
今回の登場人物
猫渕渉
42歳の企画部部長。長年の経験で築いた人脈とそつのない仕事ぶりに定評あり。趣味は読書、お酒、料理。
倉知蓮
事業推進部所属の26歳。独特のセンスを発揮するビジュアルデザイナー。趣味はネットサーフィンとアイドル。
菅原数臣
37歳の事業推進部部長。経理担当として経験豊富なうえ、ソフトウェア分野にも精通。趣味は数学、ミルクパズル、資産運用。

猫渕
菅原
倉知

猫渕
菅原

記憶は3つの段階で構成
猫渕
枝川
枝川
倉知
枝川
枝川
ステージ2、取り入れられた情報が保存されます。保持と言います。
ステージ3、保持された情報を取り出すことになります。想起と言います。
菅原
なるほど、納得のいく構造です。つまり、忘れ物の問題は、これらのいずれかに問題が起きることで生じるのでしょうか?

枝川
このステージのどれかがうまくいかなくなることで、物忘れが発生します。
猫渕
枝川
倉知
枝川
菅原
具体的に教えてください。
枝川
昔から覚えていることや、時間的に過去の記憶です。
倉知
枝川
身近な例ですと、会話中の質問がこれにあたります。過去の記憶と違い、一時的に覚えてはすぐに忘れられやすい内容です。
猫渕
枝川
猫渕
枝川
将来やるべきことへの記憶を持ち続けて、然るべきタイミングで思い出すとです。例えば、電車に乗っていて目的の駅で降りることができるのはこのタイプの記憶のおかげです。
菅原
枝川
倉知
倉知
猫渕
猫渕
猫渕
猫渕

菅原
枝川
枝川
倉知
枝川
猫渕
これを忘れたら意味がないからメモします。
枝川
倉知
枝川
そこで、できるだけ意識内に入れておくようにしましょう。
菅原
猫渕
大事な傘にすることで、いつも意識するようになるというわけか。
倉知
枝川
倉知
枝川
そうすることで情報のインプットを強力に行うことができ、意識から外れにくくなります。
猫渕
ちゃんと置くことを意識して記銘する、と。

枝川
人が一度に意識できる数には上限があります。
菅原
たしかに体感的には、意識すべき物の数が少ない方が忘れ物やミスを防げる印象でしたが。
枝川
倉知
枝川
猫渕
枝川
倉知
でも、書いたことすら忘れたり、うっかりにじんで読めなくなったり……
枝川
菅原
ただ、メモを読み返さなければ意味がないので、傘については別の対策が必要ですが。
枝川
電車の降りるタイミングでアラームをセットしておいたり、いつも置く場所や持つ場所を決めておく、カバンにかけられるアイテムなどを活用する、というのも有効な手段の一つです。
猫渕
音が気になるならバイブレーションでも、習慣づければ傘の忘れ物を防げそうな気がしてきました。
枝川
ぜひ仕組みを頭の片隅に置いておいていただき、自分に合った方法を実践することで日常生活に役立てていってください。
倉知
菅原
枝川 義邦(えだがわ・よしくに)
早稲田大学研究戦略センター教授。東京大学大学院より薬学の博士号、早稲田大学ビジネススクールよりMBAを受ける。
研究分野は脳神経科学、経営学、研究マネジメント。専門性を活かして、脳の仕組みや働き、人間の行動などについての講演や執筆も多い。
2015年度に早稲田大学ティーチングアワード総長賞、2017年度にユーキャン新語・流行語大賞を受賞。
著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『記憶のスイッチ、はいってますか』(技術評論社)、『記憶力ドリル』(総合法令出版)など。