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何となく人気…自転車「ロココ」の秘密 知られざる地方のメガヒット
髪型でも服装でも、自分のこだわりを大事にする年頃のはず。それなのに、松山は本当にロココが多い。ロココとは…自転車のモデルの名前。全国の販売の5割が愛媛県内だという。意外と高校生は自転車にこだわっていないのか? 知られざるヒット商品の背景とは?(朝日新聞松山総局記者・大川洋輔)
自転車製造大手ブリヂストンサイクル(埼玉県)の「ロココ」は、女子高校生から大学生をターゲットに2002年に発売されたモデル。前かご部分からサドルの下にかけて、弓なりに曲がって伸びる「変形フレーム」が特徴です。
ブリヂストンサイクルによると、2015年のロココの全国の販売台数のうち、およそ5割が愛媛県内。特定の地域で一つのモデルが人気を集めるのは同社でも他にありません。
広報担当者は「初めは予想外だったが、ここまで普及したので、今後も愛媛で重点的にロココを売っていきたい」と話します。
実際、二つの高校に取材に行きましたが、ロココに乗っている生徒を探すのには苦労しませんでした。下校時間帯になると、次から次へとロココ、ロココ。
ただ、ロココを選んだ理由を聞いても、「ここのデザインがこうで……」などと説明してくれる生徒はほとんどいません。「家族や先輩がロココだった」という意見が多いのです。
今の高校生は、実はそんなにこだわりはないのか? それでも「ロココ」という名前自体は浸透しているようです。私も大学時代、自宅から駅まで自転車に乗っていましたが、名前は覚えていません。
「名前は浸透しているが、こだわりはない」といういびつな状況です。それでもブームは15年ほど続いているというのですから、不思議なものです。
愛媛大社会共創学部の広垣光紀准教授(マーケティング、消費者行動論)は「周りが買っているから良い商品なんだろう、と考えるからでは」と指摘します。多くの人がとる行動を安全で確実だとみなす「社会的証明」が働いている例との分析です。
愛媛県は自転車王国。自転車に乗る人の割合が多いことも、プラスに作用したようです。
圧倒的なシェアの理由はどうあれ、一度ある商品が流行し、いくつかの条件が整えばそれが長く続くなら、メーカーにとってはなかなか「オイシイ」話なのでは?
知られざるヒット商品は、まだまだ地方にありそうです。
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