連載
#1 U30のキャリア
大手企業を1年で退社、次の目標は自身のメディア拡大 24歳の野望
会社員生活「めちゃくちゃよかった」
「入社して1年。自分のやりたいことだけはやり切って死にたいと思ったのでこの決断を下しました」――。新卒1年で大手企業を退社する選択をした24歳に、キャリアについての考えを聞きました。
2020年になり、新型コロナが流行し出すと、当時滞在していたマレーシアから帰国。その年の春に大学2年生として復学しました。
その頃はコロナが落ち着いたらまた海外を回ろうと思っていたため、自身で立ち上げた「エスニックマガジン」の運営や、アルバイトに明け暮れ、就活は意識せず、大学生活を送っていました。
ただ、なかなかコロナの収束が見えない中で、先が見通せないことに不安を感じ始めます。「コロナに人生振り回されるのか、と落ち込むくらいなら、一度、新卒就活というものを体験してみよう」と前向きに就活に挑むことを決めました。
ケージ-さんが就活を始めたのは2022年1月。周囲には前年のサマーインターンなどにも参加し、すでにほぼ内定が決まっているような友人もいました。
ケージ-さんがまず始めたのが、面接対策。
自己分析や業界研究から始めて、面接対策に移る人もいますが、ケージ-さんは友人に手伝ってもらいながら面接練習を重ね、並行して自己分析も進めていたといいます。
「自分の考えや思考の癖は、対話をしながら見えてくることだと思っていたので、この方法は自分に合っていました」と、面接は練習だけでなく、スカウト型の求人サイト「オファーボックス」などに届いた関心業界でどんどん実践を重ねたといいます。
「旅をしている間、内省する時間が他の人よりもあったのかもしれません。すらすらと語れる言葉に自分の関心があると考えながら進めました」
自分なりの「勝ち筋」を見つけたケージ-さんは、最終的に5社ほどから内定をもらいました。いずれの企業も、自身の軸と合致していましたが、「働く熱量の高い人がいるところ」「早く成長できるところ」「副業ができるところ」の三つを満たす企業に就職を決めました。
インターンの経験など、他の就活生から「出遅れ」ていたことについては、「休学し、すでにレーンを外れていたからこそ、他の人と自分を比較しにくい特殊なフェーズだったので気楽にできたのだと思います」。
1年間の会社員生活を「めちゃくちゃよかったです」と振り返ります。
中でも「相手に対して先入観持たずに、自分の五感で判断しろ」という先輩の教えが心に刺さっているそう。
「学生時代からSNSマーケティングで収入を得ることはありましたが、ある意味『見えない相手』とのやりとりでした。対人スキルが上がり、いい意味で矯正された感じです」
得るものも大きかったはずの会社員生活を、わずか1年で離脱することを決めたケージ-さん。
「これから給与も上がっていくはずだし、会社を辞めるのにはまだ早いのかなと思ったりした」と本音を語ります。それでも独立を決めたのは「タイミング」でした。
副業として続けていた自身のサイト運営や動画編集の仕事に賛同してくれる仲間が出できたり、収入確保の見込みが立ち始めたり――。「いまここで決断すれば、人生を振り返ったときに『あのとき決断してよかった』と思えると感じました。不安よりもワクワクの方が強い、いまの気持ちで判断しました」
「転職ポジティブ」ともされる同世代のキャリア観についての考えを聞くと、「入社数年で転職する友人も多くいる」とした上で「柔軟性があるんじゃないかと思います」と話します。
「SNSなど、情報がたくさんある現代は、一昔前の人たちと比べていろいろな人たちの働き方がインプットできていて、選択肢をたくさん持っている」
「コロナ禍で『やりたいことができなかった』という後悔感もあり、その後悔感が転じて、できないことにしがみつかず『違ったら次』と柔軟に対応できるマインドにつながっているようにも思います」
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連載「U30のキャリア」
コロナ禍を経験、オンラインコミュニケーションが増加、混迷を深める社会情勢――。
そんな令和の時代を生きる20代以下のみなさんは、人生をどう選択し、キャリアをどう考えているのでしょうか。
経験談やデータを元に、多様な側面から見つめます。
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