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連載

#8 「健康にいい」の落とし穴

運動を〝続ける〟には何が必要か デジタルで得られる新しいサポート

運動を「始める」だけでなく「続ける」のもハードルが高いが……。※画像はイメージ
運動を「始める」だけでなく「続ける」のもハードルが高いが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images
健康診断で運動を勧められ、始めてみたものの、なかなか続かない――。運動を習慣化するにはどうすればいいのでしょうか。人が体に良い行動をするための理論「健康行動理論」と、その一部をデジタル化で便利にしてくれるアプリから考えます。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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医学理論をデジタル化

新年度になり、あるいは健康診断で勧められ、「何か運動を始めよう」とした人も多いのでは。一方で、こうした“体に良い行動”は、なかなか続かないのも正直なところです。

運動を習慣化するには、どうすればいいのでしょうか。ここで医学的には、人が体に良い行動をするために必要なものを示す「健康行動理論」があります。それによれば、運動を続ける要因は以下の7つです。

Ⅰ. 運動をすることが自分にとって本当に「良い」ことだと思うこと
Ⅱ. 運動をうまく行えるという「自信」があること
Ⅲ. このままでは「まずい」と思うこと
Ⅳ. 運動をする上で「妨げ」が少ないこと
Ⅴ. 「ストレス」とうまく付き合っていること
Ⅵ. 運動をする上で周りから「サポート」が得られること
Ⅶ. 健康になれるかどうかは社会的要因や運もあるが、自分の「努力」によっても左右されると思うこと

この理論が示すのは、運動を継続するにはⅥ.のように「一緒に運動をする仲間がいる」といったサポートが必要だということ。しかし、リアルの世界に必ずしも同じ目標の仲間がいるとは限りません。自分も周囲も仕事や子育てで忙しくなる中、なかなか「一緒に運動しよう」とも言い出しづらいでしょう。

そんなときにおすすめなのが「習慣化アプリ」です。代表的なものが『みんチャレ』。同アプリでは同じ目標を持つユーザー同士が最大5人で1チームを組んで「習慣化」に取り組みます。

自分の挑戦した内容を、証拠写真とともに「チャレンジ」として1日1回、チームに投稿するのが決まりです。メンバーに空きのあるチームを探すか、新たにチームを作成して参加できるので、リアルに仲間がいなくてもサポートが受けられるというメリットがあります。

利用者数が100万人を超える同アプリを開発・提供するエーテンラボ社が謳うのが「デジタルピアサポート」。「ピア(仲間)サポート(支援)」とは、仲間が相互に助け合い課題解決をする活動。これは健康行動理論に照らし、運動の習慣化にもいいと言えます。新しいサポートの形をデジタルの力を借りて実践するというのが、同アプリの思想になっています。

同社が2020年の日本公衆衛生学会で発表した結果(※1)によれば、習慣化の成功率は「1人で挑戦する場合の2倍」​​。これは2019年の神奈川県との実証実験で、糖尿病患者とその予備群の人を対象に「みんチャレ」を提供、生活習慣が改善するかを検証したもの。

目標歩数の達成率は、習慣化アプリを使用したグループで57.5%となり、非使用グループの26.5%より高い結果になりました。

※1. 『ピアサポート型習慣化アプリを用いた糖尿病重症化予防のための生活習慣改善効果』 - 日本公衆衛生学会総会抄録集.2020;79th:239

こうしたサポートは、専用アプリほど特化してはいないものの、他にもSNSを利用して得ることもできます。

実は、リアルの人間関係は健康に大きな影響を与えます。これは必ずしもネガティブなことだけでなく、仲の良い人が健康になったら「自分も健康に気を配らなきゃ」と思うことでしょう。

他方、特にコロナ禍を経た現代社会においては、そんなリアルな人間関係が希薄になっている、という課題があると言えます。そんなとき活用できるのが、SNSを習慣化アプリ的に使うという手です。

個人的にもおすすめなのが、自分のアカウントで「これからダイエットをする」と宣言してしまうこと。後に引けなくなり、「いいね」もモチベーションになります。投稿のために、さらにはより「いいね」をもらうために工夫していくのは、ゲーム化の一つであり、何かを続けやすくなるとも言えるでしょう。さらに、成功してフォロワー数などの影響力が増したら、それは運動を続けるインセンティブになります。

こうした気軽にできる工夫はたくさんあります。自分に合ったものを生活に取り入れて、難しく思われる運動の習慣化に取り組んでいくのが、この時代の健康法だと言えるでしょう。
 
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