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「まだ大丈夫」避難の機会を逃した 水没の地下駐車場、間一髪の脱出

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三重県四日市市が記録的な大雨に見舞われた9月12日夜。地下駐車場に、大量の水が流れ込み、地下2階が水没して地下1階も浸水しました。記者が覚知したのは、SNSで拡散された、滝のように階段に水が流れ落ちる映像でした。現地に向かってみると……。(朝日新聞記者・兼田徳幸)
記者にとって「出遅れ」はほめられた話ではありません。9月12日夜はまさしくそんな日になってしまいました。
三重県北部で短時間に大雨が降っていると同僚のメールで気づいたのは午後11時ごろ。いったんは様子見することにしたが、やがてSNSで拡散され始めた映像を目にして血の気が引きました。
動画では、雨水が滝のように階段を流れ落ちていて、四日市市の地下駐車場のようでした。車で1時間の津市から駆けつけました。
停電で暗闇の中、スマホの明かりを頼りに降りましたが、地下1階入り口の手前でひざ上まで浸水しており、先に進むのを断念しました。最低限の取材をして現場を後にしました。
一夜明けると、新たな動画がSNSで出回り始めました。水没直前にぎりぎり脱出したとする人が投稿した、ドライブレコーダーの映像です。緊迫の瞬間が記録されていました。
映像だけでも十分雄弁でしたが、どのように脱出に至ったのか詳しく知りたい――。投稿主の男性に連絡を取り、記事にしました。
男性は近くのビルの地下にある飲食店で過ごしていましたが、浸水し始めても「まだ大丈夫だ」という意識が働き、避難のタイミングを逸したといいます。「本来ならもっと早くすべきだった」と話しました。
メディアが自らその場に立ち会わなくても、市民が目撃し記録した出来事を立体的に捉え直すことで、社会全体の学びにつなげる――。SNS時代のメディアの役割を再認識した取材でした。
もっとも、駐車場の浸水防止設備がきちんと機能していれば脱出も不要だったはずです。
実際、車用出入り口の防水扉が故障したまま放置されていたことが発覚しましたが、それはまた取材中です。