話題
「コンドームはマスクと同じ」 薄さ0.01ミリに込めたメーカーの思い
ふだん、パートナーや友達、家族とコンドームの話、していますか? 望まない妊娠や、性感染症を防ぐために大事なもの。とはいえ、なんとなく話題にしにくい。そう感じること、ありますよね。コンドームメーカーの社員も同じなんでしょうか。国内大手「オカモト」の社員、林知礼(とものり)さん(45)に聞きました。
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ふだん、パートナーや友達、家族とコンドームの話、していますか? 望まない妊娠や、性感染症を防ぐために大事なもの。とはいえ、なんとなく話題にしにくい。そう感じること、ありますよね。コンドームメーカーの社員も同じなんでしょうか。国内大手「オカモト」の社員、林知礼(とものり)さん(45)に聞きました。
ふだん、パートナーや友達、家族とコンドームの話、していますか? 望まない妊娠や、性感染症を防ぐために大事なもの。とはいえ、なんとなく話題にしにくい。そう感じること、ありますよね。コンドームメーカーの社員も同じなんでしょうか。国内大手「オカモト」の社員、林知礼(とものり)さん(45)に聞きました。
オカモトのウェブサイト「LOVERS研究所」に載っている、昨年のネット調査(400サンプル)が衝撃的です。
妊活をしていない18~29歳の男性のうち、過去1年間にコンドームなしのセックスをした人は、54.3%(!)という結果が出たのです。
「コンドームって、着けること自体、なかなかポジティブにならないんですよね。アダルトグッズとして見られることも多いですし」。林さんはいいます。「我々が啓発イベントでサンプルを配っても、営業活動的な見方や、コンドームを配る=『セックスしろ』と言っている、という捉え方をされるケースって、すごくあるんです」
確かに、ディスカウントストアでも、売り場がアダルトグッズコーナーの一角というのは、ままあること。わたし自身、生理用品だったら普通にレジに持っていけるのに、コンドームだと「わたし、セックスします!」と表明しているようで、若干の気恥ずかしさを覚えます。
「欧米では、コンドームは日用品っていう見方をされているんですよ」。そう言って、林さんはこんなことを教えてくれました。
「オリンピックの選手村でも配られましたが、マスクと同じですよね。要は人がたくさん集まるところで風邪を引いていたら、マスクをするじゃないですか。コンドームも、病気の蔓延(まんえん)をコントロールするための備品として置かれているのに、日本では別の見方をされてしまう」
ううっ。セーフセックスに重要なのは、わかっているんですけど……。
「日本人ってよく言えば奥ゆかしい民族なんですけど、コンドームそのものの見方を変えないと、パートナーとの関係の中で当たり前に使うっていう文化にはつながらないと思います」
林さんは、コンドームのほか、カイロや除湿剤などの販促やマーケット分析、商品パッケージ作り、啓発活動に携わっています。
プライベートでは、高2の長男と小4の長女、2人の子どもの父親です。仕事柄、自らを「コンドームマニア」という林さんですが、我が子にコンドームの役割を話すのは、ハードルが高かったといいます。
「息子には高校に入るときに渡したんですけど、やっぱり難しかった。そのとき言ったのは、『俺がどういう仕事をしているのか、わかってるだろ。お前が何かしたら、週刊誌の記事になっちゃうぞ』って。『だから気をつけろ』っていう、半分冗談みたいな話ですけど、自分も日本人なんだなって、そのときは思いました(笑)。僕でもそうなので、たとえば『親がもっと伝えればいい』とか『先生がもっと教えればいい』とか、言うほど簡単じゃないですよね」
芸人の徳井義実さんを「所長」に、着用率アップをPR。コンドームを持ち歩くウェアラブルデバイスを開発したり、恐竜の交尾の動画をアップしたり。面白くってためになるコンテンツが満載です。
ところでオカモトの商品には、いま訪日観光客がこぞって買い求めるコンドームがあるのだそう。薄さ0.01ミリの「オカモトゼロワン」です。
この“オカモト史上最薄”の商品にも、実は「ネガティブさをぬぐいたい」という思いが込められています。「できるだけ着けている感じをなくすのが、ユーザーのメリットになると思ったんですね。やっぱり厚いよりは薄い方がいいっていうのは、ずっとあったんです」
オカモトのホームページをのぞいてみました。驚いたのは、薄さだけでなく、デザインや機能の多さ。「先端のみ幅広」「かわいいピンク色」「潤滑剤入り」「ゴム臭を抑えたタイプ」「表裏判別補助機能付き」……。
「いろんな種類があった方が、ユーザーが選べる。自分に合ったものだったり、パートナーと使うきっかけになるものだったり。そうすれば、ネガティブなものが少しでも軽減されるんじゃないかっていう考えがあるんです。薄さにプラスして、何か別の機能でも『使ってみたい』と思ってもらえるものを、考えていけたらいいですよね」
確かに、ここまでいろいろあると、いままでサイズや厚さしか気にしていなかったのが、もったいなく思えてきました。
「たとえばパッケージが女性向けの『ラブドーム』。これは精子の働きを抑えるゼリーが付いているんです。『L』とサイズを載せるのは、その方が男性の自尊心をくすぐるじゃないですけど、女の子が彼に渡しやすいと思ったからなんです。そうやって着けやすさをサポートするのは、メーカーとして一つ大事な所だと思います」
冒頭のネット調査には、もう一つ興味深いデータがあります。コンドームを着けるとき、52%の男性が「気まずいと感じたことがある」のだとか。
確かに、わたしのまわりでも「盛り上がったときほど、『着けてくれるよね?』って、念押ししづらい」「そう言われたら、なえそう」なんて話がチラホラ……。そんなこと言ってちゃ、ホントはダメなんですけどね。
とはいえ、いきなり「コンドームを日用品と思い込む!」というのも難しいもの。まずはコンドームを、堂々とレジに持っていくことから始めようと思います。
この記事は10月15日朝日新聞夕刊(一部地域16日朝刊)ココハツ面と連動して配信しました。
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