連載
#4 はたらく年末年始
神職に聞く アニメ「らき☆すた」の聖地、埼玉・鷲宮神社の年末年始
「気づけば1月が過ぎ去っていく」
新しい年が始まりました。お正月、神社や寺院へ初詣に出かける人も多いのではないでしょうか? 大みそかから元旦にかけて参拝する「二年参り」をした人もいるかもしれません。参拝者を〝迎える側〟は、どのような思いでいるのか。アニメの聖地としても人気の、鷲宮神社(埼玉県久喜市)を取材しました。
埼玉県の東部に位置する鷲宮(わしのみや)神社。「関東最古の大社」といわれ、2007年放送のアニメ「らき☆すた」の聖地としても知られています。
神社への初詣客数は、アニメ放送前の9万人から一時47万人にまで増えました。
現在でもコスプレをしたファンが参拝に訪れたり、アニメのキャラが描かれた絵馬がかけられたりしているそうです。
2018年には参道の大鳥居が老朽化によって倒壊しましたが、2021年に再建されました。地域のシンボルが復活し、多くの参拝者に喜ばれたといいます。
1年で最も参拝客の増えるお正月。権禰宜(ごんねぎ)の檜森恭司(ひもり・たかし)さん(26)は、「みなさんが気持ちよく新年を迎えられるように、滞りなく準備するのが私たちの役目です」と話します。
鷲宮神社では、初詣の参拝が落ち着いた2月頃から翌年のお正月へ向けての準備が少しずつ始まります。
その年を振り返って改善点を話し合ったり、地元警察に交通規制や警備・誘導を相談したり。
稲刈りが終わる秋には地元の農家からわらをもらい、しめ縄の準備に取りかかるそうです。
12月になると、境内には破魔矢やお守りをわたす「授与所」や、ご祈禱(きとう)の控え所となるテントなどを設置。徐々にお正月へ向けた様相となります。
年末年始、神社では宮司や禰宜、権禰宜など神職のほか、高校生らアルバイトを含めおよそ100人が交代で奉仕するそうです。
檜森さんが鷲宮神社で奉仕するようになったのは、コロナ禍前の2019年。地元だったこともあり、それ以前の高校時代から掃除などを手伝っていました。
「お手伝いをして初めて、参拝者から見えないところでたくさんの人が準備に関わっていることを知りました。当時から、お参りされた方が気持ちよくお祈りできるように掃除することを心がけていた」と振り返ります。
何万人という老若男女が集まるため、安全面も怠りません。
参拝者がつまずかないように参道の石と石の間に砂を敷いたり、木々の多い境内で古木が倒れないように業者に点検を依頼したり、細かい配慮を重ねているそうです。
神社は、大みそかから大勢の人でにぎわいます。
コロナ禍で人々が分散参拝をするようになったものの、夜の11時30分ごろには参拝者の列が鳥居の外まで続くそうです。
元旦は午前3~4時頃までは列がある状態で、一時少なくなってくるものの、再び午前8時頃から人が増え始め、お昼過ぎが最も多いといいます。
慌ただしく長丁場でもある初詣期間を、神職は交代で休息を取って奉仕に当たります。
「日々の奉仕で、気づけば1月が過ぎ去っていくなぁというのがお正月です」と檜森さんはいいます。
コロナ禍で参拝客が少なくなりましたが、行動制限が解かれ徐々に人手が戻っている実感はあるそうです。
「気持ちを新たに多くの方がお参りされるお正月。神様と人との『なかとりもち』といわれる神職として日々奉仕し、みなさんの祈りの場所、心よりどころを守っていきたいと思います」と話しています。
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