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DA PUMPの「夢の叶え方」 ISSA、不遇の時代も「今日が良ければ」
ダンス&ボーカルグループDA PUMPは、ISSAさん、DAICHIさん、KENZOさん、KIMIさん、TOMOさん、U-YEAHさん、YORIさんの7人。「U.S.A.」の国民的ヒットから1年たち、2020年はアリーナツアーで始まります。リーダーでボーカルのISSAさんは「今日が良ければいい、という感じだった」と若い頃を振り返り、今は「1日1日を大切に」と語ります。DA PUMPの「夢の叶(かな)え方」を聞きました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・坂本真子)
激しく踊りながら歌っても全く声が乱れない、唯一無二の歌唱力が際立つISSAさんですが、もともとは歌ではなく、ダンスから音楽の道に足を踏み入れました。最初にダンスをやりたいと思ったのは、中学1年の頃だったそうです。
「先輩たちが踊っているのを見て、かっこいいな、と思って、友達と一緒にやり始めた。その初期衝動が膨らんでいった感じです」
幼稚園に入る頃に沖縄アクターズスクールに入り、ローカルCMに出たことはありましたが、10代の頃は離れていたそうです。バイトとダンスと学校、という高校生活を送り、卒業後の進路を考える時期を迎えます。
「高校でダンス熱がどんどん強くなっていて、仲間とダンスをやっていければ、と思っていたときに、母親から『もう1回アクターズスクールを、見に行くだけでも行ってみたら』と言われたんです。見学に行って、なんか面白そうだなぁ、と思ったのが、高3の2学期ぐらい。そのときにはもう、他のメンバー3人がいて、4人で何か面白いことをやってみないか、と言われて」
4人の中で1人が歌うことになり、ISSAさんが指名されたそうです。
「それまではみんなでカラオケに行くぐらいだったのが、なぜか俺になって。本格的に歌い始めました」
歌って、踊って、ラップも、というスタイルが現事務所の社長に認められ、4人で東京へ。歌とダンスのレッスンに通い、m.c.A・Tさんのプロデュースで1997年、「Feelin' Good -It's PARADISE-」でメジャーデビューしました。
「あれよあれよという間に道筋ができていって、僕らが一番好きだったm.c.A・Tの曲でデビューしたんです」
翌年には日本武道館公演を成功させ、5年連続で紅白歌合戦に出場。2001年のベストアルバム「Da Best of Da Pump」はミリオンセラーになるなど、人気を博しました。
2007年、10周年記念ライブのリハーサルで、ISSAさんは大けがを負います。バク転に失敗し、右大腿(だいたい)骨転子下骨折。全治半年と診断され、ライブは中止になりました。
「一生踊れないと医者の先生に言われたんですけど、自分が好きで仕事にさせてもらっていることが奪われると何もかも失ってしまうし、ほかにできることもなかったので、絶対踊ったる、という意識を持って、普通の人の何倍もリハビリをやりましたね。待っていてくれる人の前に早く立ちたいという思いが強かったので、医者もびっくりするぐらい回復が早かった。先生の意見を絶対に覆してやろうという意地があったから、投げ出さずにやれたのかな」
実は今も後遺症で足が痛み、歩行に支障が出るときもあるそうですが、パフォーマンスをしているときは、それを全く感じさせません。
「ステージに立っているときはアドレナリンが出て、痛みは感じないですし、やる前や終わった後にケアしながら向き合っていくしか方法がないので。最近よく『つらかったでしょ』と言われるんですけど、動けないもどかしさみたいなものがつらかったかな、というぐらいで、それを凌駕(りょうが)するのが自分の役目だと思っているし、常に自分と対峙(たいじ)しながら、今の体でできる限りのパフォーマンスをやり続けるしかないと思っています」
DA PUMPは、2008年に9人、2014年から現在の7人で活動してきました。なかなかヒット曲に恵まれず、活動が止まっていた時期も、全国のショッピングモールを回る無料ライブを続けていた時期もありました。
2018年6月、3年半ぶりのシングル「U.S.A.」の発売日に、ISSAさんにインタビューしました。「今考えると、失敗も成功も全てが未来に進むために必要なことだったと思うし、僕が見てきた景色を他のメンバーに見せたい」と語っていたことが印象に残っています。
そして、みなさんご存じのように、DA PUMPは再ブレークを果たしました。年末は紅白歌合戦などの歌番組を総なめに。昨年6月には日本武道館で2日間、超満員のライブを行い、秋はホールツアーで全国を回りました。
「かなえさせてもらったことはうれしいですし、そこに立っている彼らの顔を見たとき、純粋に、良かったなぁ、やっと俺らもここまで来られたんだなぁ、と」
ただ、昨年秋の全国ツアーは、6人でした。
YORIさんが胸椎(きょうつい)類骨骨腫で手術を受けたためで、リハビリを経たYORIさんは昨年11月末のテレビ番組から少しずつ参加。ライブは、今年2月のさいたまスーパーアリーナ公演から復帰します。
ショッピングモールを回っていた頃、全員がそろわない日もあったそうです。YouTubeで当時の映像を見ると、ステージの大きさなどに応じて自在にパフォーマンスを披露する様子がわかります。
「今回、6人でホールツアーをずっと回って、いいことも悔しいことも感じつつ、常に7人でパフォーマンスをしているという意識で、いつもステージに立っていました。アリーナツアーでは、7人でがっつり立つ姿を見せます」
2018年にインタビューしたとき、ISSAさんは、「チームの目標として掲げることとは別に、自分としては目標に向かって行くのは苦手。その日その日にあることをクリアして、目の前にあるものを完璧にこなしたい」と話していました。
今回改めて聞くと、「若かりし頃は、今日が良ければいい、明日起きて、昨日良かったな、じゃあ、今日はもっと良くしよう、という感じだった」と振り返りました。
「今もその延長線上にいて、1日1日を大切にしながら、少しずつでも好転していけばいいと思っています。ただ、ここまで来られて、年間のスケジュールが何となく立てられるようになってきて、久しぶりに全国ツアーを回れる状況なので、それをコンスタントに来年も再来年も続けていくことがチームとしての目標です。7人がいい歯車になって転がっている実感があるので、これを続けられるように考えていきたいですね」
最後に、ISSAさんが今、夢を持つ10代~20代に助言するとしたら何を言いますか、と聞きました。
「やりたいことの度合いにもよるかもしれないですけど、若いうちは思ったことをやってみて、ダメでも、そこで追い続けることも素晴らしいし、スパッと諦めて次に行くことも素晴らしいことだと思うので」
ISSAさんは高校時代に、ファストフード店や居酒屋、ガソリンスタンド、駐車場の整備、船を洗うなど、さまざまなアルバイトを経験したそうです。
「大人と対峙する時間、社会に触れる機会を若いうちから多めに持つ方が、いろんなアドバイスももらえるし、自分の選択肢の幅も増えるから、いろんなところに飛び込んで行くといい。同時に、何かを一途に思い続けて、その夢のためにやり続けるということも、両方あっていいのかな、と思いますね。僕自身はこれしかないと思ってずっとやってきたし、年々楽しさは増していて、これからもやり続けることを考えます」
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LIVE DA PUMP 2020
2月11日、さいたまスーパーアリーナ(ディスクガレージ 050-5533-0888)
3月8日、Aichi Sky Expo(キョードー東海 052-972-7466)
3月19日、大阪城ホール(サウンドクリエーター 06-6357-4400)
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