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「ヒラリーが次の大統領だ!」中間選挙的中の政治学者が断言する理由

2016年の大統領選終盤戦で、支持者へ訴えるクリントン氏=2016年11月7日、アメリカ・フィラデルフィア、ランハム裕子撮影
2016年の大統領選終盤戦で、支持者へ訴えるクリントン氏=2016年11月7日、アメリカ・フィラデルフィア、ランハム裕子撮影 出典: 朝日新聞社

目次

 ヒラリー・クリントンが次のアメリカの大統領だ! そんな大胆な予想をするアメリカの政治学者がいます。でもヒラリー氏は前回の2016年にトランプ氏に敗れて以来、目立った活動をしていません。それが2020年秋の大統領選に当選するなんて。まさかという思いを抱えつつも、予想の主が来日した折に、気になるその理由を尋ねてみました。(朝日新聞国際報道部記者・軽部理人)

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36歳、ジョージタウン大教授

国会議事堂と共に写真に収まるサム・ポトリキオ教授=2018年12月、東京都千代田区、軽部理人撮影
国会議事堂と共に写真に収まるサム・ポトリキオ教授=2018年12月、東京都千代田区、軽部理人撮影

 アメリカの超名門ジョージタウン大のサム・ポトリキオ教授(36)です。2012年に若干29歳にして、「米国で最も優れた教授」(ザ・プリンストン・レビュー社より)の一人に選ばれるなど、新進気鋭の政治学者です。昨年10月に私がワシントンに出張した際に出会い、12月に教授が来日して再会しました。お酒を飲むことと冗談を言うことが好きな、気のいいお兄さん的な人です。

 

軽部

教授、ヒラリーさんが大統領になるという予想はジョークですか?

 

サム教授

いや、マジです。もしも全財産を賭けて勝者を予想する必要があれば、私はヒラリー氏とするでしょう。2016年の大統領選で敗れた後、彼女は回顧録(「邦題:WHAT HAPPENED 何が起きたのか?」)を執筆しましたが、それを読むと野心が全く消えていないことが分かるんです。

 

軽部

最近すっかり見ないけど、隠居したわけではないのでしょうか。

 

サム教授

彼女は大統領の座まで、今までに2度近づいたことがあります。1度目は民主党の「予備選」と呼ばれる内輪の争いでオバマ候補(後の大統領)に、2度目はトランプ氏に阻まれました。特にトランプ氏の時は、得票数では勝っていたのに敗退。著書の中では悔しさがにじみ出ていたので、きっと次の大統領選にも出ます。
※記者注:アメリカ大統領選では、得票数ではなく「選挙人」の過半数を獲得する必要がある。得票数で勝っても選挙人の数で負け、大統領になれない事例がアメリカではたびたび起きている。
ニューヨーク州で2016年9月、大統領選の討論会で握手するトランプ氏(左)とヒラリー氏
ニューヨーク州で2016年9月、大統領選の討論会で握手するトランプ氏(左)とヒラリー氏 出典: ロイター

ヒラリー氏 民主党内に強固な支持層

 

軽部

ヒラリー氏が出る理由を、もうちょっと具体的に教えてください。

 

サム教授

OK。ヒラリー氏は民主党内で一定数の強固な支持があり、その数は大体「30%」と言われています。出馬の有無にかかわらず、現時点での民主党内トップを走るのはバイデン元副大統領で、支持率が30%あります。

 

軽部

ヒラリー氏と同じぐらいですね。

 

サム教授

と思うでしょう? だけど、党内の候補者がこれからもっと固まってくると、バイデン氏の支持率は相対的に下がります。でもヒラリー氏は強固な「30%」があるからその数字は下がりません。結果的に、党内のレースに勝ち残るのはヒラリー氏になります。
ホワイトハウスで2016年4月、笑顔を見せる当時のオバマ大統領(右)とバイデン副大統領
ホワイトハウスで2016年4月、笑顔を見せる当時のオバマ大統領(右)とバイデン副大統領 出典: ロイター

カギを握る経済情勢

 

軽部

トランプ氏が再選される可能性は?

 

サム教授

昨年11月の中間選挙で、トランプ氏率いる共和党は下院で民主党に過半数を占められたけど、上院では議席を上積みしました。1期目の大統領は中間選挙で苦戦することが多いため、善戦した方です。トランプ支持者の熱は決して冷めておらず。このままいけば再選されますね。

 

軽部

このまま、というと?

 

サム教授

再選するには、経済が好調であり続ける必要があります。トランプ氏の高支持率は、好調な経済に引っ張られてきました。もし不況に陥ったら有権者はついてきません。聴衆に向かって『君たちは勝ち疲れるほど勝ちまくるだろう』と豪語してきたくせにって、有権者はあっという間に見限りますね。
インタビューに答えるサム教授=2018年12月、東京都千代田区、軽部理人撮影
インタビューに答えるサム教授=2018年12月、東京都千代田区、軽部理人撮影

 

軽部

そうなったら共和党はどうなるのでしょう。

 

サム教授

トランプ氏は完全なアウトサイダーで、共和党内での推薦をほとんど得ずに大統領職に就きました。でも、現在のトランプ氏は党内の支持が90%と絶大です。今でこそ議員たちはトランプ氏の悪口を言えないでいるけれど、ひとたびトランプ氏が議員たちの再選を阻む危険要因だと分かると、議員たちは手のひらをクルっとするでしょうね。

 

軽部

でもヒラリー氏とトランプ氏だったら、前回と同じ戦いですよね。そしたら、またトランプ氏が勝つのでは?

 

サム教授

前回に限らずですが、勝敗のカギを握るのは3割と言われる無党派層です。前回は無党派層の中にもトランプ氏が浸透していました。大統領になってからの政策や彼の振る舞いを、無党派層の有権者がどう判断するかがポイントですね。繰り返しですが、その時に経済が好調なのか不調なのかが、大きな要因なのは間違いありません。

 

軽部

でも、ヒラリーさん出ますかねぇ。

 

サム教授

彼女はきっとこう思っています。『人々は今、トランプ氏にうんざりしている。きっとBuyers Remorce(買ってから後悔すること)が起こるだろう』とね。ヒラリー氏は遅い時期に出馬表明をして、注目をかっさらっていきますよ、きっと。

昨秋の中間選挙は予想を的中

 自信たっぷりに笑顔で答えるサム教授。実はサム教授、昨年10月に会った際、翌月の中間選挙では「共和党が下院で40議席ほど失い、上院では3議席ほど上積みする」と断言していました。ふたを開ければ、ほぼ正解だったのです……。

 今後の2年間で大統領候補に台頭する政治家は、共和党にも民主党にも他にもいるでしょう。米中貿易、移民問題……。混迷するアメリカを占うのは簡単ではありません。2年後にサム教授と答え合わせをするのが少し怖いような気持ちで別れました。

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