マンガ
むすっとした夫の本心 できないこと増えても「かっこつけたい」
〝おやつ〟が思いやりをつなでいく短編集が、SNSで「大人も子どももどちらの気持ちも分かるから……」などと涙を誘い話題になっている漫画家・稲空穂さん。漫画「かっこつけたい」に込めた思いを聞きました。
小さな商店を営んでいた老夫婦。今は仕事を引退し、車いす生活になった夫がデイサービスに通う朝の一コマから始まります。
デイサービスのスタッフに挨拶もせず、家でも常にむすっとしている夫に寂しさをにじませる妻。
「ふさぎ込んじゃってるっていうか…歩けなくなっちゃったから無理もないのかもしれないけど…」と言う妻に、デイサービスのスタッフは「それね…すねてるだけかも。男の人ってね、かっこつけてたいものらしいわよ」と答えます。
ふと、若いころ、夫が商店で「カルメ焼き」を作っていたこと、そしてそれが地域の子どもたちに好評だったことを思い出す妻。妻にとってその記憶は、夫と過ごした幸福な時間の象徴でした。
妻は夫の得意だったカルメ焼きをデイサービスで披露する機会をスタッフに頼みます。
「お手伝いしてほしいことがあって……」とスタッフに言われた夫は、最初は怪訝な顔をしていましたが、道具を扱う手つきには昔の職人気質が光ります。
膨らむカルメ焼きを見守る入居者たちの笑顔、完成したカルメ焼きに「すごい!」と歓声が上がり、若き日の商店の賑わいと重なります。
帰り際、妻は「あなたのカルメ焼き、食べたいな」とつぶやき、夫は照れながら「…いくらでも作れるぞ」とこたえるのでした。
作者の漫画家・稲空穂さんが、漫画に込めた思いを、メッセージで寄せてくれました。
《最近、祖父が車いす生活になり、デイサービスに通うようになりました。
自分が今まで普通にできていたことができなくなる――その気持ちは、私にはまだ実感がなく、どう声をかけて励ませばいいのか分からずにいました。
そんな中、祖母から「祖父がとても楽しそうにデイサービスに通っている」と聞いて、ほっとしました。
実際、通い始めてからの祖父の顔はどんどん明るくなっていったように思います。
家族だけではどうにもならないことも、第三者の方の力をお借りすることで前向きな方向に進むのだと、身をもって感じました。
介護に関わってくださっている方々には、本当に感謝しています。
今では、デイサービスの送迎車とすれ違うたびに、楽しそうな祖父母の顔を思い出します。》
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