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8種類の英語操る中国人大学生 トランプパロディ動画が話題に
中国版ツイッターの「微博」には、一芸で有名になる人も少なくありません。人口13億人の中国で「網紅(中国語のネット・セレブ)」になれば生活が一変します。留学先のニューヨークから発信する「馬克Malik」さんは、アカウント開設10カ月弱で160万人フォロワーを獲得しました。8種類の英語方言を駆使する一芸で「網紅」となった「馬克Malik」さん。最近ではトランプ氏のモノマネが話題になりました。有名人となった今、どんな生活を送っているのでしょうか?
「馬克Malik」さんは1994年生まれの22歳。2013年に高校卒業し、アメリカへ留学。現在はニューヨーク在住で、大学で金融を勉強しています。
英語は留学前から完璧にマスターしてました。もともと語学が好きで、留学すると、イギリスやロシアなど各地域の英語のアクセントも習得してしまいます。
ただ「微博にアカウントを開設したのは本当の偶然でした」だったそうです。
「2016年の1月末でした。ちょうど冬休みで、一人でさびしくて……。中国の情報を得ようとネットサーフィングしながら動画を見ていて、ふと、自分もアップロードしようかと思ったんです」
最初の動画は、得意の「英語のモノマネ」でした。オーストラリア英語、イタリア英語、ロシア英語、インド英語、さらにニューヨークの地元の女の子の英語など、8種類の英語方言をモノマネを投稿。いきなり30万回も再生されました。
その後も、英語モノマネ動画を投稿し続け、視聴回数は累計1千万回を超えてしまいました。
アメリカ大統領選では、当然、トランプ氏をネタに。2016年4月、架空のインタビューとモノマネの動画を投稿すると、一気に1万回以上再生されました。
クリントン氏への批判、移民問題、中国への見解などを、元のスピーチを再現しながら、パロディとして仕立てました。
例えば、普通なら聴衆に向かって「演説できることを光栄に思う」と言うところを、「私の話を聞けるなんて光栄だろう」と言い換えるなどし、トランプ氏の人柄をおちょくりました。
「私が住んでいるニューヨーク市は、マイノリティが多く、トランプ氏へは不信感がありました。今回の当選は、本当に意外でした……」
もともとは「ウォール街で格好いいスーツ姿を歩くこと」が憧れでしたが、今は、ネットの世界に心が動いているそうです。
「卒業後は、金融の世界ではなく、自分で起業しようと考えています」
ただ、今の勉強は起業にも役立つと思っているそうです。
「ほかの『網紅』(ネット・セレブ)は、金融に関する関連知識がないため、投資を受けてもどう利用すればよいのか分からないケースがあるようです。自分は、うまく資金を活用できると思っています。なので、大学の勉強もけっこう頑張っています」
「馬克Malik」さんはネタっぽい動画だけでなく、真面目な話題も取り上げています。
例えば一部の中国人に根強い「崇洋媚外(外国人の中でも欧米の白人をむやみにあがめる)」現象に対し、「『外国人と結婚することで、自分の遺伝子が改善できる』という考えは、100パーセントの自信喪失です。自尊がない人は人の尊敬を得られない」と説きました。
「馬克Malik」さん宛てには、毎日、多くのプライベートメッセージが届くそうです。
「あなたのビデオを見て、考えが変わりました」
「自分の世界以外の文化に接することができた。ありがとう」
「自信を持てるようになりました……」
とはいえ、悩みもあります。
フォロワー数が急増したことで、生活は一変しました。
大学の勉強もあるので、毎日更新することはけっこうな負担になっています。
「フォロワーが新作を待っていると思うと、次の動画を考えないといけなくて…」
また、時々、フォロワーから「あなたは、もう『公衆人物(公人)』なのだから…」という説教も増えたそうです。
「有名人になり、自由度が落ちたことも悩みの種です」
「微博」は中国のLINEのようなメッセージアプリ「WeChat」出現でユーザー離れが心配されました。ところが、最近では「馬克Malik」さんのような有名アカウントが人気を集めています。
「馬克Malik」さんは「微博」の世界は、今後はネット・セレブである「網紅」の時代になると見ています。
「今、フォロワーの多い網紅を目指す人が増えています。将来は、あらゆる分野に、その分野の網紅が出現すると思います」
「馬克Malik」さんは競争の激化も予想します。
「競争の結果、よりよいコンテンツが出現するはずです。一般ユーザーにとっては、いいことです。一方、作り手には、チームワークが大事になってくるでしょう。もう個人で『戦う』のは難しくなってくると思います」
2016年10月28日、東京で「日中国際ネット・セレブ・サミット」が開催されました。イベントに合わせ「馬克Malik」さんも初めて来日しました。
イベントでは日本人のユーチューバーで同じ英語ネタが得意なバイリンガールちかさんと対談しました。
日本のネット・セレブの印象は「とても真面目で、動画ビデオは精緻ですね」。数日間の滞在でした、日本人の礼儀正しさが印象的だったそうです。
漫画『ナルト』の大ファンでもある「馬克Malik」さん。岸本斉史さんが描いた原稿を買うと、早速「微博」でフォロワーに見せびらかしていました。
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