、25歳でDA PUMPに加入。ラップを担当するようになります。もともとヒップホップが好きで聴いていましたが、本格的にラップを練習したのはDA PUMPに入ってからでした。
しかし、それから10年、ヒットに恵まれない日々を過ごします。思うように活動できない時期もありました。
「精神的に結構きつかったときはありました。モチベーションを保って、心のバランスをとるのが難しくて、最後は自分との闘いでした」
そんなとき、ダンスを始めた頃のことを思い出したそうです。
「例えばランニングマンのステップをやるのに何カ月かかっていたかを思い出すんです。できないときは本当にできないし、できたときはすごく楽しいんですよ。だから、自分が思い描いていることはいつか必ずできるだろうと、ただひたすら、そう思い描いて、毎日を過ごしていましたね」
ポジティブなようで、実際は「結構後ろ向きのところもある」というKIMIさん。それでも、やるしかない、と決めたら、とことんやり抜くことを身上としているそうです。
「器用な人間じゃないので、人の何倍、何十倍も練習します。絶対に負けないですよ。お前より絶対にかっこよく踊る、という気持ちでいつも練習しています。その切磋琢磨(せっさたくま)がいいチームになるし、ほかのメンバーの存在も刺激になる。ただ、最後はハート。モチベーションは絶対に持っていなきゃいけない」
小中学校で野球をやり、体育会系の上下関係を経験したことは役に立っているそうですが、「今の世界に入って、ハート、メンタルはだいぶ鍛えられましたね」とKIMIさん。
友達の存在も支えになりました。
「どん底にいようが、どんな状況にいようが、すごくフラットに見てくれる友達が多いんです。職種はバラバラだけどバランスが取れていて、『頑張っていれば、いつか見えるぞ』と言ってくれた人が、僕の周りには多かった」
2018年、「U.S.A.」で注目されてから、いろいろなステージに出られることが何よりもうれしかった、と言います。
「明日も仕事がある。明日もライブができる。ステージはどこでもいいので、とにかく人前に出られることが純粋にうれしかったですね」
2019年には日本武道館で2日間ライブをやり、秋にホールツアーで全国を回りました。
ブレーク前とは一変した状況を、KIMIさんはとても冷静に見ています。
「前との差を考えると、今は恵まれていると思いますし、甘えていちゃいけないんだろうな、というのをすごく感じるので。何を自分の中でコントロールすればいいのかと考えたとき、悔しかったときの自分でいようと思ったんです。面白いことももちろんあったけど、ちょくちょく活動が止まって悔しかった、つらかった10年が続いたわけじゃないですか。そのときもずっと前を向いていたので、絶対に初心を忘れず、1に練習、2に練習。とにかく自分の立ち位置を絶対崩さないように、もっとレベルアップしていかなきゃ、という意識がすごく強くなりました」
実は、ライブを怖いと思ったときもあったそうです。
「今まで歌えた歌詞が、ライブで飛んだりするんですよ。面白いぐらいに飛んで、結構トラウマになって。これは何だろうと思ったら、やっぱり自分のハートなんですね。一瞬でも迷いがあったときに、どうすれば自分が平常心に戻れるか、という戦いをしています。DA PUMPの名前に恥じないように、というプレッシャーが、一昨年はめちゃくちゃありました」
努力家、という言葉が似合うKIMIさん。先のことを考えるより、1日1日を大切に過ごしたいと言います。
「目先のことばかり追っていると、それにしか目がいかなくなっちゃう。もっと身の回りのことを大事にしたいので、毎日コツコツ、目標に向かって日々、自分がどう過ごすか。どれだけ山を越えるか、だけです。昨日頑張っても、今日怠けたら、それを取り戻さなきゃ、と思うし、とにかく毎日動きたい。……ちょっとせっかちですね」
「U.S.A.」で1つの夢をかなえた今、「もう1回ムーブメントを起こしたい」と言います。
「『U.S.A.』の現象を見て、お客さんの喜んでいる顔が一番励みになったので、そういうものを継続していけるようにしたいですね」
人として一番大切にしていることは何か、尋ねると――。
「あいさつですね。礼儀じゃないですか。小さい頃から野球をやっていて、礼儀についてはよく言われたたので。どんな人にも、どんな状況でも、元気よくあいさつをして、『ありがとう』は忘れるな、と。自分が申し訳ないと思ったら『すみませんでした』。そういう、人として、気持ちのいい関係を作りなさい、と母に言われました」
今回、写真撮影のスタジオで、メンバーのみなさんがお弁当を食べた後の空き箱を回収した際に、KIMIさんが「自分で捨てるので大丈夫です」と言って丁寧にゴミをまとめ、ビニール袋に入れた姿が印象に残りました。
最後に、今、夢を抱いている10代~20代に助言するとしたら、何を言いますか、と聞きました。
「自分次第ですよね。本当にやりたかったら、自分が納得するまでやればいいし、少しでもそこに未来はないと思ったら、いろんなことに興味を持って次に進んだ方がいい。自分がそういう感じの道のりだったので、あそこでやめていたら今どうなっていたのかな、と思うことはあります。でも、続けていたら結構いいことあるよ、とも言えるので」
ダンスに出会う前は野球選手になりたかったというKIMIさん。最近、久しぶりに草野球をやったそうですが……。
「ゴロが飛んできて、思っていたより球が速くて、よけたんですよ。思いっきり通過していきました(笑)」
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