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リアガラスに看板が刺さってる!?トリックアート宣伝車に称賛の嵐
「見たことない」ものを形にした発想力
とある企業が所有する宣伝車が、ツイッター上を震撼させています。思わず二度見してしまうような、リアガラスのデザインが、衝撃をもって受け入れられているのです。驚きの仕上がりを実現した看板製作会社に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
注目を集めている車両は、一見すると普通のバンのように思えます。特筆すべきは、後方のリアガラスの見た目です。
オレンジの下地に白い字で「トリックアート看板ならORES」と書かれた看板が、黒いガラス面に突き刺さっています。接点の周辺はひび割れており、ショッキングな見た目です。
しかしよく目をこらすと、実際に看板がぶつかったのではないと気付きます。イラスト入りのステッカーが、全面に貼り付けられているのです。
「思わず発注したくなる」「トリックアートとわかってホッとした」。1月中旬、関連画像がツイッター上に出回ると、驚嘆の安堵の声が、タイムライン上を駆け巡りました。
インパクト絶大な車両デザインは、どのように成立したのか。考案元で、商用看板を製作する企業ORES(大阪府寝屋川市)を取材しました。
「当社のキャッチフレーズは『バズる看板』。看板は見られなければ意味がありません。トリックアートを車にあしらっている例は見たことがなく、採用しました」。福元信治・代表取締役(43)が、宣伝車の装飾経緯について語ります。
同社では、完成した看板や材料の運搬、商品の意匠考案のための現場調査などで、自社のバンを頻繁に利用します。そのため福元さんは、車両を「動く広告塔」とするアイデアを思いつきました。
全体の構図作りを、飲食店などの看板や壁画を手掛けてきた、外部アーティストに依頼。「そこにあるはずないもの」「印象に残る違和感とインパクト」という要素を押し出した結果、リアガラス全体をキャンパスに見立てる形となったそうです。
ステッカーの素材は、雨風や寒暖差に強い、塩ビ製の粘着シートを選択しました。そして2019年8月、現在も稼働中の、バン1台を走らせ始めます。すると興味を持った通行人が、駐車中に声をかけてくるなど、好意的な反応が相次ぎました。
ガラスの直下には、同社の公式LINEアカウントを友達登録できる、QRコードも配置しました。宣伝車経由の売上は、既に500万円を超えているといいます。
ところでツイッター上には、宣伝車の外観を巡り、「後続車両のドライバーが驚きそう」「ステッカーが大きすぎて、後方の安全確認に支障を来すのでは」といった声も飛び交っています。これらの点についても聞いてみました。
福元さんいわく「むしろ、後続のドライバーが、車間距離を空けてくれるようになると思っていた。事実、その通りの状況です」。導入以降、追突事故に巻き込まれたり、警察官から危険性を指摘されたりしたことは、一度もないといいます。
「トリックアートには、画像の方が、実物以上にリアルに見える特性があります。ツイッター上に出回った写真のインパクトが強すぎたのかもしれません」と福元さん。なおステッカーは「道路運送車両の保安基準」に則って貼り付けています*註。
ORESでは、自社車両での成功体験を受け、様々なトリックアート看板を生み出しています。飲食店や小売店、遊漁船向けなど、30点ほどを納品してきました。24時間365日、お客を呼び込む「営業マン」として、重宝されているそうです。
宣伝車が話題を呼んだことについて、福元さんは次のように話しました。
「皆さんに、一時の驚きと楽しみを感じて頂けたのであれば、看板屋冥利に尽きます。今後も『バズる看板』の効果を実証し続け、クライアント様により良い価値を提供していけたら、と考えております」
*註:国土交通省自動車局安全・環境基準課によると、「道路運送車両の保安基準」第二十九条は、運転者の視野を妨げないよう、車両前面及び側面のガラスに、指定された標章等以外のものを装着してはならないと定めています。リアガラスの装飾について、特段の規制はありません。(詳しくはこちら)
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