ネットの話題
飼育動物に襲われた? いいえ、カワウソ知ってもらうシャツ展示です
飼育員に聞きました
サンシャイン水族館(東京・池袋)に展示されている「コツメカワウソにビリビリに破かれたシャツ」が先日、SNS上で話題になりました。「お客様を『かわいいの一歩先』へお連れすることができたらと考えています」と話す飼育員に聞きました。
サンシャイン水族館の「カワウソたちの水辺」水槽前に設置されているボロボロのシャツ。
「コツメカワウソにビリビリに破かれたシャツ(本物)」と書かれた案内板があり、こんな解説が添えられています。
「コツメカワウソに身体を拭くために古くなかったシャツや毛布などを与えていますが、それらにかみつき、ボロボロにしてしまうことがあります。コツメカワウソには、しぐさや見た目とは違う、能力や習性があるのです」
先日、SNSでこのシャツが紹介されると「インパクトのある展示」「こうして現実を見てもらうのは大切なこと」といったコメントが寄せられ、注目を集めました。
「スタッフが襲われたと勘違いされてしまうことがあります。そういうことではないのでご安心ください」
そう話すのは、カワウソ担当の飼育スタッフ・芦刈治将さんです。
シャツは飼育スタッフが着ていた古くなったユニフォームで、カワウソが濡れた体をこすりつけて拭くための布として与えたものだといいます。
カワウソは巣の材料となるものを集める際に、引っ張ったり振り回したりする様子がよく見られるとのこと。
何かをかむ、振り回すといった行動を、飼育下でも発現できるようにと考えて与えたそうです。
「カワウソを飼育展示していて感じることは、魅力や知られざる能力の一部しかお伝えできていない、ということです」と芦刈さん。
コツメカワウソの容姿や動きの「かわいさ」がきっかけで、好きになる人もいます。
しかし、「かわいい」という表現で片付けられてしまうことで、魅力や能力などが隠されてしまっているのではないか。
そんな思いから、ビリビリのユニフォームを展示することで、違う一面も知ってもらおうと考えたそうです。
「飼育や展示を通じてカワウソの見えていない部分を見つけたり、飼育下でしか得られない情報を見つけたりすることで、お客様を『かわいいの一歩先』へお連れすることができたらと考えています」
5月の最終水曜日「世界カワウソの日」に関連して、カワウソの生態や生息地の環境問題、水族館での飼育についての解説パネルを設置。
カワウソのニオイを体感できる箱や、毛が軽くてふわふわしていることが分かるような装置、個体の体重とほぼ同じ重さのぬいぐるみなども用意しました。
シャツの展示が話題になったことについては、こう話します。
「自己満足にならず、こちらの思いや意図が伝わることが大事だと思っています。そういう意味ではインパクトや違った側面があることが伝わったのであれば、うれしく思います。これからも『ココロを動かす、発見』を展示していきたいと思います」
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現在、コツメカワウソが子育てのため、見えづらい位置にいることが多いといいます。成長とともに見えるようになる見込みで、「1~2カ月程度は個体の展示は通常とは異なることを、ご理解いただければ幸いです」とのことでした。
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