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連載

#70 「きょうも回してる?」

コンプラ重視の時代にあえて切り込む 「先生の本音」ガチャの遊び心

「実際に先生が購入して使っていると聞きました」

ブライトリンクを立ち上げた佐藤明香里さん(右)と、佐藤さんとともに「先生の本心-BLACK-」スタンプを企画した冨田真緒さん
ブライトリンクを立ち上げた佐藤明香里さん(右)と、佐藤さんとともに「先生の本心-BLACK-」スタンプを企画した冨田真緒さん

目次

街中どこを歩いてもみかけるガチャガチャですが、円安などのあおりを受けて、昨今その価格帯は上昇傾向にあるといいます。400円商品が増えている中でも、300円で「価値」を提供している商品「先生の本心」とはどんな商品なのでしょうか。ガチャガチャ評論家のおまつさんが取材しました。

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価格調整、悩むガチャガチャ業界

2022年は円安、材料費の高騰、物流費の値上げ、人件費の上昇など四重苦、五重苦な年でした。
それが続くいまも、ガチャガチャメーカーにとっては現状のクオリティを保ちつつ、価格を維持するのが難しい現状です。

また、ガチャガチャは一般的に、現状の機械の構造から価格の切り替えが100円~500円対応になっています。どんなに高付加価値な商品を作ったとしても、だいたいが上限が500円になってしまいます。100円単位でしか価格が変更できず、食品の値上げのように、10円単位で価格調整できないのがつらいところです。

価格の推移を見ていくと、ここ数年は、200円から300円の商品が多かったのですが、現在は、300円から400円に変わってきています。

例えば、昨年3月では、約300商品が発売されたなかで、200円の商品が40商品、400円が28商品でした。今年の3月は、200円が23商品、400円が64商品となっています。200円の商品が一年間で半分に減り、400円商品が2倍以上増えています。価格転嫁していかないと、ものづくりができない厳しい状況だとわかります。

ただ、さらに外部環境が厳しくなったら価格改定をすればいいかというと、そうではありません。
400円から500円台が多くなってしまうと、気軽に買えるガチャガチャの良さも無くなってしまい、その結果、購買意欲が低下し、市場全体が低迷してしまう可能性もあります。価格のバランス調整が難しいところがガチャガチャ業界です。

「お客さんの立場で考えると…」

そんな厳しい状況の中、なんとか300円でお客さんにガチャガチャを届けたいと頑張っているメーカーがあります。

佐藤明香里さんが20代で起業した「ブライトリンク」です。スタッフ全員が20代で、約4年前にガチャガチャ業界に参入しました。

ブライトリンクは、「ガチャっと!」というオリジナルブランドで、最近では昭和レトロ感を忠実に再現した「ホテルキー」や可愛いレトロな商品などを作っているほか、昨年では「ギャルの折った折り鶴」がメディアに注目されました。

佐藤さんに厳しい環境について尋ねると、「価格設定には、ものすごく悩みます。300円と400円には、たった100円の差しかありません 。しかしお客さんの立場で考えると、300円と違い、400円を5回まわすと2000円になっていまいます。この100円の差が大きいんです。一人でも多くのお客さんに手に取ってもらいたいので、300円で頑張れるところまで頑張りたいです」。

ものづくりについては、「後発組のメーカー」だからこその工夫を語ります。

「他社メーカーと同じことをやっていては、意味がありません。後発メーカーだからこそ、他のメーカーと勝負したら、ブライトリンクは何で勝負するか。脳みそで勝負したい。つまり、企画の面白さに着目してもらい、違う土俵でものづくりに挑戦しています」と話してくれました。

最近のブライトリンクの商品
最近のブライトリンクの商品

コミュニケーションツールになり得ることが商品価値

今回は、企画の面白さを上手くガチャガチャで表現した「【先生の本心】スタンプコレクション(以下、先生の本心)」シリーズの「先生の本心-BLACK- スタンプコレクション(以下、先生の本心ブラック)」を紹介します。

「先生の本心」の第1弾は2021年に発売。昨年11月以降に、「先生の本心-関西弁version- スタンプコレクション」と、「先生の本心ブラック」が発売されました。

先生が使うスタンプと言えば、小学生の先生が使う「よくできました」や「がんばりましょう」などの評価スタンプのイメージが浮かびますが、一般的な評価スタンプの絵柄のなかに、普段言いにくい先生の本心を想像し、あえてスタンプで表現しているところが、シュールすぎて、くだらなさ満載です。

「先生の本心」について、「確かにスタンプの商品は他のメーカーで発売していますが、弊社のものは切り口が最高に面白いです。コンプライアンスを重視しているご時世に、あえて逆行するような商品です。実際に先生が購入して使っていると聞きました。このスタンプでコミュニケーションが取れるところに商品価値を感じています」と佐藤さん。

「先生の本心-BLACK-」
「先生の本心-BLACK-」

30代以下に刺さる企画を出せる「強み」

今回紹介する先生の本心ブラックの意図を尋ねると、佐藤さんと一緒に企画を担当した冨田真緒さんは、「第1弾の先生の本心はマイルドだと思います。先生の本心ブラックでは、言い回しが、より尖った言葉を選択しました」と話します。

「より先生の本音を発展させたのが、先生の本心ブラックです。ちょっとした笑いが生まれれば、作ってよかったなと感じています」

先生の本心シリーズは1個300円。300円でコミュニケーションツールとして活用でき、ブラックでシュールさを味わえるガチャガチャです。

最後に、今後の展開について佐藤さんに尋ねると、「現在、20〜30代がガチャガチャを一番回している層です。私たちも同世代になります。だからこそ、その世代の心に刺さる企画を出せる自負があります。それが強みです。強みを活かした商品を作っていきます」と話してくれました。

確かに精巧なミニチュアやギミック商品も素晴らしいところがたくさんあります。ただ、先生の本心シリーズには、「クスッ」と笑ってしまうガチャガチャの良さがあると感じました。

     ◇
先生の本心-BLACK- スタンプコレクションは、「逆に凄いです」、「何言っているかわかりません」、「理解に苦しみます」、「は・・・?」、「話しになりません」、「やり直し」の6種類。1回300円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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