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連載

#36 猫と警備員、ほっこり攻防の日々

猫と警備員、黒猫ケンちゃんが天国へ 「今でもあの角から来そうで」

警備員さんは「今でもあの角からやって来るように思うんよぉ」とつぶやきました

警備員の馬屋原定雄さんと黒猫のケンちゃん
警備員の馬屋原定雄さんと黒猫のケンちゃん 出典: 尾道市立美術館のXから

目次

 美術館に入ろうとする猫と、防ごうとする警備員さんのやりとりで話題になってきた尾道市立美術館(広島県)。今年9月、主役の黒猫・ケンちゃんが息を引き取りました。長年にわたって攻防を繰り広げてきた警備員さんは「今でもあの角からやって来るように思うんよぉ」とつぶやきました。

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過去の攻防戦の様子
過去の攻防戦の様子 出典: 尾道市立美術館のXから

ケンちゃんと馬屋原さん


 近くのレストランで飼われているケンちゃんが、最初に注目を集めたのは2017年3月。

 開催中だった「猫まみれ展」の会場に入ろうとして、警備員の馬屋原定雄さんに阻止される様子がツイッター(現在のX)で紹介されたのがきっかけでした。

 その後も「猫と警備員の攻防」としてたびたび話題になりましたが、侵入を試みるのは警備員が馬屋原さんの時がほとんど。

 馬屋原さんが来るのは年4回の特別展の時だけなので、そのたびに美術館職員は攻防戦を期待してカメラを構えていました。

最後の攻防戦


 最後の攻防戦となったのが昨年4月18日。

 春の特別展「海からの贈りもの展」が後半にさしかかったころ、ケンちゃんが正面玄関の突破を試みました。

 開館前の朝8時ごろにやってきて、自動ドアの前で寝転がっていたケンちゃん。

 馬屋原さんが体をなでるとムクッと起き上がり、横をすり抜けるようにして館内へ。

 足を使って馬屋原さんが通せんぼしますが、さらに進もうとしたため両手で制止。

 しばらくマットの上で横になった後、突然体を左右によじって振り切り、館内へと駆け出しました。

 館内に侵入したケンちゃんですが、数メートル進んだところで自らストップ。

 馬屋原さんにつかまった後、レストランへと連行されました。

 「美術館に入りたいんじゃなくて、馬屋原さんに遊んでほしいんだろうな、と思いながらいつも見ていました」

 そう話すのは、約7年にわたって攻防戦を見守ってきた美術館職員です。

最後は大好きなおうちで


 ケンちゃんの近影が美術館のXに登場したのは、昨年7月が最後。

 今年に入ってから病気療養していて、外に出ることはほとんどありませんでした。

 懸命の治療が続きましたが9月下旬、息を引き取ったそうです。

 飼い主さんはSNSを利用していないため、美術館のXを通じて11月11日にケンちゃんが旅立ったことを公表。

 この日は、ケンちゃんが飼い猫となった記念日でした。

 美術館では、在りし日のケンちゃんを偲んで2026年のカレンダーを作成。

 最後の12枚目は、蝶ネクタイ姿でレストラン前にたたずむ写真が使われています。

 写真を選んだ美術館職員は、こう話します。

 「馬屋原さんとの攻防戦ばかりが注目されましたが、最後は大好きなおうちで幸せにすごしたんだよ、と伝えたかったんです」

 飼い主さんは、ケンちゃんへの手紙や贈り物については「お気持ちだけで十分ありがたいです」と辞退しています。

 美術館のXでは、今後もケンちゃんが元気だったころの写真を投稿していく予定です。

警備員の馬屋原定雄さんと黒猫のケンちゃん
警備員の馬屋原定雄さんと黒猫のケンちゃん 出典: 尾道市立美術館のXから

警備員さんの思い


 長年にわたってケンちゃんと攻防戦を繰り広げてきた馬屋原さん。

 現在、秋の特別展が開催中で、いつものように受付横で警備しながら、職員に対してこうつぶやいたそうです。

 「今でも、ケンちゃんがあの角からやって来るように思うんよぉ」

 そして、職員を通じて、ケンちゃんへのコメントを寄せてくださいました。

 「犬を飼っていますが、こんなに懐いてくれた猫はケンちゃんが初めてでした。たくさんの思い出を『ありがとう』と伝えたいです」

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