連載
韓国・ソウル弾丸1泊2日の芸術の旅へ アジアのアートの楽園
ナカムラクニオの美術放浪記
ソウルは、もはやアートの町だ。
2025年には、パリのポンピドゥー・センター分館がソウルに進出する。ロンドン発のアートフェア「Frieze(フリーズ)」はアジア初の開催地としてソウルを選んだ。
新しい美術館、ギャラリーも続々と増え、1995年から2年に1度、開催されている光州ビエンナーレもすっかり定着した。
アート好きで知られるBTSのリーダーRM、ナムさんによる情報発信なども若いファンを魅了している。
はじめて韓国に行ったのは、学生だった1993年のことだ。韓国の大田世界博覧会を見に行った。
当時、韓国の現代アートといえば、ヴィデオ作品で知られるナム・ジュン・パイクしか世界的に知られていなかったと思う。
大田博の帰りに、ソウルをいろいろ見て歩いたが、パイクの作品以外に現代アートらしいものは見つけることができなかった。
そして、30年の時が経過し2023年。すっかりアートの街へと変貌していた。
まずは、仁川空港のすぐ隣にオープンした「パラダイスシティ」へ行ってみた。
ソウルアート巡りの旅をするならば、大きな美術館やディープなギャラリーより、体を慣らすためにも、ここからスタートするのがおすすめだ。
ホテル、スパ、プール、カジノまで揃っている複合リゾート施設であり、敷地内にアートが約3000点も点在する。アートに没入していくような空間だ。
しかも、無料で入れる。お腹が空いたらフードコートもある。
鑑賞するというよりも、ドラマのワンシーンのような空間の中で、非日常を楽しみ、歩きながらアートを探す。ロールプレイングゲームみたいな感覚で没入すると良いかもしれない。
ホテルを連結するフロアには草間彌生の巨大なカボチャが鎮座する。
ダミアン・ハースト、ジェフ・クーンズ、ロバート・インディアナのなど世界的なアーティストたちの代表作が何気なく設置されているのも驚く。
フードコートにあるカウズ(KAWS)の「Together」という作品は、なんと約6メートルもある巨大なオブジェ。しかし、木で作られており、アジア的、工芸的になっているのが面白いと思った。
あまりに作品がたくさんあるため、全部見るのは不可能だろう。とにかく熱いシャワーを浴びるように現代アートを満喫した。
続いて、徳寿宮(トクスグン)の近くにあるソウル市立美術館へ。
ここは旧最高裁判所の一部を残して新築された建物だ。入り口がなんとも美しい。
ちょうど、20世紀を代表するアメリカの画家エドワード・ホッパーの大規模な展覧会が開催されており、大行列。これは、質と量ともに素晴らしい展覧会だった。
続いては、イルミン美術館へ。1926年に建てられ「東亜日報」という新聞社の建物だったビルだ。
市の有形文化財に指定された建物だったが、改装され1996年に美術館として生まれ変わった。街の中心部、光化門駅の目の前にあるのも便利だ。
1階にはアートショップも併設されていた。3階までが展示スペースとなっており、訪ねた時は、若い現代作家の企画展を開催していた。レトロな空間にぴったりハマっていた。
国立現代美術館ソウル館は、王宮である「景福宮」の隣に位置し、伝統的な風景に囲まれながら楽しめる現代アートの殿堂だ。
展示スペースのみならず、カフェもショップも居心地が良く、夢のような空間だった。
すぐ隣にはアートファンが憧れる大人気の「ギャラリー現代(予約制)」があり、仁寺洞に開館したソウル工芸博物館も見応えがあった。
……と、ここまでゆっくり回っても1泊2日で制覇できた。ほとんどの場所が徒歩圏で、とにかくアクセスがいい。
トランジットでの短い滞在でもたっぷりアート巡りが楽しめるだろう。
最後は、ザハ・ハディドが設計した巨大な宇宙船のような建築、DDP(東大門デザインプラザ)も見逃してはいけない。
近未来を予感するダイナミックな巨大建築にショックを受ければソウルの1泊2日弾丸アートツアーは、充分満足できるだろう。
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