2017年06月24日

都議選の論戦、豊洲だけでいいの? 若者たちがぶつけた3つの争点

公開質問状を出した団体の一つ「エキタス」。最低賃金を1500円に上げることを目指している=吉沢龍彦撮影

 人口1300万人あまりを擁する日本の首都・東京の行方を占う東京都議選が23日に告示されました。もっぱら注目なのは、築地市場の豊洲移転問題と、加計学園問題をめぐる与野党の攻防でしょうか。でも、それしか争点や話題がないのは、もったいないですよね。貧困や格差、ブラック労働など、私たちの暮らしに直結するテーマを議論したい――。そう考えた若者たちのグループなどが、都議会の主要会派に公開質問状を出し、ツイッターで公開しました。(朝日新聞地域報道部記者・吉沢龍彦)

都議選候補者の演説を聞く有権者ら=23日午前、都内、遠藤啓生撮影

主要会派に5団体が公開質問状

 質問状を出したのは、最低賃金を1500円に上げることを目指す若者たちのグループ「エキタス」や、ブラック企業問題などに取り組むNPO法人「POSSE」(ポッセ)、労働組合の首都圏青年ユニオンなど5団体です。都議会には11の会派がありますが、そのうち2人以上の都議が所属している自民、公明などの6会派と、1人会派の「日本維新の会」に尋ねました。

 ちなみに議会の「会派」とは、政治上の主義や政策を同じくする議員どうしが集まり、議長に結成届を出した団体のことです。したがって、今回の選挙で新たに立候補した新顔や、返り咲きを目指す元職の候補は所属していません。

 とはいえ、選挙後は所属政党(党派)を軸に会派が構成されます。公開質問への回答を、どの政党を支持するかの判断材料の一つにすることはできるのではないでしょうか。

 さて、都議選で議論されるべきテーマはいろいろあるでしょうが、今回の公開質問状では、あえて3項目に絞ったそうです。

エキタスのツイッター

質問1:時給1500円の公契約条例の制定

 一つ目は、働いても貧困から脱出できない「ワーキングプア」対策。東京都はいろいろな公共工事や事業を行い、民間に仕事を発注しています。その賃金は、時給1500円以上を保障することを「公契約条例」と呼ばれる条例で定めてはどうかと提案しました。そうすれば官製ワーキングプアを解消できるし、賃金アップの効果が波及すると考えました。

質問2:住宅政策拡充について

 二つ目は家賃がテーマ。東京の住宅費用は非常に高く、一人暮らしの若者には家賃が大きな負担です。そこで、都営住宅を増やすなど住宅政策を拡充してはどうかと尋ねました。

質問3:東京脱ブラック労働宣言について

 三つ目は全国にさきがけて「脱ブラック労働宣言」をしようという提案です。ブラック企業、ブラックバイトなどで苦しむ若者は少なくありません。東京都が率先して「脱ブラック」を宣言すれば、大きな力になると考えました。

有権者(左)と握手する都議選候補者=23日午前、都内、西畑志朗撮影

質問項目「若い世代に切実なテーマ」

 「エキタス」は、軽快なリズムを刻む「サウンドデモ」を武器に最低賃金引き上げの必要性を訴えています。貧困や経済格差を解消するには、アルバイト代を含む賃金を引き上げるしかないと思うからです。中心メンバーの一人で大学4年生の栗原耕平さん(21)は言います。

 「よく、若者は選挙や政治に関心を持っていないと言いますよね。でも、若者が悪いんでしょうか。関心を持てるような問題が争点になっていないのが原因ではないでしょうか」。そんな問題意識から、質問項目は「若い世代にとって特に切実なテーマ」をピックアップしたそうです。

 1人でも加入できる首都圏青年ユニオンの執行委員長としてブラック企業問題と向き合ってきた原田仁希さん(28)は「築地市場の移転が大事じゃないとは言いません。でも、それしか注目されていないのはおかしい」と言います。

 「東京都はただの地方自治体ではありません。予算規模は年間13兆円。福祉先進国と言われるスウェーデンの国家予算と同じくらいです。ならば、そのお金を使って暮らしをよくするための施策がもっと争点になっていいのではないでしょうか」

「エキタス」の中心メンバーで大学4年生の栗原耕平さん=吉沢龍彦撮影

賛成・慎重……、反応分かれた各会派

 公開質問を受けた各会派の反応には、思いの外くっきりと違いが表れました。

 定数127のうち56議席を占める最大会派の自民党はどちらかというと三つの提案に慎重、消極的です。公契約条例については「公正性、競争性の確保など、整理すべき課題がある」と回答しました。「脱ブラック労働宣言」に対しても、トラブル解決の支援や啓発活動の重要性を認めながらも、特に賛否は示しませんでした。

 これに比べ、3番目の勢力「東京改革議員団」(18人)に議員が所属する民進党や、4番目の共産党(17人)、6番目の生活者ネットワーク(3人)は、賛意や肯定的な評価を示す傾向が見られました。公契約条例については3会派とも賛成を明言しています。

 2番目の勢力である公明党(22人)は、三つの提案を肯定的に評価しつつ、実現に向けた課題も指摘します。公契約条例は「都の関連事業をどこまでを対象とするか、事業者の協力を得られるか」が課題だと言います。住宅政策については「まず、都の住宅局を復活させ」ることが必要だと主張しています。

 小池百合子都知事を支持する新興勢力の「都民ファーストの会」(5人)、「日本維新の会」からは、告示日の6月23日時点で回答が届いていないそうです。

 公開質問と各会派の回答の詳しい内容は、エキタスのツイッター(@aequitas1500)や、首都圏青年ユニオンのツイッター(@union_at_seinen)で見られます。