健康診断の結果から、肥満を指摘され、脂肪を落とすように促された――。しかし、食事管理や適度な運動により、脂肪を落とせたかどうか確かめようとしても、体組成計の体脂肪率が「測るたび変わる」「当てにならなそう」と感じる人も多いのでは。科学的な体脂肪率の計測方法と、よく見かける体組成計の精度を高める方法を紹介します。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
健康診断の結果を受けて、脂肪のつきすぎを指摘され、それを落とすように促された人もいることでしょう。体内に脂肪が過剰に蓄積すると肥満になり、さまざまな病気を引き起こすことがわかっています。
一方で、実際に食事管理や適度な運動に取り組み、脂肪を落とせたかどうかを確かめようとしても、体組成計の体脂肪率が「測るたび変わる」ため、「当てにならなそう」と感じる人も多いのではないでしょうか。
体脂肪率を割り出すために「体の脂肪量」を測るというのは、実は難しいことです。というのも、真の値を知るためには解剖により直接、脂肪の重さを測るしかないので、今の自分の体の状態を知るという目的にはそぐわないためです。
そのため、脂肪や筋肉量といった人の体組成は、他のさまざまな要素から「間接的」に「推定」されます。そもそも、体組成計で表示される「体脂肪率」が推定値であることは、一喜一憂しないためにも知っておくべきことでしょう。
測定方法のうち、古くから用いられていて、ゴールド・スタンダードとされるのが、水中体重秤量法(ひょうりょうほう/UWW法)です。これは水中で体重を測定し、陸上での体重との差から計算するもの。密閉されたカプセル容器に入り、空気の圧をかけて圧力の変化から割り出す空気置換法(ADP法)もあります。
これらはより正確な測定方法とされますが、高額な測定機器・システムが必要だったり、測定される人の負担が大きかったりといった問題があります。
また、これらはいずれも密度を計測しているので、密度から体脂肪率を算出するにあっては、特定の計算式(※1)を利用しています。結果の正確性は1963年に発表されたこの論文の式に依存することにも注意が必要です。
※Brozek J, Grande F, Anderson JT, Keys A. Densitomeiric analysis of body composition: revision of some quantitative assumptions. - Ann N Y Acad Sci 110: 113-140, 1963.
そのため、現在もっとも一般に普及しているのが、生体インピーダンス法(BIA法)です。これは体に微弱な電流を流し、電気を通しにくい脂肪の電気抵抗値(インピーダンス)から体脂肪を計算するというもの。
簡単に測定可能であり、家庭やスポーツジムなどでよく見かける「乗るだけで測定できるタイプの体組成計」は基本的にこのシステムを採用しています。ただし、BIA法で体脂肪率を推定する場合、UWW法やADP法同様、インピーダンスから身体組成を推定するための式そのものの精度により、推定値の正確性が左右されます。
近年、従来の方法に代わる身体組成推定の基準法として、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)が注目されています。
これは被験者に2種類の異なるエネルギーレベルのX線を照射、その透過率の差から体脂肪率を推定するもので、十分な精度で体脂肪率が推定可能であることがわかっています(ただし被曝の侵襲があります)。
このDXA法と、従来の測定方法の差(絶対値および相対値:平均値±標準偏差)を調べる、成人男性を対象とした国内の研究(※2)があります。UWW法、ADP法、BIA法により推定した体脂肪率は、DXA法により測定した体脂肪率と有意差がみられず、UWW法(-0.1±1.8%)、ADP法(1.1±2.2%)、BIA法(1.7±2.0%)の順で差が小さかったとされています。
※2. 設楽 佳世ら.身体組成の評価方法間にみられる身体密度および体脂肪率の差の検討 - 体力科学 66巻 5号 p.369-382, 2017
注目されているDXA法と比べても有意な差がなかった、「乗るだけ測定タイプ」のBIA法ですが、その精度を左右する要因には、体の水分量があります。
これが変化すると、体脂肪率も変動しやすくなるため、測定前には体内の水分量が変化する行動、具体的には飲食、運動、入浴を避けることが必要になります。また、同じ時間・同じ状態で測定することも大事です。
複数の体組成計メーカーは、計測結果をより正確にするコツとして、「起床後2時間以上」「食後2時間以上」「計測前に排尿・排便をする」「手足の乾燥や冷えを防ぐ」ことなどを挙げています。日々の計測をするときには、心がけてみてはいかがでしょうか。
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