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大雨後の河川が〝臭い〟理由 実は東京の8割「合流式下水道」仕組み

大雨の後は河川が臭いことがあるが……。※画像はイメージ
大雨の後は河川が臭いことがあるが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

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大雨が降った後、河川の近くで「においが気になる」経験をしたことはないでしょうか。実は、河川の下流の大都市では、その下水道の仕組みにより、大雨のときに汚水が雨水と一緒に河川に放流されることがあります。東京都などを取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
 
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大雨後の河川が「臭い」理由

台風2号とそれに伴う前線活動の活発化により、3日にかけて関東地方でも大雨が降りました。そんな中、注目を集めたのが、下水道の仕組みに関するツイートです。内容は、大雨により東京都23区の住民の汚水が未処理のまま河川に放流されているというもの。

2000回以上リツイートされ「知らなかった」という声もみられました。また、そのような仕組みであることに「垂れ流し」との批判もありました。

ここで、大雨のときに汚水が一部、未処理のまま河川などに放流されるのは事実です。国土交通省によれば、下水道の方式としては、汚水と雨水を別々の管で排除する「分流式」と、汚水と雨水を同一の管で排除する「合流式」があります。

同省によれば、昭和30年代までの下水道は、「河川の下流部にある大都市を中心として」、浸水の防止と下水道の普及促進のため、「雨水と汚水を同時に収集できる合流式下水道による整備が積極的に図られていた」とのこと。

その後、昭和45年の下水道法の一部改正により、下水道の目的に「公共用水域の水質の保全に資すること」が加えられたことにより、以降、分流式下水道の整備が進んだということです。

同省の調査によれば、都市数でみると分流式は合流式と比較して10倍以上、採用されています。一方、東京都23区や大阪市、名古屋市など河川の下流部にある大都市では、主に合流式が採用されています。

合流式は、経済的かつ効率的なため、下水道の普及に貢献してきた一方、強い雨の日に、汚水まじりの雨水が河川等に放流されることから「河川等の水質汚濁や悪臭発生の要因となることがある」ということです。
 

東京都23区は8割が「合流式」

雨天時の合流式下水道の吐口からの放流
雨天時の合流式下水道の吐口からの放流 出典:東京都
東京都下水局を取材しました。同局によれば、東京都23区では約8割の地域で合流式が採用されています。分流式なのは世田谷区の多摩川沿いの南西部、足立区と葛飾区の環七以北、東京ベイエリアなどに限られます。

これは明治時代、コレラなどの疫病が流行するとともに、低湿地帯などで浸水被害が頻発していたため。トイレの水洗化などによる衛生環境の改善と、雨水の速やかな排除を同時に対応し、早期に効果をあげるためだったそう。

合流式では、晴天日と弱い雨の日には、下水の全量を水再生センターに集めて処理しています。雨天時は晴天時の汚水量の3倍までの下水を処理することができるとのこと。

一方、強い雨が降ると、市街地を浸水から守るため、汚水まじりの雨水が河川の吐け口やポンプ所から河川や海などに放流されます。

例えば1時間に50mmの強い降雨の場合、下水道管の中は、雨水量が汚水量の約70倍となり、水再生センターで全量を処理することは不可能となります。汚水まじりの雨水を放流しないと、市街地に浸水が発生してしまうのです。

今月に入ってからの大雨で、SNSでは「垂れ流し」との批判もありましたが、同局は「雨天時に一時的に増大する膨大な流入量にあわせて、水処理施設や貯留施設を整備することは、現実的ではありません」とします。

河川に放流される際、汚水は一定以上の割合で希釈されているため、「垂れ流し」という言葉のイメージと、実態は異なるようです。また、前述のツイートに関連して、「分流式下水道の汚水管が合流式に接続されている」というツイートも注目されましたが、このような事実はないということでした。

同局としては、引き続き、強い雨のときには汚水まじりの雨水の放流は必要になるので、「河川や海などの水質改善を図るため、貯留施設などの整備を進める」とします。

また、放流による汚れの負荷を減らすため、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設を整備。また、水再生センターでは、既存の施設の改造により早期に導入でき、従来の設備より汚れを多く除去することができる高速ろ過施設を導入している、ということでした。

同局担当者は「現在、合流式下水道の改善対策として、令和5年度末が期限になっている下水道法施行令の雨天時放流水質基準の達成に向けて施設整備を実施中」「区部全域で、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設累計170万立方メートルを整備する」とコメントしました。

「昭和30年代に隅田川は『死の川』と言われるほど河川の汚濁が進み、風物詩として親しまれてきた花火大会や早慶レガッタが中止に追い込まれた時期がありました。合流式には課題もありますが、この合流式で下水道を整備したことで、今日のような隅田川へと蘇ったことも知っていただきたいです」
貯留施設(芝浦水再生センター)
貯留施設(芝浦水再生センター) 出典:東京都

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