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教会が言っちゃう?「クリスマスにイチャイチャすんなよ」自虐の狙い
「『アーメン』=『それな』=『そだねー』」「クリスマスにイチャイチャすんなよ」。駒沢にあるキリスト教会が破壊力抜群のツイートを連発し、開始からおよそ3年でフォロワー7万人を超えました。なぜそんなつぶやきを…? 中の人に取材に行きました。
【教会豆知識】
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2018年12月3日
「アーメン」と言うのは「本当に、心から」という意味で、それ自体に宗教的な意味はない
ちなみに英訳聖書で「Amen,amen,」とある箇所は日本語訳では「まことに、まことに」と訳されている(新改訳)
つまり「アーメン」=「それな」 = 「そだねー」 pic.twitter.com/5LeJ02ye0Y
現在フォロワー7万7千人を抱えるのは、世田谷区駒沢にある上馬(かみうま)キリスト教会のツイッター公式アカウント( @kamiumach )。駒沢大学駅徒歩10分。外見も普通のプロテスタント教会です。
ツイートしているのは教会の信徒で、「まじめ担当」と「ふざけ担当」の2人。
う~ん、役割分担からしてゆるい。
ツイッターを始めたのは2015年の2月のことで、元々は「練習用」だったそう。
ふざけ担当の渡辺さん「僕が仕事でツイッターを担当することになりまして。個人でやるのもさみしいのでまじめ担当の彼を誘ったんです。あ、僕そういう仕事の関係もあって下の名前出せないんです、すみません」。
一方、まじめ担当は横坂剛比古さん(39)。行政書士ですが、アメリカのバークリー音楽大学を卒業した作曲家の顔も持つマルチな肩書も持っているのだとか。
#新しいマナー
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2018年11月27日
遠回しな言い方でオブラートに包む
裏切る → ユダる
嘘をつく → ペテロる
引きこもる → ノアる
つまみ食い → イブる
ドン引きさせる → モセる
例:あの先生のギャグ、モセってたよね
ーーいきなりなんですが、「神様をバカにするな」ってクレーム来ないんですか?
渡辺さん「来ないと言ったらウソになりますね。でも僕、こういうのってティッシュ配りと一緒だと思っていて」
ーーティッシュ配り?
渡辺さん「僕たちの目的というのは、聖書や教会に興味を持ってもらうことなんです。これは言わばチラシですよね。でも、駅前でチラシだけ配ってるとして、受け取ります?難しいですよね。みんなティッシュが欲しくて受け取ると思うんです。そのティッシュが僕たちのツイートでいう笑いであったり、共感だったりなんですね」
ーーどんな気持ちでツイートを?
渡辺さん「聖書には『ユダヤ人にはユダヤ人のように』という一節があります。相手に対しては相手のやり方で、という意味です。僕たちの真意を神様がわかっていたら、許してくれるんじゃないかと僕たちは思っているわけです。そしてその成果は神の裁量です」
ーーお。するっと聖書が入ってきましたね。
渡辺さん「はい。なるべく聖書のエッセンスを入れるようには心がけてます。とはいえ、僕も聖書のことを全部覚えていたり読み込んだりしているわけではないので、細かい引用は、まじめ担当の横坂さんに聞くことも多いですけど」
【教会豆知識】
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2018年12月2日
「クリスマスイブ」は「クリスマスの夜」という意味で「クリスマス前夜」という意味ではない
「イブ」は「evening」の略。昔のユダヤ社会で1日を夕方から夕方までで数えたなごり pic.twitter.com/mQ2Yd7N9yP
ーーこれまでに反響があったツイートを教えてください。
横坂さん「『#違法ではないが一部不適切』というハッシュタグがあって。これで『イエス 高須クリニック』という文言とともに画像つけたら高須さん本人がリツイートしてくれて。それと『#自社製品を自虐してみた』というハッシュタグの時は『シンボルは処刑道具』と。この辺は反響がありましたね」
--やっぱり怒られそうな気が……。しかし、ハッシュタグを使うんですね。
横坂さん「はい。それは意識してやっています。拡散されやすいので。先月も、11月29日に『#いいにくいことをいう日』というハッシュタグで色々つぶやきました」
#違法ではないが一部不適切
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2016年6月6日
イエス、高須クリニック pic.twitter.com/o7xY0Sw54U
#自社製品を自虐してみた
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2017年9月12日
シンボルが処刑道具 pic.twitter.com/TLmkxSRecQ
ーーちなみに、「クリスマスデートをしてみたい」ってどちらのツイートですか?
横坂さん「……僕です。でも『イチャイチャすんなよ』は渡辺さんです」
#いいにくいことをいう日
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2018年11月28日
正直なところ、中の人だってクリスマスデートというのをしてみたい。表参道とかのイルミネーションを眺めながらクリスマスディナーとか憧れる。
#いいにくいことをいう日
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2018年11月28日
クリスマスにイチャイチャすんなよ
ーー……はい。これはやらないようにしている、ということはありますか?
渡辺さん「他宗教他宗派はいじらない、ということですね。それに限らず、誰かを傷つけることはしない。それと、興味は持ってもらいたいけれど、押しつけないということも心がけています」
ーーフォロワーが増えて変わったことはありますか?
横坂さん「フォローしてくれる人の9割は普段キリスト教に関係ない人です。それでもやはり、教会を知ってもらえるようになって、来てくれる人が増えました。これは本当に嬉しいことで」
渡辺さん「実は僕自身がクリスチャン2世で小学校の時とかに周りから変な目で見られたことがあって。楽しいツイートをしていけば、お寺や神社と同じように、教会が普通の存在になるんじゃないかなって、そう願っているんです。それと、ツイートはやわらかくしますが、教会でやる礼拝などはいたって普通、まじめです」
#いいにくいことをいう日
— 上馬キリスト教会 (@kamiumach) 2018年11月28日
ドラクエばっかり教会に来やがって
勢いのとどまらない彼らは先月下旬、「上馬キリスト教会の世界一ゆるい聖書入門」(講談社)を出版。発売1週間で、初版6千部から1万部に増版されました。
2人のツイートについて、同教会の渡辺俊彦牧師は「僕は今でも彼らが何をやっているかわかっていないんです。よく続いているなぁと」。
「教会が人々をとらえる言葉からだんだん遠ざかっていたところを、彼らは伝えているんだと思う。こういうのは賛否両論あるものだし、ずれてはいけないところを彼らはわかっていると思うので、任せています」と話します。
1日に10ツイート近くを毎日続けるため、時には何時間も会議をして戦略を練るという2人。ハッシュタグの活用はもちろん、渡辺さんのマーケティングの知識も多く生かされているといるのだとか。
「ゆるさ」の中のまじめさが、人気の秘密なのかもしれません。
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