連載
#3 Y2Kと平成
〝2007年の女子高生〟ネタでバズる30歳、「Y2Kは別物」
「もしかしたら、生きやすそうだと思うのかもしれません」
頭頂部に髪の毛で膨らみをつくり、まつげはバチバチのふさふさ、つり上げ気味の眉毛で「コム(WILLCOM)持ってる?」――。「2007年の女子高生」をネタに、TikTokを中心に動画投稿し、25万人のフォロワーを抱えるぴかりんずさん。いま「Y2K(2000年代の、主にファッション文化)」や「平成ギャル」など、ちょっと昔に魅了される若者たちが多くいますが、ぴかりんずさんは、「Y2KはY2Kで『別物』」ときっぱり言い切ります。その言葉から「平成ギャル」とは何だったのか、考えてみました。
ぴかりんずさんは、普段は東京で会社員として働く30歳です。現役女子高生だった、2007年~2009年は北海道で過ごしていました。TikTokで投稿している「2007年の女子高生」のネタ動画で、折りたたみ携帯電話につけた大きめのストラップをぶんぶん振り回す姿が板についています。
「放課後のお決まりの寄り道ルートは、マック、ドンキ、百均、マツキヨ。ルーズソックスをはき、髪を盛り、細めのつり眉。いまやっているネタ投稿のままの女子高生でした」
投稿をする際、ぴかりんずさんが特に意識しているのはメイクです。
「つけま(つけまつげ)もつけ、まつげを強調するのと、『囲み目』メイク。アイラインは、絶対漆黒です」
他にも、髪形は「必ず逆毛を立てる」し、「制服の時は腰にカーディガンを巻いていたのと、地面についちゃうくらいのルーズソックス」。
細かいのは、リボンの位置です。制服のリボンはアジャスター部分がゴムになっている場合が多いですが、そのゴムをとにかく緩めて、伸ばします。
「現役のときは、授業中、机の端と端に引っかけて、わざとゴムが伸びきるようにしてましたね」
確かに当時、「だらしなく」は一つのトレンドでした。現役時代のぴかりんずさんは、スクールバッグの肩掛け部分も、片方は外し、だらんと持っていたといいます。
「Y2Kファッション」が流行っている現代ですが、まさに2000年代を女子高生として過ごしたぴかりんずさんは、「いまのメイクはまつげよりもまゆげにこだわりますよね」と、現代との違いも語ります。
最近、渋谷を歩いていたときにルーズソックスをはいている女子高生をみかけたというぴかりんずさん。「ただ、私が現役のときほどだらっとしていなくて、キュッとしまったはき方をしていました」
いま流行している「Y2Kファッション」は、2000年代のファッションを意識しているとはいえ、「当時の完全再現は求めてないんじゃないかな」と話します。
「髪なんて180度違いますよね。いまは前髪がある、暗めの色の子が多いですが、私たちのときは前髪は伸ばして流していたし、明るい色に染める子も多かった」
「そのまま(2000年代)ってのはなくて、Y2KはY2Kで『別物』みたいな感じですね」
ぴかりんずさんは、投稿のためのネタを集めたり、流行している「平成ギャル」のトレンドをチェックするためにも、TikTokやインスタなどで現役の女子高生の投稿をチェックしています。
それをする中で感じるのが「私が現役の頃は、ネット空間に対して『アホ』だった」ということ。それにはいい意味も悪い意味も含まれています。
ぴかりんずさんの現役時代に流行っていたのは「前略プロフ」(ネット上の自己紹介ページ)。
名前や通っている学校名、クラス名など「全部出していた」といいます。その頃、個人情報をオープンにできていたのは、「知らない人に見られることがないと思っていたからです」。当時は「ネット上でも好きなことができた」という感覚でした。
ただ、現在はネットに対する意識も現実も大きく異なります。「鍵」をかけない限り、全世界にオープンになる情報。それを発信者も強く意識せざるを得ません。その時代を生きている現役高校生は「好きなことができないようにも見えます」。
「いまは、TikTokで好きなダンスを踊っているだけなのに『眉毛が変』とか言われちゃうんですよ」
そんな現代の高校生が、「平成ギャル」でもある「2007年の女子高生」に魅力を感じるポイントはどこにあるのでしょうか。
ぴかりんずさんは、「どこが魅力なのかな……」と考え込んだあと、「もしかしたら、好きなように生きてて、生きやすそうだと思うのかもしれません」。
【連載】Y2Kと平成
いま流行している「Y2Kファッション」。街中でルーズソックスを履いている高校生を見かけることも珍しくありません。広い層に2000年代の出来事や空気感への興味・関心が高まったこの機会に、当時の世情を振り返り「現代社会」を考えます。
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