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真冬の高架下に「サウナ」作った……サウナー鉄道社員の熱すぎる愛

東京・下北沢に登場したテントサウナが人気です。期間限定のイベント「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」は、チケットの売り切れが相次ぐなど注目を集めています。真冬の高架下のサウナがどうして?人気の理由からはサウナの新たな可能性が見えてきました。

下北沢に現れたサウナ。いったい誰がこんなところに……
下北沢に現れたサウナ。いったい誰がこんなところに……

目次

 日本に数あるサウナの中でも、ひときわ個性的なサウナがあります。場所は、「サブカルの聖地」として有名な下北沢。しかも野外です。水風呂や外気浴まで楽しめると聞いて体験したところ……。あやうく現実に戻ってこられなくなるほどの「ととのう」に襲われました。真冬の高架下に、いったいなんでサウナを? 仕掛けに人の壮大な「野望」からはサウナの新たな可能性が見えてきました。

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下北沢にテントサウナ現る

 皆さま、サウナ入っていますか?

 以前、サウナの入り方についての記事を書いたおかげで、サウナ情報が様々入ってくるようになりました。そんな中、「下北沢に期間限定でテントサウナが登場、水風呂や外気浴まで楽しめる」という情報を耳にしましたので、早速体験してきました。

 テントサウナが現れたという下北沢。下北沢駅は絶賛開発中。現在31歳の私が学生の頃、よく待ち合わせで使った南口は、今や跡形もありません。

 「サブカルの聖地」「若者の街」などと言われるこの街も、日々その姿を変えていることを実感します。


 そんな駅から徒歩5分とかからない場所にある「SIMOKITAZAWA CAGE」。京王井の頭線の高架下に3年間限定で生まれたイベントパークで、京王電鉄が運営しています。会場近くまで来ると、

見えてきました。遠目から見ても、明らかに目立っています。

 様々なメディアで取り上げられ、サウナーの間で話題になっている「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」。既に日にちによっては売り切れている時間もあるようです。

 チケットは事前に公式サイトで購入。受付を済ませ、タオルなどを受け取ります。(バスタオルは100円でレンタル可能)

 ちなみに基本的に20歳未満は入場できません。(ただし日曜日の特定の時間は未成年も会場への入場は可能とのこと。詳細は公式サイトをご確認ください。)

【関連リンク】「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」の公式サイト

 まずは水着に着替えます。更衣室には30個ほどのロッカーがあります。

 それほど大きなロッカーではないので、あまり大きな荷物は持ちこまない方が良さそうです。

 ちなみにドライヤー、化粧水、鏡、綿棒は用意されています。


 さて、着替えも終わり、サウナに向かいます。

 サウナの基本マナー、まずはシャワー。軽く体を流します。

 シャンプーやボディーソープはありません。また持ち込みもNGとのこと。

じんわり温まるサウナに、キンキンの水風呂

 さて、いよいよタオル片手にいざテントサウナへ。

 サウナ室内ではセルフロウリュが楽しめます。ただしロウリュするときは周りの人に確認するなどのマナーにはご注意を。

ロウリュ
熱くなったサウナストーンに水をかけ蒸気を発生させること。体感温度が上がり、発汗が促進される。

 もちろんテントサウナ内にはTVもありません。

 取材当日の参加者の男女比は6:4くらいでした。みなさん、なかなかにサウナ好きと見えて、思い思いにロウリュを楽しんだり、中にはアウフグースをし合う人たちも。

アウフグース
ロウリュで発生した蒸気をタオルなどであおぎ、サウナ室内に拡散させるドイツ発祥のサービス。

 同じ空間をみんなで楽しむために、それぞれが気を配る。見ず知らずの人たちでも、サウナに一緒に入れば、自然と仲良くなれる。そんな素敵な空間がそこにはありました。

 サウナの定員は一つの時間枠につき40人。サウナ好きが40人いれば貸し切ることもできます。サウナ仲間を集めてサウナパーティー!なんていうのも乙かもしれません。

 テントサウナの中には時計もないので、自分の感覚を頼りにサウナを楽しみます。

 体からじんわりと流れ出した汗が頰をつたいだしたところで、一旦外へ。

 いつもは少し騒がしく感じる下北沢の夜の空気も、この火照った体には、まるで高原の冷涼な空気のようです。


 シャワーを浴びて汗を流し、水風呂に向かいます。

 水風呂は男女別。向かって右が男性用、左が女性用です。

 いざ入水。

――冷たい。非常に、冷たい。

 サウナに目覚めて以来、様々な場所で水風呂を体験してきましたが、ここはかなり強烈です。

 この日の男性用水風呂の温度は約5度、女性用は何と約3度とのこと。

 まさか下北沢でここまで冷たい水風呂を楽しむことができるなんて――。

下北沢の空気で外気浴

 水風呂でしっかりと体を冷やした後は外気浴を楽しみます。

 ウッドデッキもしっかりと完備。横たわり、涼をとります。そっと目を閉じて、ここまでのサウナ体験を反芻します。

 充実したテントサウナに、自由に楽しめるロウリュ、冷たい水風呂、心地よい外気――。

 ふと、本当にここは自分の知るあの下北沢なのだろうか?という疑問が頭をよぎります。

 もしかしたら、何度も通ったライブハウスも、裏路地にあるお気に入りのカフェも、ところ狭しと物が置いてあって秘密基地みたいなリサイクルショップも、あのお馴染みの餃子チェーンも、仕事でお世話になったミニシアターも、初めて下北に来たときに入った地下のファミレスも、ここから出たらきれいさっぱりなくなっていて、旅行雑誌やサウナ本で見たフィンランドの町並みが広がっているのかもしれない--。

