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トイレの表示に「声を大にして言いたい」こと 市役所の配慮に反響
設置理由、市にも聞きました。
「これ声を大にして言いたいんですが、水戸市役所の多目的トイレ入口には『右まひ用』『左まひ用』の説明がついてます」
障害のある人でも使いやすいトイレの、位置を知らせる案内板。その写真が、こんな文言とともに投稿されました。反響を集めた内容について、投稿者と水戸市に話を聞きました。
Xで3万件以上の「いいね」を集めたのは、「坂大樹@片麻痺YouTuber社長」のこんな投稿でした。
《これ声を大にして言いたいんですが、水戸市役所の多目的トイレ入口には「右まひ用」「左まひ用」の説明がついてます。
全フロア左右麻痺に対応してるのが最善ではあるのだろうけど、スペースの関係で難しい場合、こういう配慮をしてくれるのは非常に助かる》
これ声を大にして言いたいんですが、水戸市役所の多目的トイレ入口には「右麻痺用」「左麻痺用」の説明がついてます。
— 坂 大樹@片麻痺YouTuber社長 (@hirohiroslope) June 24, 2024
全フロア左右麻痺に対応してるのが最善ではあるのだろうけど、スペースの関係で難しい場合、こういう配慮をしてくれるのは非常に助かる🚽 pic.twitter.com/MXOzdYqC9F
投稿には、トイレが対応している利用目的を階ごとに示している案内板の写真が添えられています。
赤ちゃんのおむつ替えベッドや、オストメイト対応、介助用のベッドなど、それぞれの有無がマークで示されています。
中でも車いすのマーク下に注目すると、「左まひ」「右まひ」の文字。
「たしかにまひがどちらかでデザインも変わってきますね」「日本中に広まってほしい」と多くのコメントが付きました。
同様の内容を投稿したインスタグラムのストーリー(24時間で消える投稿)には、100件ほどの反応があったといいます。
この投稿をした坂大樹さんと、妻の坂亜紀子さんに話を聞きました。
掲示を見つけたのは亜紀子さんだったといいます。
家族で水戸市役所に出かけたときのこと。庁舎内2階のレストランを利用した際、子どもを連れて立ち寄ったトイレ近くで見かけたそうです。
「これまで右まひ用と左まひ用の表記があるものは見たことがなかった」(亜紀子さん)と、思わず写真を撮ったといいます。トイレから戻り、5年前の脳出血が原因で左まひがある大樹さんに写真を見せると、大樹さんも「初めて見た」と驚き、Xでも投稿したのだといいます。
左にまひのある大樹さんによると、「まひが左にある場合、トイレットペーパーやボタンは、まひのない右側にある方が便利です」と、まひがどちらにあるかによって、トイレのボタン配置など使いやすいデザインが変わるといいます。
中でも、手すりは重要だそうで、まひのない側にあると、立ったり座ったりするときの動作がとりやすいそう。
大樹さんはまひはあるものの、車いすは使っていないため、今回のようなトイレの案内板にはそこまで注意を払ったことはありませんでした。
水戸市役所によると、このトイレの案内は、7階建ての庁舎の中でも、障害のある人も多く訪れる福祉部門の課がある1階と2階に設置しているそう。
2018年に建て替えられた庁舎は、全てのフロアに車いすユーザーや赤ちゃん連れ、オストメイトでも使いやすい「誰でもトイレ」が設置されています。一方で、ユニバーサルデザインの専門家からは建て替え時、「全ての機能を一つのトイレに集約するのではなく、分散させた方がよい」というアドバイスを受けたといいます。
そのため、左まひと右まひ、それぞれに対応するトイレを設置したり、誰でも使えるけれども「車いす優先」とするトイレを設けるなど、機能分散を図りました。
そして、案内板もそれに準じた伝え方になったとのことです。
大樹さんのリハビリに付き添い、いまも大樹さんと共に脳出血の当事者や介助者視点での情報発信を続けている亜紀子さんは、今回の投稿への反応を見ていて「配慮の気持ちがうれしい」という当事者の声を見かけたことが印象に残ったといいます。
「そもそも多目的トイレの設置箇所が少ない上、やっと見つけたトイレが自分のまひに対応していないとわかったときに、『考えられていないな』と残念な気持ちになるんだろうと思います」
今回の反響について大樹さんは「そもそも、『片まひ』というものがあるのを初めて知ったと言う方もいました。ちょっとした気付きでも発信し、その結果、障害のある人の生活が少しでもよくなればいいなと思います」と話します。
大樹さんと亜紀子さんは、「世界はサカサマ!」というYouTubeチャンネルを運営しています。このチャンネルは2019年に大樹さんが脳出血を発症してから、リハビリの様子や、後遺症の困り事などについて発信をしています。動画の編集は、脳出血発症前から映像制作を本業としている大樹さんが担っています。
動画は当初、「記録」のために撮影していたといいます。「毎日リハビリに付き添っていたので、その様子を動画に撮って後で見返すということをやっていたんです」と亜紀子さん。
その動画はインスタグラムで投稿し、ブログでも自分自身の悩みなどを発信していましたが、途中から発信の場所をYouTubeへと移しました。
「当時、子どもは4歳と1歳。夫も私も働き盛りでしたが、同じ状況の人が周りにほとんどいませんでした。『このまま寝たきりだったらどうしよう』と悩んだり、ずっと孤独だった」という亜紀子さん。しかし、自分から発信し始めてからは、状況が近い人たちとのつながりが増えていき、視聴者の反応に「元気をもらっていました」と振り返ります。
大樹さんも動画発信には前向きでした。
150日ほどの入院期間を経て、退院する直前に撮影した歩行動画の反応がとてもよかったといい、「私もそうだった」などのコメントも多く付いたといいます。
「それまでは『記録』の意味が強かった投稿でしたが、『発信していくのって大事だな』と思うきっかけになりました」
現在チャンネル登録者は1万3千人超。リハビリの成果が見られる「歩行動画」が人気だそう。
亜紀子さんは「発症する前、啓発は耳にしたことがあったけど、自分事にはなりませんでした。いざなってしまうと、『その後の生活』が見えてこない。啓発はするけど、病気になった後にどうするか、という具体的な情報発信は十分でないと感じました」と話します。
そのため、チャンネルでは「『病気になってしまった人』が絶望して終わりではなくて、なっても楽しめる、生きていけるというところを発信していきたい」といいます。
大樹さんは、今回話題になったトイレの表示にまつわる投稿を念頭に置きながら、「ストレートに困り事を発信する方法もありますが、今回のように『いいな』と思ったことの発信も積極的にしていきたい」と話しています。
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