ネットの話題
浮世絵の中で猫がつめとぎ「瞬時に思いついた」担当者に絶賛の嵐
「渋すぎ」商品を実現させた幅20cmの秘密
SNS上で、とある猫用の爪研ぎが話題をさらっています。浮世絵師・葛飾北斎の作品をモデルに、図柄を忠実に再現した逸品です。平面に描かれた名画の世界を、なぜ立体にしようと考えたのか？ 「渋すぎる」と評判のアイデアの出どころについて、製造・販売元企業の担当者に尋ねました。（withnews編集部・神戸郁人）
荒れ狂う大海原の上に猫の姿
人気を博しているのは、雑貨の企画・販売などを行う、フェリシモ（神戸市中央区）の商品「名画をたしなむ猫のつめとぎ〈葛飾北斎 神奈川沖浪裏〉」です。
富士山を遠くに望む、荒れ狂う大海原を描いた、北斎の代表作「神奈川沖浪裏（かながわおきなみうら）」。その風景を、幅59センチ・高さ約40センチ・奥行き約20センチの段ボール細工として、造形化しています。
手前側に位置する小波部分を、幾重にも折り重なった、多層段ボールで立体的に表現。緩やかな弧を描く波間の上に、猫が爪先をこすりつけられる仕組みです。縦横に幅があるため、座ったり、寝転がったりすることもできます。
今年7月に入り、商品の関連画像がSNS上に出回りました。「これは渋い」「猫がこじんまりつめをといでいるが可愛い」「アイデアを考えた人に、いいことが起こりますように」。現役ユーザーを含め、多くの人々が好意的な感想を書き込んでいます。
あえてそのまま立体化した理由
ともに同社内のプロジェクトで、猫向けアイテムを取り扱う「フェリシモ猫部」と、美術館や博物館にちなんだ製品を開発する「フェリシモミュージアム部」が、コラボして生まれた今回の一品。完成までの経緯を、企画担当者に聞きました。
製作のきっかけは、ミュージアム部に届いた、消費者の意見です。「名画をテーマとした猫グッズがほしい」。「名画×猫」というコンセプトで、商品を考えるのは面白い――。部内で盛り上がり、検討を始めました。
その際、2019年に発売した「光背つめとぎ」を参考にしました。仏像などの背景にあしらわれ、仏の体から発せられる光を視覚化した光背（こうはい）を、段ボールで表したアイテムです。「写真映えする」と好評を得たことから、爪研ぎに絞り議論しました。
ではなぜ、北斎の浮世絵をモチーフに選んだのでしょうか？ 担当者は「構図の秀逸さが一番の理由」と語ります。
「手前から大小の波が連なり、最も奥に富士山がある。元となった絵は、そのように、層がいくつも重なったような構図です。どの層を爪研ぎ台として切り取るか考えるだけで、瞬時に商品の構造を思いつきました」
浮世絵の重層的なデザインを活かすため、全体をそのまま立体化しました。「名画をたしなむ」という商品コンセプトも踏まえ、図柄には、一切手を加えていないそうです。
猫の使い心地を一番に開発
猫本位の工夫も、あちこちに施しました。例えば、奥行きです。狭くするほど、製造コストを削減でき、設置場所の選択肢も広がります。しかし、猫が伸び伸び横たわれることを重視し、あえて20センチほどの長さを確保しました。
また大波を台座とすると、先端が猫の体に引っ掛かってしまう恐れがあります。そこで、手前の小波に乗る形とすることにより、課題を解決しました。更に、安心して爪を研いでもらうため、商品の底部に貼る滑り止めシールも同梱（どうこん）しています。
今年6月の発売以降、売れ行きは上々です。和室がある家に住んでいたり、三毛猫などの和猫と暮らしていたりする人々からの需要が、特に高いといいます。猫は飼っていない一方、観賞用に買い求める、というケースもあるそうです。
ネット上の好反応について、担当者は「消費企画者冥利（みょうり）に尽きる」としつつ、次のように話しました。
「価格が高めなので、購入を迷われている方も多いかもしれません。しかし密度が高い段ボールを使っているため、へたりにくく、長持ちします」
「お客様のお宅で、グッズが実際に活躍している様子を見ると、担当者としてはうれしいものです。公式ハッシュタグ『#名画つめとぎ』つきで、ぜひ商品画像をSNS上にアップして頂けたら、と思います」
「名画をたしなむ猫のつめとぎ〈葛飾北斎 神奈川沖浪裏〉」は、一点あたり9000円（税込み9875円）で販売中です。フェリシモ猫部の通販サイトにて購入できます。
浮世絵の中で猫がつめとぎ「瞬時に思いついた」担当者に絶賛の嵐
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