 などと、よくわからない妄想をしてしまうくらいには「ととのって」いました。

ととのう
サウナで味わえる爽快感を表現した言葉。またその爽快感を得ること。(例)今日もサウナでととのった

 危ない危ない、現実に戻って来られなくなるところでした。

 一呼吸置いて、再びテントサウナへ。冷たい冬の空気ですっかり冷えた体を、再び優しい暖かさが包み込みます。「みんな、この暖かさを求めてサウナに入るのだろうな。」そんなことを感じながら、じっくり体を温めます。

 現状、都内で男女一緒にサウナを楽しめる施設は多くありません。しかし、ここでは男女一緒に、都会の真ん中でサウナを楽しむことができるのです。なんと稀有な空間。

 特に夜の帳が下りる頃には、そこここにコロナを彷彿とさせる黄色い灯りがともり、一層幻想的な空間になります。

 この機会にサウナデートをしてみる、というのも素敵かもしれません。

サウナの後はコロナとサウナ飯

 たっぷりとサウナを楽しみ、大満足。「さて、帰ろうか。」と更衣室から外に出たところで、目に飛び込んできたのは、その口に緑色のライムをくわえた―― 

 そう、コロナ。


 夏の暑い日差しの中、キンキンに冷えたビールを飲む。もちろんそれが最高なことは間違いないでしょう。

 しかし、サウナを心ゆくまで楽しみ、冷たい冬の空気にむしろ感謝するほど暖まった体でコロナを味わう。それは夏に飲むビールと同じくらい素晴らしい味わいです。

 コロナがこのイベントを開催した理由を頭ではなく体で理解します。

 コロナが掲げる「This is Living(これが人生だ)」というコンセプトを、そのとき既に実行していました。

 冬にしかできない体験、冬だからこそできる体験。それが今、下北沢にはあるのです。


 コロナ・ブランドマネージャーの福田真美さんはこのイベントが注目を集める理由について「都会の真ん中で味わうサウナ、そして至福の1杯。忙しい日々の中、そうした『非日常の瞬間』を体験できるからではないでしょうか。」と話します。

 「2017年にも同様のイベントを開催したのですが、限られた人しか体験できなかったため瞬発的なイベントで終わってしまいました。今年はより『ムーブメント』になればと思っていました。サウナが趣味と公言する人が増えていたりと、サウナがブームであるとは感じていたので、良いタイミングだったと思います。」

 都会×サウナ×コロナという掛け算が、この新しい体験を生み出したのですね。


 もちろんそうなれば、サウナ飯に手を伸ばさない訳にはいきません。

 併設のアジア屋台酒場・ロンヴァクアンに入ります。

 当日注文したのは3種類。

 まずは「パクチーとクレソンのサラダ」

 あの独特な香りと共に、ビールを楽しみます。

 お次は「フライドポテト ヌクマムバター」

 ヌクマムの濃厚な香りと味が食欲をそそります。

 三つ目は「ガイヤーン」

 ココナッツの良い香りに、少し濃い目の味付け。ビールと共に箸が進みます。

 いずれもサウナ上がりのビールと相性抜群。

 最後にデザート「サウナアイス」を注文。

 バニラアイスに塩がかかっているので、塩分補給にピッタリです。

サウナ愛でいっぱいのイベント

 食事も終わり、休憩しながら受付で受け取った冊子を手にとってみました。タイトルは「KEIO SAUNA MAP」

 表紙には「サウナをこよなく愛する京王電鉄社員が紹介」との文字。

 若きサウナー2人が制作したそうです。

 京王線沿線のサウナについて細かいレポートが記載されています。何というサウナ愛。この熱量が、真冬の下北沢にサウナを出現させたのかと思うと、納得できます。

 京王電鉄・開発推進部の田原慎悟さんは「サウナーの2人が関わったのでは、たまたまでした」と話します。

 「今回のようなプロジェクトに若手社員にも関わって欲しいとは思っていたものの、中々きっかけがありませんでした。でも、サウナについての会議があった時、サウナ好きの若手2人が興味を持ってくれて、ぜひやりたいと言ってくれたました。その結果、率先して『KEIO SAUNA MAP』を作ってくれたりと、すごく助けられましたね。」

 下北沢でテントサウナを楽しんだ後は「KEIO SAUNA MAP」片手にサウナ巡り、なんていかがでしょうか?

 会場となっている「SIMOKITAZAWA CAGE」は今秋に閉まってしまいます。

 しかし、田原さんは「京王線沿線には、自然を活かした体験を楽しめる場所があります。サウナに限らずですが、今回のように非日常を楽しめるようなことができれば。」と話します。

 また、コロナの福田さんは「まだ未定ですが、幸いこのイベントが話題になったことで、各方面からお声がけいただいています。新しいサウナカルチャー×コロナについては前向きに検討していきたいと思っています。」とも。

 今回のイベントをきっかけに、また新たなサウナ体験が生まれるかもしれません。期待に胸が高鳴ります。

 平成が終わりを告げる日本に生まれたサウナムーブメント。創意工夫で新たな楽しみが見つかる「イノベーション」の可能性が、人々を引きつけているのかもしれません。

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