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「拝み倒したい」読書感想文にテンプレ 「感じたこと書く」の難しさ
「あらすじ写してた」編集者が作成
夏休みの宿題の定番、「読書感想文」。「感じたことを書きましょう」と言われて、苦戦した思い出はないでしょうか。そんな読書感想文の「テンプレ」がSNSで話題になっています。「拝み倒したい」とまで言われたテンプレを作った編集者に、思いを聞きました。
このテンプレには、続々と共感が寄せられ6万件以上のいいねがつきました。
「こういうのがほしかった」
「ほぼ本文を丸写ししていた!」
「書き方の説明がなかった読書感想文で、国語嫌いになった」
「『起承転結』って言われるより描きやすい」
話題になったプリントは、「読書感想文の組み立て」を4パーツで紹介しています。
「本をえらんだわけ」
「あらすじ」
「こころにのこったところ」
「じぶんだったらどうするか」
それぞれのパーツには、丁寧に具体的な文例も載っています。例えば、「本をえらんだわけ」の文例では、「『本のだいめいがふしぎだったから』とか、『ひょうしのえがかっこよかったから』などのわけをかくとよいです」。
ヒントを元にメモをしていけば、自然と文の構成ができているというものです。
小麦さんは、子どもが夏休みの宿題として初めて出された「読書感想文」とともに、このプリントを学校から持ち帰ったことに感動。自身の小学生時代の読書感想文の思い出とともに、このプリントの「ありがたみ」を子どもにプレゼンしたそうです。
「子どもも空欄を埋めることができました」
「様々な意見はあるかと思いますが、思ったことを伝える型のひとつとして、苦手な子は反復練習しやすく、得意な子はどんどん応用して書けそうな、こういう教材が、今後も使われてほしいと思います」
私の時代は「感じたことを書きましょう」でほっぽりだされてた読書感想文、今年の夏は進め方のテクが配られており、嬉しさでもう感無量っすよ 拝み倒したい~☺️ pic.twitter.com/UNMXMswZLo
— 小麦こむぎ子 (@comgico3) July 20, 2021
このプリントを作ったのは、小学校用の教材教具や、児童向け図書の出版社「文溪堂」です。読書感想文テンプレを手がけた「夏休みの教材担当」の編集者・馬場知里さんに話を聞きました。
読書感想文のテンプレは、夏休み向けの国語や算数の問題集の付録として2019年からつけているそうです。
通常は学校への卸し販売がメインですが、夏休みに教材を使う現場は「家」。親子に聞くと、「読書感想文が書けない」「具体的に指導がなくて困っている」という声が集まりました。
ところが、馬場さんは白状します。「実は、私、子どもの頃から本を読むのがすごく嫌いで、読書感想文は大の苦手でした。『書けない、書けない』と困り果てて、あらすじを写すような子どもでした」
一方で「苦手な子どもの気持ちが理解できる」ことが、付録作りに役立ちました。
まずは小学校の国語に採用されている4社の教科書を見ました。
「作文なら起承転結の書き方は載っていますし、手紙の例文も載っている。でも、ないんです! 読書感想文だけは書き方の説明が!」
次に、読書感想文のコンクールの過去作品を分析しました。
でも「入賞作品はすごすぎた」。
その中から、「こういうことを書くと形になる」というテンプレを探しました。
付録で一番気をつけたのは、「子どもたちが読書感想文に楽しく取り組めるように」ということ。
文章に苦手意識のある子でも、取り組みやすくなるように、メモ欄は小さくしました。「これから原稿用紙に書くのに、メモまでたくさん書くのは大変だから」
具体例をなるべく取り上げ「これなら、なんとか感想文が書けそうだ」と思えるシートにするよう心がけました。
「テンプレ」を作ることが、子どもたちを「型にはめる」という懸念もあるかもしれません。でも馬場さんは、「社会人になっても、メールなどでテンプレを使います。読書感想文にもあって良いのではないでしょうか。基本的な書き方さえ分かれば、そこからオリジナリティを出せます」と話します。
読書感想文が苦手だった馬場さんから、これから読書感想文に取り組む子どもたちへ、アドバイスをお願いすると、「自由に書いて良いですよ!……とは言っちゃいけないですよね」と苦笑しつつ、こんな答えが返ってきました。
「私が子どもの頃、宿題の文章は、先生に良い子だと思ってもらいたくて『面白かった』と書いていたような気がします。でも、そうじゃなくていいんだよ。あなたが『面白くなかった』なら、面白くなかったと、思ったことを書いていいんだよ! 素直な心を書いたら良い。でも困った時はテンプレを見てね」
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