IT・科学
ニューズピックス黒字化「来年初頭に」 会員増、広告好調の理由は
2014年9月に編集部が本格的に動き出してから1年。ニューズピックスが業績を伸ばしている。多くのメディアがマネタイズに苦戦する中、好調の理由は何か。
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2014年9月に編集部が本格的に動き出してから1年。ニューズピックスが業績を伸ばしている。多くのメディアがマネタイズに苦戦する中、好調の理由は何か。
経済メディア「ニューズピックス」が業績を伸ばしているという。梅田優祐代表取締役は「来年初頭にも単月黒字を達成する」と話す。昨年9月に編集部が本格的に動き始めてからわずか1年。経済に特化し、市場規模が限定されるはずの新興メディアの好調の理由とは。
ニューズピックス(NP)は元々、スマホに特化したニュースキュレーションアプリだった。昨年9月から編集部によるオリジナルコンテンツも配信。利用するには会員登録が必要で、すべてのコンテンツが読める有料会員は月額1500円(iOS版のみ暫定的に1400円)だ。
NPによると、無料会員を含むユーザー数は現在65万人。「最初は1日30人しか登録がなかった」(梅田氏)が、今年に入って1日千人、8月には1日3千人とユーザー増加が加速。年内に100万ユーザー、有料会員1万人という目標を立てていたが、ユーザー数は達成の見込みが立っており、有料会員については「大幅に上回るペース」だという。
その原動力となっているのが、編集部によるオリジナルコンテンツだ。東洋経済オンラインから移籍した佐々木紀彦編集長をトップに、1日約10本の記事を配信している。
佐々木編集長は「1年間、特ダネと言えるような記事はなかった」と話す。それでもユーザーや有料会員が順調に伸びるのは「記事に具体的なKPIを設定し、どういったテーマや記事の配信の仕方がより効果的か検証している」からだという。
「編集部の発足当初は、東洋経済オンライン時代のように、とにかく多くの記事を無料で配信した。しかし、それだとページビューは伸びても、私たちにとって一番重要な有料会員は全然増えない。そこでやり方を変えた」
例えば、読者層が幅広く、ページビューが伸びやすいスポーツ記事は、従来通りにユーザー数を伸ばすことを目的として無料記事にし、ヤフーにも配信する。一方で、有料会員を増やすことを目的とした有料記事は、読者層が少ないマニアックなネタでも深掘りし、そのテーマに関心のある層に深く刺さる記事を目指す。
佐々木氏は「1年間やってきて、勝利の方程式が見えてきた」という。有料会員獲得に有効な記事の特徴として強調したのは、次の3点だ。
「ストック型」:速報系の記事は他社にも同じようなコンテンツが掲載されるし、内容がすぐに古くなってしまう。時間が経ってからでも読まれる記事こそ、お金を払っても読みたいと思ってもらえる。
「深掘り」:じっくりと取材して書かれたものには、お金を払ってもらえる。
「毎日連載」:深掘りした長い記事でも、週に1度の掲載では間延びする。毎日連載することで読者に読む習慣がつき、有料会員登録につながる。
典型例としてあげたのが、人気企画の「イノベーターズ・ライフ」。ヤフー執行役員の小澤隆生さんやDMM.com会長の亀山敬司さんなど、業界のイノベーターとして活躍する人物へのロングインタビューを、各回10数話連続で掲載している。
その他にも、「コンサルタント業界」や「ASEAN」など業界や地域に特化して、そのテーマの関心層の有料会員化を狙ったり、シェアリング・エコノミーとして注目を集めるウーバーやAirbnbをいち早く特集したり。佐々木氏は「週刊東洋経済で巻頭特集を作っていたころのやり方に近い」と話す。
また、読者の大半がスマホのアプリから利用しているため、デザインチームを設立し、スマホでの表現にも力を入れている。これらも他メディアにはない表現として、有料会員獲得の力になっているという。
NPの人員構成は編集部16人、エンジニア12人、ビジネス部門10人の38人だ(インターンを加えると47人)。さらに人員を強化し、「2017年に100人」を事業計画として掲げる。
佐々木編集長は「まだ人員的な余裕がないが、体力がついてきたらストック型だけでなく、タイムリーな記事にも取り組んでいきたい」と話す。