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「お礼したくなる」親御さん続出!「子乗せ買い物カート」誕生秘話

〝あえて立たせる〟実現した究極の安全策

全国の親御さんから絶賛されている、一風変わった買い物カートの開発経緯について取材しました。
全国の親御さんから絶賛されている、一風変わった買い物カートの開発経緯について取材しました。 出典: スーパーメイト提供

目次

とある企業が開発した、特殊な形状の買い物カートが注目を集めています。何と、お子さんを乗せたまま移動できるという優れものです。SNS上では現在に至るまで、親御さんたちによる感謝の言葉が多数つぶやかれてきました。家族での買い出しを安全・安心なものとするアイデアは、どのようにして生まれたのか。開発元企業の担当者に話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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親子の気持ちを考えたカート

買い物カートの名は「キッズステップカート」。一般的なカートと比較して、一風変わった見た目が特徴です。

買い物カゴを置くための積載部裏側を見ると、折りたたみ式のイスが付属しています。更にその後ろ側には、踏み台のような板が。人一人が立てるだけの広さを持つスペースが設けられています。

実はこれ、小さな子供の立ち乗りを前提として、特別に設計された一品なのです。イスにも幼児を乗せられるため、後ろから大人が押せば、カゴ入りの商品や重い荷物をカート上に置いたまま、一緒に移動することができます。

これまでに、関連情報が何度もSNS上を駆け巡ってきました。そのたびごとに、親御さんとみられる人々による「開発者にお礼が言いたい」「親子それぞれの気持ちを考えてくれてありがとう」「天才的発想だ」といった称賛が相次いでいます。

子供の立ち乗りを前提に作られた買い物カート「キッズステップカート」。
子供の立ち乗りを前提に作られた買い物カート「キッズステップカート」。 出典: スーパーメイト提供

秘密は「重心の安定性」にあり

キッズステップカートは、小売店向けの什器(じゅうき)を生産・販売するメーカー、スーパーメイト(岐阜県笠松町)が2018年4月に発売した商品です。どのような背景から誕生したのか、取材しました。

「きっかけは6年ほど前に、取引先の1社から受けたお声がけでした」。そう語るのは、同社開発部チーフの武藤叶也(むとう・きょうや)さん(24)です。

武藤さんいわく、全国にスーパーを展開する企業が当時、子供を乗せて移動できるタイプの買い物カート導入を検討していました。その過程で同社に相談があり、協議の結果、新たに製品を開発する運びとなったといいます。

意識したのが、重心の安定性の確保です。ステップ台(立ち乗り時の足場)には4~6歳、積載部に付属するイスに、月齢12~48カ月未満の子供が乗ると想定。激しく動き、後方に体重が偏りすぎると、カートが転倒してしまうおそれがあります。

そこで、子供の平均体重を年齢ごとに調べ、同等の重さのおもりをステップ台に置いて走行し、荷重のかかり方を検証しました。社員にカートの対象年齢に達した子供がいる場合、実際に乗ってみてもらうことで、試行錯誤を重ねたそうです。

親御さんたちがカートを押しやすくするため、角度を付けた持ち手が後方にせり出すように伸びる形状とするなど、工夫も凝らしました。また積載部の外側には、けが防止のため、衝撃耐性がある素材を使ったバンパーを設置しています。

「お子さんが体を預けるパーツを太く頑丈にするといった点を含め、安全性向上に必要な要素は網羅しています。一定の基準をクリアしていると保証する一般社団法人製品安全協会の『SGマーク』も取得し、安心して使って頂ける仕様としました」

キッズステップカートに設置されたステップ台・イスそれぞれに、子供を乗せることができる。
キッズステップカートに設置されたステップ台・イスそれぞれに、子供を乗せることができる。 出典: スーパーメイト提供

出荷支える「2つの効果」

キッズステップカートは発売から約5年で、各地のスーパーなどに約1万8千台が出荷されています。使った人々から、どんな感想が届いているのでしょうか。武藤さんに尋ねると「好意的な声が出ているのは間違いない」との答えが返ってきました。

「お店経由で『以前より親子での買い物がしやすく楽しい』『子供が乗りたがるので、遠くてもカートがある店舗に通っている』などの声をいただいています。家族間のコミュニケーションを深める、一つのきっかけにもなっているようです」

実際、カート利用者向けに同社が実施したフォトコンテストには、たくさんの親御さんが応募しました。落ち着きがない我が子を、初めてスーパーに同伴できて気が楽になった、という趣旨のコメントも寄せられ、効果のほどがうかがわれます。

好影響が及んでいるのは、ユーザーにとどまりません。

キッズステップカートのステップ台には、子供の落下を防ぐサイドパネルがついています。動物などのイラストが描かれており、絵柄のカスタマイズが可能です。取引先によっては、自社の広告を載せるケースも少なくありません。

パネルデザインの責任者、山田誠・開発部セールスプロモーション室長(50)によると、これまでに手がけたパターンは60種を超えるそうです。

「ユーザー同様、企業も重要な得意先。先方から提案を受けることも多く、スペースを有効に活用して頂けている」と胸を張ります。

サイドパネルのイラストは、カスタマイズが可能だ。
サイドパネルのイラストは、カスタマイズが可能だ。 出典: スーパーメイト提供

顧客と環境に寄り添う開発姿勢

顧客の反応がヒントとなり、新たに登場した商品もあります。2022年6月に売り出した、キッズステップカートの小型版「キッズステップカートmini(以下「mini」と表記)」です。

キッズステップカートの重量は25キロ。耐久性と重心の安定性の両立が目的ですが、SNSでは「やや重く小回りが利きづらい」などのつぶやきが散見されました。更に一部店舗関係者からも「横幅が広くすれ違いにくい」と指摘を受けたのです。

そのため「mini」は、イスを取り除くなどして17.5キロまで軽量化しました。サイズも一回り小さく、使い勝手を一層重視したつくりとなっています。開発部チーフの武藤さんいわく、通路幅が狭い小規模店舗を中心に、高い需要があるそうです。

「特に女性ユーザーの方々は『押しやすい』と喜んでくださっています。従来品と比べて省スペースのため、商品陳列数が多いドラッグストアなどでも、気兼ねなく利用が可能です。今後、より幅広いお店に置いて頂けるのではないでしょうか」

「キッズステップカートmini」の利用風景。イスが取り外されるなどして、従来品と比べて一回り小さくなっている。
「キッズステップカートmini」の利用風景。イスが取り外されるなどして、従来品と比べて一回り小さくなっている。 出典: スーパーメイト提供

ちなみに同社は、環境保護意識を高める事業も実施しています。ポリプロピレン製のペットボトルキャップを、商品の一部材料としてリサイクルする取り組みです。昨年1月~12月に、約3800万個が買い物カゴへと生まれ変わりました。

また岐阜県内を対象に、キャップを自社で回収し、再生材とする試みにも乗り出しています。キッズステップカートには、ハンドルの持ち手部分のパーツに練り込まれているということです。

多方面で良い結果を生み出している、キッズステップカート。武藤さんは「導入済み店舗の場所をSNS上で共有するなど、お客様同士でコミュニケーションを取って頂けたら。より買い物しやすい環境づくりにつながると思います」と話しました。

※キッズステップカートの出荷台数を、当初「20万台弱」と表記していましたが、正しくは「約1万8千台」でした。(2023年3月15日訂正)

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