「体験した人にしか気持ちは伝わらないの?」泥だけのパンプスの記憶

忘れられてしまうからこそ、語り継ぐ

橋本佳奈

がれきの中を歩いて避難する人々を、歩道橋の上から撮影した=12日午前、宮城県名取市閖上、橋本佳奈撮影

その時、私は仙台市役所の中で取材していました。突然、地鳴りを感じ「あ、地震ですね」と言っている間もなく、築年数の古い庁舎は激しく揺れだしました。とっさに机の下に隠れると、本棚が倒れ、コピー機がものすごい速さで机にぶつかってきました。停電になりコンクリートが粉じんとなり舞いました。手が震え、死を覚悟しました。とっさに家族にメールしようと文章を打ちこみました。それから10年。今も、当事者でもあり取材者だった自分は何を伝えることができたのか、考え続けています。

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