ネットの話題
「中高生におすすめのゴムは?」批判覚悟で発信、女子大生の気づき
性の話題はなかなか人に相談しにくいものです。現在、大学2年生の私も避妊の正しい知識をどこで得れば良いのか分からず、悩んだことがありました。中島梨乃さん(以下りの)は、高校生の頃からYouTubeで性について発信しています。「中高生にオススメコンドーム」「低用量ピルをもらいに産婦人科へ行ってみた!」など、これまでにない発信を続けています。2017年度の人工妊娠中絶件数は約16万件である一方、学校教育の現場で性についてちゃんとした知識を得た実感がない現状。そもそも、どうして性の話題は相談しにくいのか? 批判覚悟で発信を続けてきた、りのさんと一緒に考えてみました。(ライター・恵眞)
――YouTubeで最初にりのさんの動画を見た時は大学1年生の時でした。普段、見ている動画はメイクやファッション系のため初めてりのさんの動画を見た時はJKが性教育を発信していることにとても驚きました。性教育の発信を始めたけっかけはなんですか?
りの:一番大きかったのは当時付き合ってた彼氏に、「後でお腹殴ればいいからコンドームしなくていいよ」と言われ続けたことです。それは、教育をしっかりされていないのがいけないけどそもそも殴るのはだめじゃない?って思いました。私も断れるだけの知識がありませんでした。彼だけが悪いとは思いません。私たちは現在の性教育によって苦しめられました。
――性教育について自分の顔を出して発信するのは自分だったら怖いです。日常生活でも触れにくい内容だからです。りのさんには、発信を通じていいこと、悪いこと、色々経験されたと思います。性教育をYouTubeで行っていて嬉しかったこと、嫌だったことは何ですか?
りの:嬉しかったことは、「同年代の子から見て良かった」、「りのさんの動画を見て性に関する考え方が変わった」という感想が直接DMやYouTubeで届くことです。他にも直接、感想を伝えてくれる友達がいました。例えば、「家族で性について話せるようになった」と言ってくれたことが嬉しかったです。
りの:いやなこともいくつかあって……例えば避妊目的で低容量ピルをもらいに行ったという動画をYouTubeで動画を出したんですけど、その時は「高校生のくせに」とか、「高校生がピル飲むとかありえない」とか。
りの:あと、「高校生だから知識がないだろ」とか言われて。実は、動画を出す前に産婦人科の先生にチェックしてもらって原稿書き直したり。自分でも勉強をしたりしているんです。それを、高校生だからという理由で切り捨てられたりとか。男性器の写真送られてきたりとか。
りの:あと、YouTubeってコメント見えるじゃないですか。それが好きじゃなくて。長文で書くと正しそうに見えるんですよ。変なコメントなのに、そのコメントに対していいねが100とかついてたりとかして。こういったコメントを若い子たちが見て若い子が性についての興味を持ってはいけないものだと思ってしまうのではないかと不安です。
――私自身、ピルの効果が詳しく分からず、悩んだことがありました。でも、その時、誰に相談したら良いのか分からず、困った記憶があります。InstagramやTwitterのDMで性に関する相談に乗っているそうですが、相談内容ってどんなものがありますか?
りの:最近は、ピルの動画出したからっていうのもあると思うんですけど、ピルについての質問が多いです。あとは妊娠する仕組みをわかりやすく教えてほしいですとか。中学生の女子なんですけど、未だに子どもの作り方がわからないけど誰にも恥ずかしくて聞けなくて困ってますとか。本当に人それぞれすぎて。ほぼ中高生からくる。
――振り返ると、学校で性について教えてもらったことでおぼえているのは性器の名前ぐらいです。それ以外の知識は助産師のYouTubeなどから得たような気がします。日本の性教育の現状の説明とその現状をどう思いますか?
りの:性教育の授業やっていても、私の高校の先生はエロの方向にもっていきがちだと思います。みんなの関心を引きたいのは分かるけど、1人の男の子を指して、おまえ夏休み前だから予習しとけよみたいなちょっとちゃかすような感じで言うのは良くないと思います。
りの:日本の学校では小学5年生くらいで生理の説明がありますが教室が男女別々だったりします。男女一緒にするべきだし、もっと幼い時から教えてほしいです。本当は、国際セクシュアリティ教育ガイダンスという性教育の国際基準を示しているものがあり、最低でも5歳から性教育を始めなさいとも書いてあります。
――とはいえ性教育やジェンダーに関するイベントが開催されること増えるなど、私のまわりでも変化が起きていることを実感します。性教育が最近注目されたり、変わってきたりしている実感はありますか?
りの:変わったところと変わっていないところの差が激しいと感じています。変わったところで言うと、生理ちゃんが映画化されたことです。それはすごいなと思います。あとは、TikTokを見ているとシェクシャルマイノリティの人が上げている動画に対してコメントが好印象なものが多いです。それは、良い流れだと思います。
りの:でも、レズビアンカップルだからみたいな感じで応援している風潮もまだあると感じます。そこはまだ”LGBTQ”を特別視しているなと感じます。そこは発展してほしいです。でも第一段階として良い流れにはなってきていると思います。
りの:変わっていないところは、学校でコンドーム配った時に、「コンドーム配るやばい奴がいるんだけどキモすぎ」って言う人がいました。フェミニストを叩くような発言をしているような人もいます。あとは、実際に中学生の話聞くと、友達が避妊してないとか。全然届いてないんだなと感じます。
りの:Twitterとかで性教育に興味があったり発信したりしている人の中だったら、講演会とか増えていてすごいなとか思いつつ、全然変わってないんだなと思いました。意識の高い層は性に関する知識を高めています。しかし、情報が得られない層は置いていかれている状態です。
性教育を顔を出して発信するとくことはとてもハードルが高いことだと思っていました。やはり、嫌なことを言われたり、辛いことがあるとお聞きしましたが、それでも発信し続けるりのさんの強い意志を感じました。
私は、りのさんのYouTubeの話をきっかけに性に関することや性教育の問題点を家族で話せるようになりました。
何かきっかけがないと性の話題は話しにくいと思います。でも、YouTubeは身近で性教育を学びやすい場所になり得ます。。他にも、生理ちゃんのようなアニメもわかりやすくて見やすいと感じました。勉強している感がなく気軽に楽しめるのが重要です。
りのさんが指摘した、意識が高い層とそうでない層の温度差は、私のまわりでも感じることがあります。
LGBTや生理に関するイベントがたくさん開催され、SNSでも性について発信している人をよく見かけます。しかし、イベントに参加したり、SNSで拡散しているのは同じ人が多くなりがちです。
まずは、イベントに普段行っていないような子を誘ってみることからはじめてみる。そんな身近な積み重ねから、良い流れを作っていけるのではないかと考えています。
※「中絶率が6.5%である一方」とあったのは「2017年度の人工妊娠中絶件数は約16万件である一方」の誤りでした。訂正しています。
※前文に誤字がありましたので修正しています。
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