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「ジャグジー」、本名は「ジャクージ」? 洋式泡風呂の意外な歴史

泡がわき出て、体の疲れをとってくれる「ジャグジー」。ネットで検索すると「ジャクージ」という結果が。どっちが正解なのか、調べてみました。

ホテルインターコンチネンタル東京ベイの「デザイナーズスイート&ルーム」にある豪華なジェットバス=ホテル提供
ホテルインターコンチネンタル東京ベイの「デザイナーズスイート&ルーム」にある豪華なジェットバス=ホテル提供

目次

 泡がわき出て、体の疲れをとってくれる「ジャグジー」。シャンパングラス片手に水着姿の男女が談笑するイメージもいまや懐かしい印象です。ただ、ネットで検索してみると、「ジャクージ」と結果が表示されることがあります。ジャグジー? ジャクージ? どっちが正解なのか、調べてみました。

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「元々の発音に近い言葉に」

 まずは広辞苑。「ジャクジー」の見出しがあるものの、「ジャクージ」を参照するようにしています。デジタル大辞泉も同様で、「ジャクージ」の見出しに、「『ジャクジー』『ジャグジー』とも」とただし書きがついています。大辞林は「ジャクージ」の見出しだけで、「ジャグジーと表記されることが多い」とあります。

 どちらが正しいのでしょうか? 広辞苑を発行している岩波書店の担当者に尋ねたところ「商標名の元々の発音に近い言葉にしている。両方使ってもいい」とのこと。

 大辞泉を発行している小学館の編集部も「どちらが正しいという訳ではないが、一般的にはジャグジーが通用しているのでは……」。大辞林の三省堂は「原語のつづりに合わせた。一般的に通用しているのはジャグジーなので、次の改訂の際に見直しも考えたい」と変更の可能性まで言及しました。

広辞苑の「ジャクージ」の見出し(左)、広辞苑の「ジャグジー」の見出しは、「ジャクージ」を参照するようになっている(中央)、大辞林は「ジャクージ」の見出し(右)
広辞苑の「ジャクージ」の見出し(左)、広辞苑の「ジャグジー」の見出しは、「ジャクージ」を参照するようになっている(中央)、大辞林は「ジャクージ」の見出し(右)

米国発祥だった「ジャクージ」

 ではその元になった商標とは何なのか。「ジャクージ」で調べたところ、販売代理業務をしているバスルーム製造販売会社「タケシタ」が見つかりました。

 同社の上川智之・東京支店長によると、ジャクージの英語の表記は「Jacuzzi」で、米国のジェットバスメーカーの老舗とのこと。1968年に浴槽内部にポンプが取り付けられたジェットバスを開発し、70年に、ヒーターと濾過(ろか)システムが組み込まれた家庭向けの大型浴槽を製造したといいます。

ジャクージ社から販売代理店と認定された証明を手にするタケシタの上川智之・東京支店長
ジャクージ社から販売代理店と認定された証明を手にするタケシタの上川智之・東京支店長

「非日常の楽しみを味わえる空間」

 タケシタでは85年からジェットバスのメンテナンスを手がけ、98年に代理店の契約を結んで輸入を始めました。当時、珍しかったジェットバスが普及するうえで、足がかりとなったのがラブホテルだったそうです。

 「非日常の楽しみを味わえる空間。目新しいものは真っ先にラブホテルで採り入れられることが多い」と上川支店長。フィットネスクラブも全国的に増え始め、ジェットバスが定着するようになったそうです。

 今では、一般家庭にも設置されるようになり、日本の住居環境にあった自社製のオリジナルジェットバスも販売しているそうで、「『ジャクージのジャクジーを』とこだわりを持った方から問い合わせをもらうこともあります」と話していました。

ラブホテル街が広がる鶯谷
ラブホテル街が広がる鶯谷 出典: 朝日新聞

豪華なイメージ「屋外温水泡ぶろ」

 新聞記事ではどのような表記だったのでしょうか。朝日新聞の記事データベースで調べたところ、「ジャグジー」が最初に記事に登場したのが、88年9月13日付で、栃木県西那須野町(現在の那須塩原市)にある「にしなすの運動公園」に屋内プールを建設するにあたって地鎮祭が催されたという内容でした。そのなかに「泡の出るジャグジープール」の設置も含まれていました。

 一方「ジャクージ」は90年9月13日付で、千葉市内の超高級住宅街「ワンハンドレッドヒルズ」の一部が完成し、内覧会が開かれたという記事。「芝生が敷きつめられた庭にはプールとジャクージという屋外温水泡ぶろ」があり、豪華さがアピールされていました。

「チバリーヒルズ」と呼ばれた超高級住宅街「あすみが丘ワンハンドレッドヒルズ」=1995年
「チバリーヒルズ」と呼ばれた超高級住宅街「あすみが丘ワンハンドレッドヒルズ」=1995年 出典: 朝日新聞

カタカナ語ブームは下火?

 文化庁の「国語に関する世論調査」で、外来語や外国語などのカタカナ語を使っている場合が多いと感じるか、尋ねた質問で、「ある」と答えた割合は昨年度に74・6%で、99年度の83・9%から9・3ポイント減っています。

 カタカナ語を交えて話したり書いたりしていることについても、「好ましいと感じる」割合は昨年度9・3%と、こちらも99年度と比べて4・0ポイント減っていました。何でもカタカナで表記するのは、現在のトレンドではないのかもしれません。

 バブル景気の華やかな時代に普及した「ジャグジー」ですが、なぜそのように言われ始めたのか。辞書の編集者や業界の関係者に聞いても由来ははっきりせず、それはまるで「うたかた」のよう……。現代なら単純に「洋式泡風呂」として定着していたかも知れません。

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