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『VOW』懐かしむ声、相次ぐ 月刊「宝島」お家芸だった路線変更
月刊「宝島」が休刊します。「VOW」を生んだサブカル誌、その後、ヌード、ビジネス、アングラと、次々と路線を変更してきた珍しい存在でした。
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月刊「宝島」が休刊します。「VOW」を生んだサブカル誌、その後、ヌード、ビジネス、アングラと、次々と路線を変更してきた珍しい存在でした。
休刊が発表された月刊「宝島」。ヌード、ビジネス、アングラと、次々と路線を変更してきた珍しい存在でした。時代の変化に敏感に反応した「転向」でしたが、「定期雑誌という形では役割を終えた」として歴史にひとまず終止符を打ちます。「VOW」を生んだサブカル誌でもあった月刊「宝島」の休刊には、ネット上では「VOW好きなのに残念」「VOWのころよく読んでたなー」など、当時を懐かしむ声が寄せられています。
1974年創刊の月刊「宝島」。前身は「ワンダーランド」という雑誌で、責任編集者はエッセイストの植草甚一氏(1908~1979)でした。植草氏は、映画、音楽、文学評論など多方面で活躍し、1970年代の若者文化に革新的な影響を与えた人物として知られます。「ワンダーランド」は、アメリカ文化を紹介し、大小の記事を詰め込んだカタログ雑誌のつくりで、「シティー・ボーイ」という言葉をいち早く使い出した雑誌と言われています。
月刊「宝島」の看板企画の一つが「VOW」です。読者から送られてくる街中の広告、新聞記事などから見つけた「世の中のへんなもの」を紹介する投稿企画です。1989年からは単行本も出版もされており、根強い人気を誇っています。
色んなバリエーションの「VOW」が生まれました。1997年7月には、名古屋をテーマに、町中にしゃちほこをかたどったものがあふれている様子をからかった「VOWだがね!!」が出版されました。2008年に出た「VOW王国 ヘンな新聞」では、阪神タイガースのバース選手がスピード違反容疑で逮捕された時の見出し「球も飛バース 車も飛バース」など、くすりと笑ってしまうネタが紹介されていました。
ネット上ではVOWに親しんだ人たちから、ツイッターなどで「VOWは愛読してた。少なからず影響は受けてる」「密かな楽しみだったVOWが読めないのは寂しいなぁ」などの声が相次いで投稿されました。
「月刊宝島」休刊で「VOW」はどうなるのか。
— Yusuke OHNO (@stardinner) 2015, 7月 30
宝島が休刊かぁ。
よく今まで続いたと思う。ただ、密かな楽しみだったVOWが読めないのは寂しいなぁ…
空耳アワーはいつまで続くかなぁ…
— yabaize (@yabaize) 2015, 7月 30
宝島のVOWしか読んだことない。 #クロス
— 佐伯カイジ (@kaiji_saeki) 2015, 7月 30
植草甚一氏の「シティー・ボーイ」路線から始まった月刊「宝島」でしたが、その後、次々と編集方針は「転向」を繰り返します。植草氏ら、スタート時のメンバーが入れ替わると西海岸風のカウンターカルチャー路線に。「マリファナ特集」などで熱狂的なファンをつかみます。
1980年代は、日本のロックとファッション中心の構成で、より若い読者向けに方向転換、サブカルチャー全盛期の一翼を担います。しかし音楽やファッションの専門誌が同社から別に創刊されたため、1990年代以降の売りはヘアヌードに切り替わります。
2000年代、今度は硬派のビジネス誌に生まれ変わります。2003年3月、日経新聞に「あの『宝島』が最先端のビジネス情報誌になるなんて」というコピーの全面広告が載りました。高杉純一編集長は当時の取材に対し「よい仕事をしたい、と前向きに情熱を注いでいる人たちは、実はとても多い。まっとうなビジネスマンに本当の実利を提供する誌面が目標」と話していました。
そして休刊が決まった2010年代、力を入れていたのがアングラ情報でした。2015年9月号の特集は、ずばり「裏業界10大ニュース」です。編集部からの紹介では「暴力団、ブラック企業、違法ドラッグ、新興宗教、JKビジネスなど裏業界のビッグニュースをその道の専門家が選定・解説しています」とアピールしていました。
今回、宝島社は月刊「宝島」と同時に、ストリートファッション誌「CUTiE(キューティ)」の休刊も発表しました。同社は「どちらの雑誌も時代の新しい価値観を提供してきたが、定期雑誌という形では役割を終えた」としています。
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