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中国、寄付金で「豪遊」疑惑 赤十字の信用失墜、広まるネット募金

赤十字も有名人も信用ならない──。中国の寄付文化に変化が起きています。慈善団体への不信が強まり、インターネット経由での寄付が相次いでいます。

寄付金で豪華な生活をしていると批判され、中国赤十字の信頼をガタ落ちにさせた郭美美氏
寄付金で豪華な生活をしていると批判され、中国赤十字の信頼をガタ落ちにさせた郭美美氏 出典: 郭美美氏の新浪微博から

目次

 赤十字も有名人も信用ならない──。中国の寄付文化に変化が起きています。慈善団体への不信が強まり、インターネット経由で直接、困っている人にお金を届けるケースが相次いでいます。

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ネットで窮状訴え、寄付募る

 2012年、武漢市のある9カ月の赤ちゃんが白血病になりました。しかもRh(-)Aという非常に珍しい血液型。親が中国版ツイッター微博で送った「「私のエンジェルは白血病で、そしてRh(-)Aという血液型で、大量の輸血が必要です。同じ血液型の人、ぜひ赤ちゃんを救って下さい」」というメッセージが注目が集め、手術に必要なお金と血液を集めることができました。

 2013年には、遼寧省の19歳の女の子が悪性リンパ腫を患いました。治療を受けたものの、効果はあまりなく、しかも家庭は貧しかったため、治療を断念せざるを得なくなりました。彼女は微博で助けを求めると、著名司会者崔永元や歌手王芳ら、ネット上の有名人の目にとどまり、多くのネット寄付が集まったのです。彼女は治療を続けることができました。

 2015年6月に来日して脳腫瘍の手術を受けた3歳の男の子に関して、LINEとフェイスブックと似た機能を持つネットアプリ微信(WeChat)でその家族の状況が公開されました。そのおかげで、在日華人の間で寄付が集まり、不足分の治療費にあてることができました。

白血病の娘のために助けを求めた母親の騰訊微博「依依小葡萄」
白血病の娘のために助けを求めた母親の騰訊微博「依依小葡萄」
関連リンク:荊楚健康網が伝えた「白血病の娘のために微博で助けを求めた母親」
関連リンク:『羊城晩報』が報道した「微博で崔永元などの有名人に注目された白血病の鄭祺寧さん」

マセラティにエルメス…寄付金で豪遊疑惑

 ネットを使った寄付が増えている背景には、微博などネットサービスの急速な発展と、多くの病気は保険適用ではないなど、中国の医療保険制度の不完備があると考えられていますが、それだけではありません。見逃せないのが、従来の寄付を取りまとめる団体への不信です。発端となったのは、2011年の「郭美美(クオ・メイメイ)」事件です。

 2011年6月に新浪微博で、ある女性が注目を集めました。わずか20歳の若さで、400平米を超える豪華な別荘に住み、マセラティ(Maserati)という外車を所有し、またパテック・フィリップの時計やエルメスのバーキンなどを所持し、贅沢三昧の生活を送る様子が微博で公開されました。また、「中国赤十字商業総経理」(総経理:社長)という肩書で、新浪微博では公認アカウントの「V」の認証を受けました。

 郭美美氏の贅沢な生活を支えているのは、横領した義援金ではないかと厳しく追及する意見がネット上にあふれました。その後、中国赤十字は郭美美氏が代表をつとめる団体との関係を否定。郭美美氏も「ウソをついた」と謝罪しましたが、中国赤十字への不信は消えませんでした。

 中国赤十字への寄付金は激減します。2008年の四川大地震、中国赤十字に集まった義援金は42.97億元(当時のレートで約645億円)に達しましたが、2013年4月の雅安地震では、個人経由の寄付は14.28万元(約210万円)しか集まりませんでした。

 2014年8月に、郭美美氏は北京で「カジノ開設」の容疑で逮捕され、収監されています。また売春などで高額な報酬を受けたことを、本人が中国中央テレビ局のインタビューに応じ、公開されました。

郭美美氏の新浪微博。2014年7月から更新が止まっている
郭美美氏の新浪微博。2014年7月から更新が止まっている
関連リンク:郭美美氏の新浪微博
関連リンク:「ニューヨークタイムズ中国語版」が報道した中国赤十字の寄付金変動情況

ジェット・リーの基金にも不信の目

 中国では、芸能人や有名人が創立した基金も数多く生まれています。アジアの歌姫と呼ばれ、日本でも映画「恋する惑星」で有名なフェイ・ウォン(王菲)氏と李亜鵬氏夫妻。2人は、娘が産まれた時に口唇裂症があったため、貧困地区で同症に苦しむ子供を救うことを目的として「嫣然天使基金」を創立しました。

 ハリウッドにも進出した中国のカンフー・スターであるジェット・リー(李連傑)氏も「壱基金」を設立し、「1人+1元+1カ月ずつ寄付すれば、1つの大家族のように人助けできる」という理念で、雅安地震の際、中国赤十字を上回る4億元近くの寄付金を集めました。

 一方、不信の目は、有名人が設立した基金へ向けられています。ネット上では、ジェット・リー氏の「壱基金」について、ビル・ゲイツ氏のように大富豪が自分のお金を寄付するのではなく、金持ちが貧乏人に寄付を求めていると、非難する声が相次いでいます。

ジェット・リー氏が運営する基金のサイト
ジェット・リー氏が運営する基金のサイト
関連リンク:嫣然天使基金ホームページ
関連リンク:壱基金ホームページ
関連リンク:新華網が伝えた、ネットユーザーが指摘した壱基金の汚職疑惑

個人への直接寄付にも課題が…

 中国赤十字や有名人の基金への不信から、注目を集めているのが、ネットを使って直接、お金を届けるやり方です。

 一方、ネットは瞬時に情報が広まるため、注目を集めた一部の人に寄付が集中する問題もあります。実際、今年6月、4歳の娘の治療のために200万元の治療費を募った家族には、一カ月も経たないうちに600万元以上が集まりました。そして、この家族が4つのマンションを所有していると告発がされ、詐欺の疑惑まで出る事態になりました。家族側は「病状が安定してから明細を開示する」と説明しています。

 そもそもネットを使えない人は、寄付を集めることもできません。ネット上では、逆に赤十字のような存在を求める声も現れ始めています。

 「寄付金の規範使用には監督が必要で、またより多くの人を救助すべきです。全部個人行為であると、詐欺疑惑は寄付した人の善意を傷つけます」

「寄付詐欺事件」に関する議論する新浪微博のページ
「寄付詐欺事件」に関する議論する新浪微博のページ 出典:南京柯蕾 - 在微话题一起聊聊吧!
関連リンク:中央ラジオ網が伝えた「南京寄付金詐欺疑惑事件」
関連リンク:新浪微博で「寄付詐欺事件」に関する議論

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