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市長選で見た〝おじいさんたち〟密室の力比べ「何事もないのが一番」

違和感ありまくりの「リアルな政治」

車内で原稿を書く前田健汰記者=2021年10月1日午前11時57分、山口市、金子淳撮影
車内で原稿を書く前田健汰記者=2021年10月1日午前11時57分、山口市、金子淳撮影 出典: 朝日新聞

目次

最近、山口市の市長選に向けた動きを取材しています。4期つとめた現職の市長が突然引退を表明すると、立候補の話すら出ていなかった副市長がいきなり市長選の大本命になりました。一部の人たちだけで物事が決まっていく政治のスムーズさは、そうやって「私たち」と政治との距離を遠ざけていきます。でも、若者は政治に関心がないなんて思えない。「関心の境界線」はどこにあるのか。現地から考えてみたいと思います。(朝日新聞山口総局記者・前田健汰 24歳)

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政治の話は身構えてしまう

生まれは埼玉、前任地が札幌で、社会人3年目のこの春から山口で記者をしています。

普段は事件や裁判などのかたい話から、地元スポーツなどのやわらかい話まで担当していて、事件原稿を仕上げつつ、プロサッカーチームの取材に向かうと、その中身の差に頭がくらくらしそうになります。

事件や裁判の取材は、自分が今までの人生で見てこなかった問題を気付かせてくれます。スポーツ取材の場合は、一つのことを突き詰める選手やサポートする人たちの思いに出会ったときに、記者としてのやりがいを感じます。こういうところが面白いと、友人に説明できる取材ばかりです。若い人もツイッターなどで流れてきたら読んでくれるのもこういう記事ではないでしょうか。

それでは、政治の話題はどうかと考えてみると、内容はなかなか難しく、身構えてしまいます。実際には、コロナ禍での生活を支える給付金や支援制度、スポーツ振興も親の介護や子育ても、もっと言えば、今日の食事や明日の遊びに関わってくるのが政治だと思います。

ただ、私には見えません。閉じられた世界での議論や年配のおじいさんたちの力の比べ合い、といったところが、自分がメディアを通じた率直な印象です。

写真撮影する前田健汰記者=2021年10月1日午前11時5分、山口県防府市、金子淳撮影
写真撮影する前田健汰記者=2021年10月1日午前11時5分、山口県防府市、金子淳撮影 出典: 朝日新聞

内側で決まるリアルな政治

最近、担当している山口市の市長選に向けた動きを取材しています。始まりは9月13日。定例の市議会で、4期16年務めた現職の渡辺純忠市長(76)が突然引退を表明しました。

まさか、と驚いていたところ、翌14日には、市議会で多数派を占める保守系の市議団が、表沙汰には立候補の話題が出ていなかった伊藤和貴副市長(63)に立候補を要請しました。そのさらに2日後、伊藤副市長が、渡辺市長の実質的な後継者として立候補を表明すると、いきなり市長選の大本命となりました。

目まぐるしい動きに戸惑いつつ、保守系の市議の1人に「こんな感じで決まっていくんですね」と尋ねると、その市議はこう答えました。「何事もなく市政が続くのが一番だからね」

まさに、私が見えなかった内側で決まっていくリアル政治の世界を垣間見た気がしました。それならば、投票で代表をえらぶ選挙はなんのためにあるのだろうか。そんな違和感が頭の中に残りました。

もちろん、政治に混乱がないことが大事なのもわかります。ただ、どうしてもふに落ちない部分が残りました。

前田健汰記者のカメラ=2021年10月1日午後0時25分、山口市、金子淳撮影
前田健汰記者のカメラ=2021年10月1日午後0時25分、山口市、金子淳撮影 出典: 朝日新聞

政治コンテンツは面白くない?

若者は政治に関心がない。何を書いても読まれない。私自身の心の中や学生時代の友人たちのことを思うと、そんなことはないと思っています。

それならば、メディアが、若者が関心を持ちやすいように政治を分かりやすく、面白い原稿に落とし込む努力を怠ってきたのでしょうか。いや、もしかしたら政治はもともと、若者を引きつけるようなコンテンツになりえないのでしょうか。まだ、これを書いている時点では答えは出ていません。

まだまだ政治に違和感がありまくりで、政治の向こう側の世界に染まっていない記者の1人として、若い人が政治の記事を読もうとしてくれる「関心の境界線」をこれから探ってみようと思います。

前田健汰記者のツイッターは@kenta_maeda_

「#若・記者が見る衆院選」はじめます

いよいよ衆院選が間近に迫ってきました。あなたの街でも、街頭に立つ政治家やところどころに貼られているポスターなど「選挙の季節」を感じさせる場面が、ちらほら増えてきているのではないでしょうか。

でも、政治家がなにをしようとしていて、どんな役割を担い、選挙の結果が私たちのくらしにどんな影響があるのか。街頭演説や断片的なニュースを聞くだけではよく分かりません。身近な生活との関わりの薄さ、政治へのとっつきにくさが、とりわけ若者と政治との距離を広げているように思います。

全国各地で選挙の取材にあたっている若手の記者たちも、じつは同じような感覚を抱えながら選挙と向き合っています。彼らの声にじっくり耳を傾けてみると、そんなモヤモヤこそ若者と政治との間に横たわる溝そのものではないか、と思うのです。だからこそ、モヤモヤをモヤモヤのまま終わらせず、その源や正体を解き明かすべく、山口・熊本総局の4人の「若者×記者」が政治への違和感と向き合う企画を始めます。

4人がそれぞれのツイッターで、取材の経過やその時々の本音、企画以外の仕事の一面などを発信していきます。まずは巻頭として、4人が日々の取材で感じてきた「違和感の起点」からお伝えします。(朝日新聞西部報道センターデスク・石松恒)
 

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