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#29 #就活しんどかったけど…

ハンコにフル出社…「いまだにこの働き方?」転職ありきで考えた就活

連載「就活しんどかったけど…」

転職も視野に入れて就活をしたという女性は「若い世代は企業に対する目が厳しくなっている」と指摘します
転職も視野に入れて就活をしたという女性は「若い世代は企業に対する目が厳しくなっている」と指摘します 出典: Getty Images ※画像はイメージです

さまざまな書類に押さなければならないハンコ、コロナ禍でもフル出社だった働き方――。新卒で就職して4年半で転職したという女性(27)は、「もともといつかは転職するつもりで就活していた」と話します。転職を踏まえて就活する学生は多く、「企業に対する目が厳しくなっている」と指摘します。(withnews編集部・水野梓)

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就活しんどかったけど…

「合わない企業」の理由は

2019年に中国地方の大学を卒業した女性は、「専門が人文科学で、研究職以外のどんな仕事に繋がるのか、そもそもどんな職種や業種があるのか、全く知識がなかった」と振り返ります。

学芸員の職は門戸が狭かったため、「まずは経済的に自立したい」と一般企業への就活を始めました。

人文科学にまつわる民間企業もリサーチしましたが、当初興味のあった企業はそもそも新卒採用をしていませんでした。

「自分は何が好きだったっけ」と過去を思い返し、幼い頃に好きだったラッピングに関連する業界で企業を探し始め、勤務地は東京を優先してリサーチしました。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

とはいえ、視野を広げた方がいいだろうと「『自分には絶対向いていない』と思っていた業界の企業説明会にも参加していました」と話します。

「やはり違うな」と感じたこともありましたが、説明会や選考の後には「何が自分にとって違うと感じたのか」という点を書き出しました。

「興味のないところでも、実際に説明を聞いてみると偏見を持っていたなと感じることもありましたし、やっぱり自分には合わないと分かることもありました」と語ります。

企業への目がシビアな若い世代

地元の金融機関の企業説明会では「こんなことを言う人が、まだいるんだ」と衝撃を受けたそうです。

最後のあいさつに現れた頭取が、「女性職員の結婚」にまつわるエピソードを話し始めたのです。

「『うちには、お客様からも部下からも信頼が厚く、成績もよかった優秀な女性銀行員がいたんだけれど、定年まで結婚もせずに仕事に没頭していた』と語り始めました。『退職する時にはみんなが拍手で送り出し、本人も笑顔だったけれど、会社から出ていくその背中は寂しそうだった』と言ったんです」

出典: Getty Images ※画像はイメージです

あまりのことに、「なんだこいつ?」と腹が立ったという女性。

「『これから入行する可能性のある学生に向けて、こんな話を平気でするトップの元では無理だな』って感じましたし、これを止められる人がおらず、違和感なく受け入れる人たちの組織なんだと思うと『やっぱり東京に出よう、きっと東京なら多少マシだろう』という思いも強くなりました」と語気を強めます。

「私もそうでしたが、今の学生は、数年で転職することを踏まえて就活している人が多いと思います。だからこそ、企業に関する目がどんどんシビアになっていると思うんです」

4年半で転職を決めたきっかけ

最初に内定が出た東京都内の専門商社に決めて、就活を終えたという女性。しかし入社してみると、旧態依然とした働き方だったといいます。

さまざまな書類にハンコが必要で、コロナ禍でもフル出社でした。対面で朝礼をやりたい幹部向けに、紙の資料を印刷準備するため、早朝から出勤していました。

仲のいい同期や仕事のできる先輩には恵まれていましたが、次々と転職してしまい、自身も4年半で転職を決意しました。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

もともと「転職ありき」の就活でしたが、株主総会での経営層の発言が特に決め手になったそうです。

「女性管理職の比率の低さについて指摘されると、『我が社は男女関係なく、実力がある人を昇進させています』と言い切ったんです」

「そもそも圧倒的に男性が多く、若い女性が辞めてしまう職場環境といった構造的な問題を踏まえず、いま何が問題視されていて、どうして是正が必要なのか、令和になって何年も経った今でも何も見えていないし、今後分かるつもりもないんだな、と思ってしまって…」と振り返る女性。

「いやな思いをしながら居続けるべき場所ではないですし、仕事内容は好きでしたが、ここにいても成長は無いと思い、踏ん切りがついた、という感じでした」

「フラットな会社かどうか」

転職では、エージェントを通して次の仕事を探したといいます。

「古い考え方が残っていそうな会社は除いて、上場企業の場合は必ずコーポレートガバナンスを見て社員の男女比率や管理職比率もチェックしました。なるべくフラットで、SDGsやESG(環境・社会・ガバナンス)投資に関しても、頓珍漢なことを言っていないか、ネットで検索して読める経営層のインタビュー記事もひと通りチェックしました」

たとえば、企業ホームページや会社案内パンフレットに、「女性の活躍」とうたいながら男性の社員がずらりと並んだ写真を載せていないか、「女性ならではの感性」などと書いてしまっていないか――。

「ほかにも、面接のなかで社員が何人も登場する割には男性しか出てこない会社は、『従業員の男女比率に対して権限が偏っているのかな』『転職しても前と同じような風土だったら意味が無いな』と思って辞退しました」と話します。

出典: Getty Images ※画像はイメージです

スタートアップ転職「何もかも変わった」

女性は「〝男性用〟〝女性用〟の働き方が用意されているんじゃなくて、性別を問わずその人の事情にあわせた働き方ができる会社か、社員がちゃんと一人の人間として扱われている会社かどうか、という部分を重視して転職活動をしていました」と話します。

「『人材』を『人財』って書くところも避けましたね。『従業員は企業のために存在する』という考え方なのかなと警戒してしまって。前職の上司は頑なに〝財〟と書いていたので、私向けの会社じゃないな、って感じました」

2024年に入って、スタートアップ企業で働き始めたという女性。転職したいま、「何もかもが変わった」といいます。

「コロナ禍でリモートワークを導入した人は多いと思いますが、私は3年遅れて『在宅仕事が続くと腰が痛いな~』って思っています」と笑います。

「いまは転職もできるので、あまり思い詰めずに気楽に、強気で就活してほしい」と就活生にエールを送っていました。

<体験談お寄せください> 新企画「就活しんどかったけど……」では、コロナ禍で変化もあった就活の「いま」を見つめ直し、よりよいあり方を探っていきます。

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