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繰り返される〝外食の水に漂白剤〟何ができる? 中毒対策のポイント

出された水にもし、漂白剤が入っていたら……。※画像はイメージ
出された水にもし、漂白剤が入っていたら……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

飲食店で漂白剤の入った水が提供され、客が喉に軽傷を負ったことがニュースになりました。同様の出来事は過去にも起きています。誤って中毒を起こす物質を食べたり飲んだりしてしまったとき、どのように対応をするべきでしょうか。専門家を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
 
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また“外食の水に漂白剤”

7月初旬、ドレッシングなどで有名な食品メーカーの株式会社ピエトロが運営するレストランチェーンの福岡市内の店舗で、漂白剤の希釈水を誤って客に提供、水を飲んだ客のうち、2人が病院に搬送され、1人がのどに軽傷を負ったことがニュースになりました。

同社の発表によれば<希釈水を摂取された方4名を発生直後に特定し、ご体調の確認や必要に応じて医師の診察を受けていただくなどの対応を進めました。><また、直ちに保健所に報告のうえ、指導内容に基づき再発防止策を策定し、全店で実施しております。>ということです。

飲食店が客に漂白剤の入った水を提供し、発覚後に営業停止などの処分になったケースは、昨年8月にも東京の百貨店内の天ぷら店でも発生しています。

中毒の原因になるような物質を摂取してしまったとき、どのように対応をするべきでしょうか。

主に家庭などで事故が起きた場合、公益財団法人日本中毒情報センターは、公式サイトの「中毒事故が起こったら(家庭でできること、やってはいけないこと)」で、「まず、何を飲んだのか、何を吸ったのか、中毒の原因物質を確認」するべきとしています。

これは、医療機関を受診する場合や同センターの運営する「中毒110番」(※)に相談する場合にも、必要な情報です。

※一般(非医療関係者)専用、電話で365日24時間対応。利用料は無料。化学物質や動植物の毒などによって起こる急性中毒について、実際に事故が発生している場合に限り情報提供。大阪中毒110番:072-727-2499、つくば中毒110番:029-852-9999

中毒事故が発生するところを見ていなかった場合、「散らかっている空き瓶や空き箱など周囲の状況から原因物質を特定しなければならないこともあります」「残っている量から飲んだ量を推定することも重要なポイントです」。

意識があり、呼吸も脈拍も異常がない場合に、応急処置を行います。もし意識がない、けいれんを起こしているなど、重篤な症状がある場合は「直ちに救急車を呼びます」と呼びかけています。
 

吐かせてはいけないものも

食べたり、飲んだりした場合の応急処置は、摂取した物質によってその方法が異なります。同センターは「中毒110番にご相談ください」とした上で、次のように説明しています。

まず「慌てずに、口の中に残っているものがあれば取り除き、口をすすいで、うがいをします」「難しい場合は濡れガーゼで拭き取ります」。

なお、「家庭で吐かせることは勧められていません」と注意喚起しています。「吐物が気管に入ってしまうことがあり危険」だからです。「特に吐かせることで症状が悪化する危険性のあるものの場合は絶対に吐かせてはいけません」とします。

吐かせることで症状が悪化する危険性のあるものとは、「石油製品(灯油、マニキュア、除光液、液体の殺虫剤など)」「容器に『酸性』または『アルカリ性』と書かれている製品(漂白剤、トイレ用洗浄剤、換気扇用洗浄剤など)」「防虫剤の樟脳(しょうのう)、なめくじ駆除剤など」が挙げられています。

石油製品はもし気管に入れば肺炎を起こし、酸・アルカリは食道から胃にかけての損傷をよりひどくしてしまうことがあり、防虫剤等はけいれんを起こす可能性がある、ということです。
 

何も飲ませてはいけない場合

「刺激性があったり、炎症を起こしたりする危険性があるものの場合は、牛乳または水を飲ませます」と同センター。これは「誤飲したものを薄めて、粘膜への刺激を和らげる」ため。

「飲ませる量が多いと吐いてしまうので、無理なく飲める量にとどめます(多くても小児では120mL、成人では240mLを超えない)」

同センターが牛乳または水を飲ませた方がいいものの例として挙げるのは、「容器に『酸性』または『アルカリ性』と書かれている製品(漂白剤、トイレ用洗浄剤、換気扇用洗浄剤など)」や「界面活性剤を含んでいる製品(洗濯用洗剤、台所用洗剤、シャンプー、石けんなど)」「石灰乾燥剤、除湿剤など」。

その他のものの場合は「飲ませることで症状を悪化させる恐れがあるものもありますので、何も飲ませないようにします」。

牛乳や水を飲ませることで症状を悪化させる恐れがあるものの例は、「石油製品(灯油、マニキュア、除光液、液体の殺虫剤など)」。「吐きやすくなり、吐いたものが気管に入ると肺炎を起こす」「牛乳に含まれる脂肪に溶けて、体内に吸収されやすくなる」ため。

「たばこ、たばこの吸殻」も「たばこ葉からニコチンが水分に溶け出し、体内に吸収されやすくなる」ためNG。

「防虫剤(パラジクロルベンゼン、ナフタリン、樟脳(しょうのう))」も「牛乳に含まれる脂肪に溶けて、体内に吸収されやすくなる」ため牛乳はNG。水はどちらでもないということでした。
 

外食時にできることはある?

では、外食など家庭の外で、このような異変を感じた場合、どう対応すればいいのでしょうか。中毒を専門にする、国際医療福祉大学成田病院救急科講師で医師の千葉拓世さんを取材しました。

千葉さんは、家庭のように原因を検索することが難しいシーンで起きた以上、「あまりできることはないというのが正直なところ」だとします。

「『おかしい』と思ったらそれ以上は食べたり飲んだりしない、口をすすぐ、無理に吐こうとするなどしない、ぐらいかと思います。中毒情報センターの情報発信からもわかるように、原因物質によって対応は異なりますし、何が原因かわからない場合には対応は難しいです。症状があれば病院を受診するようにしてください」

家庭の中で中毒を防ぐための対策としては「何が毒になるのかを認識する」「危険なものは子供の手の届かない鍵のかかる棚にしまう」「もともとの容器にしまう(農薬を飲料用ペットボトルに入れたりしない)」「食べ物と食べ物でないものを同じ棚に片づけない」「子どもの前で薬を飲むことを避ける」ことを紹介します。

また、中毒センターについて、その存在や電話番号を知っておくことも大事だとしました。

ちなみに、牛乳については飲ませるとかえって状態を悪化させる原因物質もあるため、千葉さんとしては「あまり積極的に勧めるものではない」とのこと。

原因も、対策もさまざまであるため、あらかじめ相談先などの知識を身につけておくことが、一番の予防になりそうです。
 

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