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旅先で描いた「ラクガキ」が〝博物館〟に飾られ…偶然から生まれた縁
館長はまさかの「フォロワー」でした
「どういうわけか、旅先の自由帳に描いたラクガキが飾られることになりました」。色鉛筆画家の安部祐一朗さん(21)=京都府在住=がこの秋、旅行で訪れた岐阜県での出来事をSNSに投稿しました。偶然から生まれた縁で、「ラクガキ」はいま額に入れられて〝博物館〟に飾られています。
11月下旬、安部さんは旅行で岐阜県高山市のレトロ雑貨専門店「飛騨高山レトロミュージアム」を訪れました。
レトロミュージアムは、昭和20~50年代のような町並みをイメージしていて、当時のフィギュアやおもちゃ、雑誌、ポスター、ゲームを見たり、楽しんだりできる体験型の博物館です。
当時の小学校の様子も再現されていて、「教室」で揚げパンやソフト麺などの給食を食べることができます。
岐阜県を訪れたのは、中学3年の修学旅行以来という安部さん。中学時代にはレトロミュージアムはありませんでしたが、レトロな雰囲気が好きで、給食を食べようと立ち寄ることにしました。
給食を注文して教室で待っている間、安部さんは机の上に置いてある自由帳に目が留まりました。
めくると、レトロミュージアムを訪れた人たちのメッセージやイラストが描かれています。そばにはクレヨンや鉛筆が置かれていて、誰でも自由に書けるようになっていました。
安部さんは普段から時間があれば「ラクガキ」をしているものの、旅先でノートに何かを書くことはなかったそうです。
「色鉛筆やペンを持ち歩いているわけではないのでいつもは描きませんが、今回はクレヨンがあったので初めて描きました」
給食ができあがるまでの時間に「軽い気持ち」でクレヨンを取り、そのパッケージに描かれていたフラミンゴをモチーフにしました。
描いていくうちに筆が乗り、「来た証しを残そう」と思った安部さん。10分ほどで描き上げ、日付とサイン、SNSのアカウントを記しました。
「来場者の多いミュージアムなので、お客さんに見てもらえたらいいなと思いました」と安部さんは話します。
安部さんがレトロミュージアムをあとにした数時間後、館長の村井祐介さん(32)は教室内を整理するなかで何げなく自由帳を開いて驚きました。
「すごい絵がある!」
アカウントを調べると、相手は数年前からフォローしている色鉛筆画家の安部さんでした。「まさか来てくれていたなんて」。さらに心が躍りました。
村井さんはたまに自由帳をめくることはあっても、毎日チェックしているわけではありません。
「ぜひ飾らせてもらいたい」という思いから、ノートを一時的に自身の引き出しにしまい、安部さんにDMでメッセージを送りました。
「私個人的に安部さんのTwitterやらフォローをしておりまして、何気なくノートを見たら異彩を放つ絵を見つけまして興奮しております」
「恐れ多いのですが、このノートを館内に飾らせていただくことは可能でしょうか」
安部さんはその日の夜、自宅に帰る途中でDMが届いていることに気がつき、二つ返事で承諾しました。
「本当にびっくりしました。自由帳を館長さんに見てもらえると思っていなくて。『まさか』という感じでした」と振り返ります。
絵は自由帳から切り離され、額に入れて教室の黒板の上に飾られています。
村井さんは、「安部さんは『ラクガキ』とおっしゃっていますが、プロの絵です。宝だと思い、一番目立つところに置かせていただきました。いつか直接お会いしてお礼を言いたいです」と話します。
安部さんは、うれしさを感じる一方「僕は軽い気持ちで描いた作品なので、いつか本気で描いた作品を飾ってもらいたいです」と話します。DMでも村井さんにそう伝えたそうです。
この出来事を紹介する安部さんの投稿は、5万以上のいいねがつき、多くの人にシェアされました。「見に行きたい」という感想も寄せられています。
安部さんは、「レトロミュージアムは懐かしさや新鮮さを感じられる非日常的な空間です。レトロミュージアムや飛驒高山を訪れる人が増えたらいいなと思います」と話しています。
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