連載
#20 眠れぬ夜のレシピ
人生の参考書になった映画、寒くて外出したくない日におすすめの1本
「回り道にしか咲いていない花」の価値
自分を見失いかけた夜、ふと頭に浮かぶほの暗い教室の記憶。SNS作家・午後さんが忘れられない授業について描きました。眠れない夜のレシピ、手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
眠れない夜。午後さんの身近にあった音楽を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
いかがお過ごしでしょうか。私は最近、少し調子を崩していました(今は復活しました)。
やはり急な冷え込みには注意が必要ですね。自分のために温かい飲み物を淹れる習慣があまりないのですが、背に腹はかえられず(?)、最近は頻繁にホットドリンクを作るようになりました。
体内から温まるとかなりほっとできて、新鮮な感動を覚えました。フィジカルな働きかけって大切なのだと改めて実感しました。
中でもマサラチャイとほうじ茶ラテのインスタントにハマっていて、交互に作っては飲んでいます。特にマサラチャイがいろんなスパイスの香りがしておすすめです(私は無印良品のものを愛飲してます)。
年中家にこもっている私ですが、寒くなるとより一層外出がおっくうになります。映画は、そんなお家時間を、豊かにしてくれる選択肢の一つだと思っています。
私は誰かと会うことが好きなのですが、それから得られる喜びよりも疲弊が優ってしまうたちです。この疲労に相手との親密度はあまり関係ないので、ただ純粋に私は、一人でいることが癒しになる人間なのだと思います。
そんな私に、映画はうってつけでした。一人でいながら、誰かの価値観を享受することが叶うからです。
映画というものはせいぜい120分間で、物語は勿論、その世界観、人物の関係性、感情、課題、革命、終焉…など、あらゆる情報を描ききらなくてはなりません。ですから、無意味な瞬間はなく、どの場面を切り取ってもそこに必ず意味があるのだ……と、学校の先生から教わりました。
それからは映画を観る姿勢が変わりました。
暗喩や伏線の回収、沈黙など、言語や表情などの分かりやすい表現以外でも、実に多角的に鑑賞者に語りかけてきます。
また、映画は監督一人だけではなく、役者をはじめとした大勢の人間が関わって完成されます。それゆえ非常に複雑かつ重厚な芸術ですが、鑑賞者はただぼんやり座って眺めているだけで良いうえに、全てを受け取りきらなくても良いのです。
とても優れた作品形態かつ、ある種のコミュニケーションツールだと思います。
私はひとりの時間が多くないと死んでしまう人間ですが、かといって完全な孤独の中でも生きていけないことを自覚しています。そんな人間にとって、映画をはじめとした芸術はまさに救いです。
浮遊している手紙のようなもので、自分の必要な時に、必要な熱量で、他者の想いを受け取ることができるからです。
漫画の最後に、作中に登場した映画のタイトルを入れたページを載せておりますので、寒くて外出したくない日に、ぜひご覧いただけたらと思います。
どれも好きな作品ですが、貴方にも合うとは限りません(作品は人間とほぼ同じで、相性があります)。ですが、貴方の好きな映画が見つかるキッカケにしていただけたら…と思います。
それでは、今夜も素敵な夢を見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。「眠れぬ夜はケーキを焼いて」の続編、「眠れぬ夜はケーキを焼いて2」(KADOKAWA)を10月28日に上梓する。Twitterアカウントは@_zengo。
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