話題
頑張りすぎなお母さんへ「ごはん炊けばなんとかなる」 土井善晴さん
「みそおむすび」と「ハムエッグ丼」。飯テロすぎるCMが生まれた背景とは?
                    話題
「みそおむすび」と「ハムエッグ丼」。飯テロすぎるCMが生まれた背景とは?
                     軽く握って転がし、味噌を塗った「みそおむすび」。フライパンで焼いたハムと、少し焦げ目をつけた目玉焼きをご飯に乗せた「ハムエッグ丼」。シンプルなのに思わず食べたくなる2つの料理は、料理研究家の土井善晴さんがテレビCMで披露したものです。炊飯ジャーのCMなので主役がご飯なのはわかりますが、制作者が伝えたかったメッセージがもう一つあるそうです。「日本のお母さんたちは本当にがんばりすぎている。とりあえず、ごはん炊いておけば、それで何とかなるんです」
 先月20、21日の2日間限定で流れた象印マホービンのテレビCM。出演しているのは料理研究家の土井善晴さんと俳優の尾野真千子さんで、「みそおむすび篇」と「ハムエッグ丼篇」の2パターンでした。
 「みそおむすび篇」では、お昼どきに子どもから突然、友だちを連れて家に来ると連絡が。尾野さんがどうしようか悩んでいると、どこからか土井さんが登場し、「みそおむすび」を作ることを提案します。
 「ハムエッグ丼篇」は、弟がごはんを食べにくると連絡してきて、尾野さんが悩んでいると、再び土井さんが現れて「ハムエッグ丼」を作るというストーリーです。
 あえて軽く握って味噌を塗る様子や、ハムを焼いた後に出た油で目玉焼きを作る様子など、思わずおなかがすく描写が魅力的ですが、土井さんのセリフも印象的です。
 「何作ろう、これ作ろうという風に考えんでも、まずはごはんを炊くこと」「ごはんの上には本当に何乗せてもおいしいですよ。全てを受け入れる」
 20日の新聞には、「ごはんを炊けば、なんとかなる」というキャッチフレーズで全面広告が掲載されていました。そこには、土井さんの署名でこんなメッセージが書かれています。
 実はこのテレビCMと新聞広告、事前打ち合わせの中で土井さんが発した、こんな言葉が元になって作られたそうです。
 「毎日忙しすぎるくらい、家でも外でも働いているのに、さらにそんなときでもごちそうをつくろうとか、お寿司をとろうとか、がんばり過ぎなんです。そんなんせんでいいんです。とりあえず、ごはん炊いといたら、それで何とかなるんです」
 今回のCMと広告はどのようにして生まれたのか? 象印マホービン広報部サブマネージャーの佐藤隆之さんと、制作した電通のコピーライター・辻本卓さんに話を聞きました。
 ――今回の新聞広告とテレビCMを制作するにあたってのコンセプトを教えてください
 【象印・佐藤さん】
 テレビCM・新聞広告ともに、最もお伝えしたいコンセプトは「象印の炊飯ジャーは、おいしいごはんのいちばん近くにいる」ということです。でも「こんなに良い製品ですよ!」とそのまま伝えても、なかなか耳には入ってきません。
 そこで、「ごはんっていいなぁ」「おいしいごはんって幸せだなぁ」と感じていただくことをきっかけとして、「おいしいごはんが食べたいなぁ」「じゃあ、ちょっと奮発して炊飯ジャーを買ってみようかな」と思っていただければ、と考えて制作しました。
 ――コンセプトが決定するまでの経緯は
 【電通・辻本さん】
 象印さんのごはんに対する思いや情熱って、想像以上にすごいんです。そこまでやるか、という情熱を開発・営業・販売促進などすべての部署の方がお持ちなんです。
 そこで考えたのが、炊飯ジャーを「家電製品」のようにスペック競争で選んでもらうのではなく、毎日のおいしいごはんを炊くための「家庭用品」として伝えることでした。
 そこを出発点として、炊飯ジャーの広告でありながらスペックの話が一切出てこない、「象印の炊飯ジャーは、おいしいごはんのいちばん近くにいる」ことを印象づけるテレビCM・新聞広告を企画しました。
 ――新聞広告の「ごはんを炊けば、なんとかなる」というフレーズは、どのようにして決まったのでしょうか
 【電通・辻本さん】
 土井先生との打ち合わせの中で、今回のテレビCMでもテーマになっている「子どもたちがみんなで家にやってきたときに、何を食べさせるか」という話になりました。そこで土井先生がおっしゃったのは、日本のお母さんたちは本当にがんばりすぎているということでした。
 その言葉に感銘を覚え、そのままコピー化しました。
 ――土井さんが提唱している「一汁一菜」は意識したのでしょうか
 【電通・辻本さん】
 先ほどの「日本のお母さんはがんばり過ぎている」という話に通じるかと思います。重すぎる荷物を降ろして、肩の力を抜いて、スタイルとしての一汁一菜を実践するということはすごいお話だと、個人的にも感銘を受けました。
 もちろん、テレビCMや新聞広告の中でも出てくる「ごはんを炊けば、なんとかなる」という言葉には、一汁一菜と同じ想いを込めようとしています。
 ――昨年は土井さんを起用した「塩むすび」のテレビCMが話題になりましたが、意識したのでしょうか
 【象印・佐藤さん】
 意識したのは「塩むすび」というより、伝えたいメッセージをいちばん説得力ある形で伝えていただけるストーリーテラー、メッセンジャーとしての土井先生と尾野さんの存在でした。昨年はお互いのシーンが別撮りだったので、今回はお二人の掛け合いの中で新たな化学反応を起こしたい、という思いでした。
 ――撮影の様子は
 【電通・辻本さん】
 土井先生がお話しになった内容はCM用の台詞ではなく、すべて撮影中にその場でお話しされた言葉です。尾野さんのリアクションやコメントも、同様に、すべて撮影中のアドリブです。撮影前まではどうなるかと不安になることもありましたが、想像以上のお二人のかけあいに感動を覚えました。
 ――見た人からはどのような反響が寄せられていますか
 【象印・佐藤さん】
 「まずはごはんを炊くことという、土井先生の言葉に救われた」「後味が、おいしいごはんを食べたときと同じように、あったかくてふかふかしていた」などなど、放映直後からたくさんの方がツイートしてくださいました。炊飯ジャーをご検討の際は、土井先生の「ごはんを炊けば、なんとかなる」という言葉と象印のことを思い出してくれたら嬉しいです。