「妻なき人の妻となり…」237年前の土石流、生き延びた村人の決断

「日本のポンペイ」が伝える災禍

東野真和

土石流から逃れようとした住民の運命を分けた石段(左)と、1979年に発掘された石段と遺体の様子

群馬県嬬恋村鎌原(かんばら)地区、どこにでもありそうな小さな観音堂に、地域内外の人たちが次々とお参りにやってくる。観音堂へは小さな赤い橋を渡り、15段の石段を上る。ただ、橋の下を見ると、石段は掘り起こされた地下にも続いている。477人が亡くなり、助かったのは石段を上り切った93人だけ。〈妻なき人の妻となり〉〈主なき人の主となり〉。237年前に火山の噴火による壮絶な経験を現代に伝える「日本のポンペイ」を訪ねた。(朝日新聞編集委員・東野真和)

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