“激辛ポテチ”を食べた複数の高校生が体調不良を訴え、一部が救急搬送されたことがニュースになりました。激辛とうたわれる菓子類には、トウガラシの辛味成分である「カプサイシン」が含まれている場合があり、これは大量に摂取すると健康を害するおそれがあります。摂取量の目安とあわせて説明します。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
16日、東京都内の高校で生徒が体調不良を訴えていると通報がありました。東京消防庁や警視庁によると、生徒ら30人以上がこの直前に激辛のポテトチップスを食べていたといい、一部が救急搬送されました。
激辛とうたわれる菓子類には、トウガラシの辛味成分である「カプサイシン」が含まれている場合があり、これは大量に摂取すると健康を害するおそれがあります。
農林水産省によれば、カプサイシンの一部が、全身に分布する感覚神経の受容体に結合することで、灼熱感(焼けつく痛み)を引き起こします。
カプサイシンを経口摂取すると引き起こされる舌の上の灼熱感も同様です。これをヒトは「辛み」として認識しますが、その刺激は口腔内だけに生じるわけではありません。影響は気管支や消化管全体に及びます。
このとき、気管支が強く刺激されると、気管支収縮により息切れしたりせきが出たりします。また、肛門側の直腸には受容体が多く、カプサイシンにより刺激されると強い灼熱感を感じます。
カプサイシンを摂取すると、感覚神経を介して胃酸の分泌が抑制され、大量にとると胃粘膜の保護作用がなくなるとの報告もあります。胃食道逆流症の原因となるほか、子どもや感受性の強い人では、粘膜炎症や吐き気、嘔吐、高血圧などの症状が報告されています。
また、カプサイシンが眼、鼻の粘膜や皮膚に触れると局所的な刺激作用により、涙が出たり、鼻水が出たり、痛みが生じたりします。
一方で、消化管から吸収され血中に入ると、感覚神経から中枢神経系を介して、副腎からのアドレナリン分泌を促進します。アドレナリンは、脂肪代謝などエネルギー代謝を促進したり、発汗を促したりします。
このようなカプサイシンの刺激が繰り返されると、感覚神経が麻痺して、辛みと痛みを感じにくくなります。
農林水産省が紹介するドイツ連邦リスク評価研究所の基準では、伝統的な食事における大人の1回の食事あたりの総カプサイシンの摂取量を最大5mg/kg体重(60kgの成人におけるカプサイシン300mg摂取に相当)とし、胃の細胞の剥離についての経口摂取での無毒性量(NOAEL)を8.3mg/kg体重と評価しました。
研究所は100mg/kg(通常のタバスコソース程度)を超えるカプサイシンが含まれる食品に「辛さを示す注意表示をすること」「少量ずつ提供できる容器を使用すること」、6000mg/kg(通常のチリパウダーの2~6倍程度)を超えると「規制担当機関が安全な食品かどうかを個別に検討すること」を推奨しています。
近年はより強い辛みを求める消費者に向けた食品や、輸入食品も入手できるようになっており、海外では子どもたちの間で激辛のトルティーヤ・チップスを食べた様子をソーシャルメディアに投稿する「ワン・チップ・チャレンジ」が流行するなど、注意が必要です。