ネットの話題
「政治的活動、はがすように」高校時代の経験…20歳が見た総裁選は
褒め合う自民党の候補者たちに「内輪感がすごいですね…」
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褒め合う自民党の候補者たちに「内輪感がすごいですね…」
「次の総理大臣候補」が今月27日に決まる自民党の総裁選挙。その後には国のかじを取る政権が決まる衆議院選挙も見据えられています。「私の周りでは社会課題に関心がある同世代は多いですが、総裁選や衆院選に注目している人はほとんどいないですね」。記者(33)が、ある20歳の学生と総裁選の討論会を一緒に見に行くと、そう教えてくれました。夫婦別姓や憲法改正など身近な課題と、政治は切り離せないはずなのに、なぜなのでしょう。(朝日新聞記者・小川尭洋)
学生は、慶応大学総合政策学部の白坂里彩(りさ)さん。高校3年の夏、参議院選挙についての手書きの啓発ポスターを校内にはり出したところ、教員から「政治的活動だから、はがすように」と言われた経験を持っています。
このポスターはA4のコピー用紙6枚で、特定の候補者には触れず、投票方法などを説明した上で「国政について調べてみよう」と呼びかけたものです。
以前から若者の政治参加に興味があった白坂さん。政治について積極的に語りたがらない同世代の空気に問題意識を持ち、18歳になって選挙権を得た同級生たちに投票に行ってほしいとの願いから作成したといいます。
最終的に、高校側からは「ポスター掲示は政治的活動ではなかった」と謝罪され、掲示を認められました。
そんな白坂さんは、総裁選をどんな風に見つめているのでしょうか。
ーー東京都千代田区にある日本記者クラブのラウンジに来ました。階上の会見室では、総裁選候補の9人の候補者が討論会に参加しています。中継映像を見始めましたが、どんな感想ですか?
「討論と聞いていて、アメリカ大統領選とまではいかなくても、意見をぶつけ合うイメージを持っていましたが、意外とそうでもないんですね。これって本当に討論会なの?と思っちゃいました」
ーー同じ党内ということもあると思いますが、たしかに討論会とは思えない、和やかな雰囲気ですね
「同じような意見を言い合ったり、褒め合ったりしていて、内輪感がすごいですね…。夫婦別姓については候補者の間で賛否が分かれていますが、その議論を掘り下げてくれていないので、どの候補者の主張に納得感があるのか判断すらできない状態です」
ーー後半は、代表の記者から質疑がありましたが、最後は時間制限の関係で、「憲法改正」はとばされて「衆議院解散の時期」に関する質問が優先されました
「憲法改正は生活に関わるテーマとして関心を持っていたので、残念でした。聞いてほしかったです。記者の方々にとっても、政策より政局が優先テーマなのでしょうか。自民党政権にとっても、最も力を入れてきたことのひとつ。せっかくの総裁選なら、いかに世論の関心を集めて議論を巻き起こすかが大事だと思うのですが」
ーーポスター掲示の騒動から2年が経ち、白坂さんは若者の政治参加についてSNSなどで発信を続けていますが、同世代の政治への無関心はあまり変わっていないと受け止めているそうですね。総裁選にかぎらず、政治に関心がない人が多いのはなぜなのでしょうか?
「裏金問題などで政治不信が加速していることもありますが、そもそも政治に期待していないと思います。たとえば、何かお金に困っていても、政治がすぐ解決してくれるわけではないので、隙間時間でバイトをした方が早いなど、現実的に解決しようとしてしまうんです。その上、政治の話題を避けがちな空気も強いままです」
ーー私も、個人としても政治の問題を話題にすることがありますが、同世代や後輩の中にはちょっと冷めた態度で受け流す人も多い気がします
「高校や大学で政治や社会課題について話すと、『偏った人』のように見られることが多い。しかも、学校では模範解答や校則といった用意されたレールに従うのが優等生とされていて、既存の体制を批判的に見て改善方法を考える教育がされていません」
ーー大人側の「レール」が用意されていると、自発的に考える機会は少なくなりますよね
「レールからはみ出すと、『問題児』扱いされてしまうので、頭の良い生徒ほど、従った方が楽だと考えるようになります。学校教育からの流れがそのまま引き継がれていると思います。いちいち政治家の問題点に反応して批判していたら、生産性がないという考えから、政治に積極的な関心を持とうとしない人がたくさんいますね。政治家の矛盾などに気がついている同級生は多いんですが……」
ーーどうしたら政治との距離を縮められると思いますか?
「まずは、身の回りの小さな違和感を口に出してもいいと思います。それが政治とつながっていることに気づけば、少しずつ政治への関心度も変わってくるのかもしれません」
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