IT・科学
グノシー、500万DL突破 赤字14億円も「想定通り」
グノシーのダウンロード数が500万を突破した。5月期決算で14億円の大赤字となり、ネットの一部では資金繰りを懸念する声も相次いだが、同社は「想定通り」としている。
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グノシーのダウンロード数が500万を突破した。5月期決算で14億円の大赤字となり、ネットの一部では資金繰りを懸念する声も相次いだが、同社は「想定通り」としている。
スマートフォン向けのニュース配信アプリ「Gunosy(グノシー)」のダウンロード数が500万を突破したことが分かった。テレビCMなどの効果が上がっているという。運営するグノシー社が2日に発表する見込み。5月期決算で約13億円の純損失を計上し、ネットの一部では「運転資金が近く底をつくのでは」などの声が相次いだが、同社幹部は取材に対し「全く問題ない」と話した。
今年3月時点でダウンロード(DL)数は累計180万だったが、その後の半年で500万DL超に達した。
グノシーによると、この急成長の原動力となったのが、テレビCMだ。同社の最高財務責任者(CFO)、伊藤光茂氏は「細かい数字は言えないが、販売管理費のほとんどを広告に使った」と説明する。
同社の5月期の販管費は16億3千万円。このうち人件費やオフィス家賃が占めるのは月に2千万円程度という。広告費としては3月から始めたテレビCMに12億円、ウェブ向けに3億円ほどを投じたと見られる。
大幅な赤字となった原因はテレビCMなどを集中投下したためであり、想定内という。「広告はユーザー獲得のための投資。そこからのリターン、つまりユーザー当たりの広告収益(グノシーがアプリ内で展開する広告)が上がるまでにはタイムラグがある」(伊藤氏)。
同社は5月にKDDIと12億円の資金調達契約を結んだが、実際の出資は6月にかけて行われたため、5月期決算に反映されているのは4億円にとどまるという。残る8億円は今期の流動資産に計上されており、当面の運転資金が枯渇する心配はないという。
5月期決算の大幅赤字を不安視する声がネットの一部で相次いだことについて、伊藤氏は「うちは戦略通りに進めているが、そういう声が出るだろうと予想していた」と話した。
では、売り上げの柱になっている広告収益はどうか。
伊藤氏によると、グノシーは昨年11月から広告事業を始め、今年1月時点で売り上げは月額2千万円程度だった。春ごろから急増し、5月期決算の売上高は3億6千万円になったという。
7月中旬に同社の木村新司共同最高経営責任者(CEO、当時)にインタビューした際は「売り上げは月に数億円規模」と話していた。決算期末の5月ごろには月商2億円程度まで伸びていた模様だ。
伊藤氏は「毎月の売り上げから固定費2千万円を除いた分で、広告宣伝費は十分捻出できる」「資金を追加調達する計画は今のところない」と話した。今後も国内でのユーザー獲得と海外進出を続けるという。
グノシーが積極展開する背景をデータで見てみたい。
7月30日に開かれたグノシーの企業向けセミナーでは、1年後のDL数目標を800万としていた。3月からテレビCMを始め、現時点で500万DLを実現させたことからすれば、この数字は狙える範囲にある。ニュース配信アプリ分野で競合する「スマートニュース」も今夏に400万DLを達成し、同じくテレビCMを始めた。この分野では1年前はヤフーが「1強」状態だったが、三つどもえの構図を作りつつある。若者に人気の「LINE NEWS」も含めれば「4強」という激戦だ。
一方、ユーザーの「数」だけではなく「質」も今後のグノシーの広告収入を支える基盤となりそうだ。
ユーザーの約半数が20~30代で、新聞・雑誌・テレビなど既存の大手メディアがリーチしきれていない層も豊富。うち2割は年収700万円を超えているという。同社はこうしたユーザー属性を広告主に積極的にアピールしていく方針だ。
ユーザーの利用頻度が非常に高いことも強みだ。同社の調査では、「ほぼ毎日利用する人」が50%を超えている。
木村氏はCEO在任中、「ニュースキュレーションだけではなく、スマートフォンのポータルを目指す」とも明言してきた。例えば、タクシーの配車なども同じアプリでできるように機能を拡充していく、としていた。国内外の市場開拓と機能の増強。その拡大路線に、いまのところ変更はないようだ。
追記:グノシーに確認したところ、木村氏は8月28日付けで共同CEOを退任していたため、一部文言を修正しました。(9月4日)