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「生」がつくパン名、増加中? 「生=おいしい」定着で起きたこと
「菓子パン・調理パン」の「生」商品、2021年の28件→2022年に68件
最近、商品名に「生」のつくパンをよくみかけるようになったと思いませんか?本当に増えているのかどうか、気になった記者が調べてみました。
日頃からスーパーやコンビニで買い物をする記者は、ここ最近、特にパン売り場に「生」のつく商品が増えているように感じていました。
大手コンビニのファミリーマートでは、2月から「生コッペパン」を販売。大手パンメーカーの山崎製パンでも4月からの2カ月間、「生ドーナツ」「生クロワッサン」を販売中です。
ここ数年で街中で見かけるようになった「食パン専門店」のひとつ、「乃が美」は「高級『生』食パン専門店」とうたっています。
実際、「生」のつくパンは増えているのか。調査会社インテージに聞きました。
インテージでは、全国約6千店のコンビニやスーパー、ドラッグストアなどの量販店で2018年から2022年に販売のあった、商品名に「生」がつく「食パン」「食卓ロール」「菓子パン・調理パン」のデータを調査。
「食パン」「食卓ロール」「菓子パン・調理パン」の3項目で「生」のつく商品名数は、2018年に51件だったのが、2022年には86件に増加しています。
特に、「菓子パン・調理パン」の項目では、2021年に28件だったものが翌2022年には68件に急増しています。
この結果について、インテージの市場アナリスト・木地利光さんは、「2020年ごろの高級食パンブームの際、食パンに『生』がつくと『高級感がある』『パンに生がつけば、おいしい』というイメージが消費者に定着した」とした上で、「現在は、『生』食パンのトレンドが落ち着いた一方で、『菓子パン・調理パン』にもその流れが及んだと思われます」と分析します。
さらに、このトレンドを支える消費者側の背景には、コロナ禍の長期化があると木地さんはいいます。
「コロナ初期の頃は、(外出制限の影響などから)自宅で本格的なパンケーキを焼き、そこに生クリームを添えるなど、手作りの過程も楽しむといったトレンドがありました」
「ただ、コロナ禍が長期化する中で、消費者は家事負担を減らしたいという思考に移っています」とし、「外食がしにくい中で、『簡便かつ食卓のバラエティーを豊かにする』という需要がある」と指摘します。
メーカーが商品名に「生」をつける理由については、「『家での生活を、手間をかけずに豊かにする』という消費全体のトレンドの中で、メーカーは商品名に『生』をつけることによって、付加価値を訴求するという手法が流行っているではないか」と考えています。
では、メーカーはどのような思いで、商品名に「生」をつけているのでしょうか。
「生めろんぱん」や「生くろわっさん」などの商品を相次いで販売しているフジパンに聞きました。
――「生」がつく商品が発売された経緯を教えてください。
「生めろんぱん」などの「生セレクション」(2023年5月現在、地域限定商品含め36品、うち全社販売の商品は4品)で初めて出した商品は、2021年2月に発売したテーブルパン「生ろぉる」です。
開発当初、近年の生食パン専門店ブームから、スーパーなどの中にある焼きたてパンコーナーなどでも「生食パン」の販売が増加傾向でした。
また、コンビニスイーツなどでも「生」とつく商品が存在し、イメージの良いワードとして定着しつつありました。
そのことから、生食パンのおいしさをテーブルパンで表現できれば、新しい商品としてお客様に手に取っていただけるのではないかと考え、加熱などせずそのまま味わっていただいてもおいしい生テーブルパンの開発を決定しました。
――商品名につく「生」は何を意味しているのでしょうか?
生クリームを生地に配合し、「そのままでおいしい」をコンセプトに作り上げています。
――消費者からの反応はどうでしたか?
発売当初は地区限定の商品でしたが、お客様からの反響も大きく、全国発売商品となりました。
その後、生テーブルパンの第2弾「生くろわっさん」を21年12月に発売、菓子パンでも「生めろんぱん」を22年5月に発売し、いずれもヒット商品となりました。
その他にも「生」がコンセプトの商品を発売しており、「生セレクション」としてシリーズ展開しています。
――今後の展開は?
販売商品の見直しをしつつ、新たな商品発売を予定しています。また、その中から定番化する商品もあるかと思います。
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