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連載

#36 夜廻り猫

「私たちは噓つきになったね」厳しかった親……夜廻り猫が描く子育て

目次

「うちの親は厳しかったね」。夏の日の夕暮れ、姉妹ふたりがベビーカーを押しながら自分たちの小さな頃を思い出しています。怒られて家の外に出されたことも。だから……「私たち、噓(うそ)つきになったね」。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「子育て」を描きました。

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「私は怒らないつもり 怒れば噓をつくから」

心の涙の匂いをかぎつける猫の遠藤平蔵は、街を夜周りしようと出かけた夏の夕暮れ、かすかな涙の匂いに気づきます。

川沿いの遊歩道を、ベビーカーを押した姉妹が歩いています。

「うちの親は厳しかったね」「お姉ちゃんも私も毎日怒られたね」

自分たちの小さな頃を振り返ります。悪いことをしたら、外に出されて家の中に入れてもらえませんでした。

そんな風に厳しく育てられたから……「私たちは噓つきになったね」。妹も笑いながら「ね」と応じます。

「怒れば噓をつくから 私は子どもを怒らないつもり」
「私は怒らない忍耐力がないからなぁ でもうちの親と同じになったらいやだな」

これからの子育てを不安にも思いながら、ふたりで「がんばろう」と励まし合う姉妹。そんな背中にそっとエールを送る遠藤だったのでした。

追い詰められたら人は噓をつく

作者の深谷かほるさんは、「どうして嘘をつくのだろうか、どうしたらつかずに済むのだろうか」と時々考えるといいます。

さらに、「親になってからは『どうしたら嘘をつかせずに済むのだろうか』が加わりました。いまだにこれといった答えは見つからないのですが」と話します。

「嘘はいけないということ、追い詰められれば人は嘘をつくということの間を揺れながら、自分を信頼して生きられるようになりたいと、もうすぐ還暦ですが、まだ目標として思っています」

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本5巻(講談社)が4月23日に発売された。

「夜廻り猫展mini」8月15日から京王百貨店新宿店で

「夜廻り猫」の世界観を表現した「夜廻り猫展mini」が8月15日~19日、京王百貨店新宿店で開かれます。原画やキャラクターが描かれた「猫石」、新作の「野良猫勲章」などを展示。缶バッジやマスキングテープなどの新作グッズも販売します。

8月18日(日)11時からは深谷さんのトークイベントも開催。飼っていた保護猫マリやキャラクター誕生の裏話を語って頂きながら、ライブドローイングも行います。当日コミックをお買い上げ頂いた方には、先着200人でサイン会も開きます。

ペットイベント「みんなイヌ、みんなネコ」の一環です。保護犬・保護猫の写真展や、譲渡会、女優・浅田美代子さんのトークショーもあります。詳細は朝日新聞のペットサイト「sippo」のイベントページで紹介しています。

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